ルカ女王様との短い拝謁が終わり、リンと二人で両親を振り返る。母が僕達をぎゅっと抱きしめ
「二人とも辛かったらいつでも帰っていらっしゃいね」
「お母様、それではルカ女王様に怒られるよ」
リンが泣き笑いの表情で母に返事を返す
「ふふ。お母様とお父様はとても強いから、怒られるのなんて怖く無いのよ」
母が茶目っ気たっぷりの声音で答える
「だから安心して、いつでも帰って来てね」
そう言いながら少し強めに僕達を抱きしめる。母の言葉にリンが抱きつき返しながら
「うん。お母様ありがとう」
と返事をする。僕は返事の代わりに母に抱きつき返し、そっと母の腕の中から抜け出し父の許に歩み寄る。父がそんな僕に気が付き近づいて来て、僕の肩に手を置き
「リンを頼む」
僕の目を見て真剣な表情で頼む。
「はい」
僕は父を見てしっかりと頷き返事を返す。父が少し眩しい様に目を細め僕を見、頷いて、まだ抱き合っている母とリンの許に移動しようとしながら、僕にだけ聞こえる声で
「タンタール家には気を付けろ」
と告げた。僕は父の言葉に周りには気付かれない様にタンタール家を盗み見る。
タンタール当主ソーイ=タンタールはグミさんに父親らしかぬ居丈高な態度で二、三何かを告げ、次にネルさんに近づくとネルさんの耳元で何かを囁いた。当主の囁きにネルさんが此方を見たので、僕と目が合った。僕はそっと目を逸らす。僕が目を逸らした後もネルさんから視線を感じたが、気付かない振りをして僕もリン達の許に向かった。
「皆様、家族の方々とお別れはおすみになられましたか?」
皆の様子を見ていたマーリア様から、皆に声が掛かる。僕達やグミさんネルさんタンタール家の人々が思い思いに頷く。その様子を見たマーリア様が
「それでは、リン=ベルトーク様、レン=ベルトーク様、グミ=タンタール様、ネル=イージス様私の所までおいでください。この後の事を説明致しますね」
名を呼ばれ、僕はマーリア様の許に歩き出した。
「?」
リンが隣に並ばないのを不思議に思いリンを探すと、不安そうに此方を見ていた。
「リン?行こうか」
僕はリンに大丈夫だよという気持ちを込めて微笑みながら声をかける。リンがハッとした顔をして動き出す。
「それでは、他の方々はお引き取り願います」
マーリア様の言葉に両親が僕達を振り返り、振り返りホールを後にする。リンはそんな二人に手を振りながら見送り。僕は父親にリンは必ず守るとゆう決意を込めてしっかりと頷く。そしてタンタール家の人々もホールから出て行き、僕達五人だけになるとマーリア様が喋り出した。
「初めまして、私はルカ女王様に仕える女官長のマーリアと申します」
マーリア様が優雅にお辞儀をして自己紹介をしてくれた。僕は改めてマーリア様を見つめる。マーリア様は綺麗な長い銀色の髪を後ろで一括りに結んだ茶色の瞳をした二十代後半ぐらいの優しそうな女性だ。一礼したマーリア様が僕達を見て
「此処、離宮で皆様のお世話をさせて頂きます。何かお困りの事がございましたらマーリアにお申し付け下さいね」
と言って優しく微笑む。
「この後は皆様お疲れと思いますので、まず湯浴みをしてさっぱりして頂き、軽いお食事を食べて頂いた後、就寝となります」
マーリア様の言葉に僕とリンが頷く。隣でグミさんネルさんも頷いている。僕達が頷いたのを確認して
「それでは奥にご案内致しますね」
マーリア様がそう言って先を歩き出し、それにリン、リンの後ろを僕が続き、リンの横にグミさんが並びネルさんが僕の横を歩く。人見知りのリンは初対面のグミさんが横に並んで歩く事を少し気にして
(チラリ)
と横を伺う。
(にこり)
グミさんがそんなリンににこりと微笑む。
(‼︎…)
リンが慌てて顔を前に戻す。そんな二人の微笑ましいやり取りを見ている僕の横から
(ジ……………)
ものすご〜く視線を感じる……。まぁ…ネルさんからは歩き出す前からも見られているんだけどね…。
(ちら)
(ジ……………)
暫くそんな感じで皆と歩いていると、綺麗な薔薇の渡り廊下を渡る。
(この時期に薔薇が…?)
一瞬、薔薇に意識が逸れたが…
(あっーー。ネルさんの視線が気になる。やっぱり盗み見みしたのが原因かな?)
(チラリ)
僕は横のネルさんを見る。
やっぱり。睨まれてる。
(よし。謝ろう)
覚悟を決めてネルさんに声を掛けた。
「先程は、すいませんでした」
言葉を掛け、ペコリお辞儀をする。
「!!」
ネルさんがビックリした顔で、歩みを止める。
僕もつられて止まってしまう。僕達の動きにグミさんが気付き溜め息をつきながら
「リン様、レン様、声を掛ける事をお許し下さいね」
僕達にお伺いを立てた後、ネルさんに向かって喋り出した
「ネルったら、もういい加減に初対面のレン様を睨むのを止めたら」
グミさんも気が付いていたんだな。
グミさんの言葉にネルさんがプイと横を向く。
「すいません、レン様。ネルは昔から同じ守護騎士として、レン様と比べられてきたのでレン様の事を勝手にライバル視していて…」
グミさんが僕に頭を下げる。
僕は頭を下げたグミさんに慌てて
「僕は、大丈夫なので頭を上げて下さいグミさ…」
僕の言葉にかぶる勢いでネルさんもグミさんに声を掛ける。
「グミ、そんな奴に頭を下げなくても…」
ネルさんの言葉にリンが反論する。
「なっ!レンとは初対面なんでしょう!!レンの事、何も知らないのにそんな奴って!!!」
「リン。落ち着けって」
慌ててリンを宥める。
グミさんが下げていた頭を上げ、厳しい声音で
「ネル。リン様の言うとおりよ。ネルはどうしてレン様を、そんな奴なんて言うの?初対面だよね?」
ネルさんがグミさんから視線を外しながら言う。
「そうだけど…。私の周りにいた方々がベルトーク家の子供達は権力を笠にわがままし放題、その上にグミに酷い事をすると・・それに先程グミの事を盗み見みしていた。グミは可愛いいから変な妄想していたんだ」
(お~い(泣))
「何よそれ~!!」
リンが吠える。僕も思わずネルさんの周りの酷い噂と僕への偏見で凹む
「ネルは、その噂を信じてリン様やレン様が私に酷い事をしてくると?」
グミさんがやや呆れた様につぶやく。
ネルさんが、下を見ながら
「だって・・。グミは僕にとって大切な乳姉妹だし凄い良い子だし、僕はグミの守護騎士、グミの事は何があっても絶対守ろうと…」
グミさんが下を向いていたネルさんの顔を上げて優しい顔で微笑みながら
「ネル。ありがとう。でも・・レン様やリン様が私達に酷い事をしてくるとは思えないのだけどね(ニコリ)御二方ともとても優しい方達だと思うわ」
グミさんが僕とリンを順番に見た後、ネルさんに向き直り
「それに今、レン様がネルに謝ってくれたのよね?ネルが何か不快な思いをしたと思って、だからビックリして歩みを止めたのでしょう?」
ネルさんが少しぶっきらぼうに話す
「うん。周りの人達からわがままと聞いていたし…身分の高い方々は自分から謝罪することは無いと・・なのに・・・だから・・・・」
ネルさんの声がどんどん小さくなっていった。
グミさんがネルさんの言葉を拾う
「ネルは周りから聞いていた人柄と違うのかなと?考えたのかしら?」
「そう。それで僕の周りの方々が間違っているのかもと…」
ネルさんがまた、声をどんどん小さくしながら話す。そんなネルさんにリンがまだ少し怒りながら
「レンも、私も、むやみに権力を行使したりしないし、他の人に酷い事もしない!!(……レンは少し妄想癖はあるけど…)」
リンがチラリとこっちを向きすぐに、ネルさんに向き直った。グミさんがリンのセリフを受け
「ネル。レン様やリン様を先入観で見るのは止めましょう。此処では皆、同じ修行者とルカ女王様も仰っていたし、修行をしていく中でお互いを知っていけばいいと思うから」
グミさんがネルさんそう声をかけた。
ネルさんがグミさんの言葉を聞いて少しの間、下を向いて考える。
そして考えを決めたのか、ゆっくり顔を上げて僕の方を見て
「レン・・様。僕・・私もすいませんでした。初対面なのに、睨んだり、失礼な言い方をしたりして…」
ネルさんが頭を下げる。
僕は慌てて
「ネルさん、頭を上げて下さい。睨まれていたのは、周りの噂のせいみたいだし、僕も最初は誤解を与える様な事をしたし・・お互い様だと思うので(にこり)」
「え~!!」
リンが不満げな声を出す。
「リン」
僕がリンに少し強めの口調で呼びかける。リンが少しびくりとしたが、ネルさんやグミさんにはちょっとだけツンとした感じで
「レンが許したのなら良いわ。でも、今後、レンを侮辱する様な態度を取ったら許さないか・ら・ね(ツーン)」
態度は少しアレだが…取り敢えず二人を許したリンの頭を撫でた。(ナデナデ)
「も~。髪がみだれる」
僕の手から頭を取り返し、髪を整えながら少し早口で
「後、敬語も使わなくて良いよ。さっき、グミも言ってたけどここでは皆、修行者、同じ立場だと思うし、ルカ女王様も身分は関係無いって言ってたしさ」
「そうだね」
僕もリンの言葉にうん、うんと頷く。
グミさんとネルさんが顔を見合わせて、少し困った顔をしたけど、二人が同時に頷き
「うん。了解、リン様」とグミさんが答え
「わかった」とネルさんが頷く
「あっ!!後、様付も無しだよ、グミにネル。そして、これから宜しくね」
リンが照れながら付け足す。グミさんが嬉しそうに笑いながら
「こちらこそ宜しくね。リン。レン様」
「あっ!僕の事も呼び捨てで(にっこり)そして宜しくね。グミにネル」
今度はぶっきらぼうにネルが
「うん・・。よろしくレンにリン」と答えてくれた。
皆で挨拶を交わし、和やかな雰囲気が四人を包む。
「ふふふっ。リンとレンの二人は本当に綺麗だね。サラサラの金色の髪に澄んだ青い空色の瞳。ネルがレンに見とれてしまった気持ちがわかるよ」
グミが笑いながら爆弾宣言をする。その言葉にネルが素早く反応する。
「僕は見とれてなんか無い。睨んでいた(怒)」
「最初はね。でも、レンが声を掛けた時は見とれてい・た・よ・ね(にんまり)」
「え‼︎レンは睨まれていたんじゃないのグミ?」
リンが首を傾げながらグミに聞き返す。
「僕も、睨まれていたと思うんだけど・・?」
グミが僕達にパチリとWinkしながら
「それはね、ネルの目つきが鋭いからそう見えるだけでね、レンが声をかけた時はネル、レンが綺麗だから見惚れて・・」
「やめろ、グミ!!」
ネルが慌てた様子でグミの口を塞ぐ。
「うー」
「ほら、移動しよう。マーリア様が待っている」
ネルの慌てた様子に僕とリンが顔を見合わせた後、二人の様子をもう一度、見返す。ネルの顔は少し赤みを帯びていてグミはそんなネルを見ながら
「もう、ネル。顔が赤いから誤魔化せて無いのに・・」
「はい。グミは口を閉じて歩く!!」
「はーい」
グミがネルに適当に返事を返しながら歩き出す。
そんな二人を見て僕達はもう一度二人で顔を見合わせコソコソと喋る。
「レンは睨まれていたんだよね?」
「僕もそう思っていた」
「でも実は、ネルに見惚れられていたと・・」
リンがそう言いながら僕の脇を突っつく。
「えーっと・・そうなのか?」
「そこの二人も歩いて、マーリア様が待ってる!!」
「「はい」」
コソコソと話す僕達にもネルから声が飛んできた。慌てて二人で返事を返し歩き出す。
「バレバレだよネルー」
グミがボソリと一言。
ネルがそんなグミの頭を軽く叩いて
「いた・・」
「マーリア様、お待たせいたしました」
とマーリア様に一礼した。マーリア様がそれを受けて、優しい笑顔で喋り出す
「それでは皆様、お部屋の方はもう少し先なので、移動しましょうか」
と言い歩き出す。皆もマーリア様の後に続き歩き始める。
2本目の薔薇の渡り廊下を抜け、左右に分かれた部屋を何回か通り抜け、どんどん奥の方に進んで行く。リンが少し不安そうに僕に声を掛けた。
「けっこう奥まで来たね」
「ああ」
その後も何回か廊下を抜けた先でやっとマーリア様が足を止めて僕達の方に振り返り
「此方の左右に分かれた、左側がリン=ベルトーク様、レン=ベルトーク様のお部屋です。そして右側がグミ=タンタール様、ネル=イージス様のお部屋となっております。湯浴み所はもう少し先になるので一旦、お部屋を確認して頂いた後、もう一度この廊下にお集まり下さい」
「「「「はい」」」」
マーリア様の言葉に僕達四人が頷く。そしてお互い左右に分かれるように動き出しながら移動を開始する。リンと二人、自分達の部屋、部屋を確認する。二人の部屋を確認し終わるとリンがポツリと言った
「自分の部屋じゃないね」
「リンの部屋は可愛い物がけっこうあったもんな」
改めて違う場所に来たんだと思ったんだろう、不安そうなリンに明るめの声で答える
「リン。また部屋、可愛くしたら?暫くはここで頑張ら無いといけないしさ」
「う~ん。そんなに長く居たくないなぁ…。早く…家族の元に帰りたい……」
寂しそうなリンの頭を優しく撫でながら
「二人で頑張ろう。リンには僕がついているだろう。ほら、マーリア様の所に戻るぞ」
「うん…」
まだ少し、声に元気が無い様だけど僕に返事を返して歩き出す。
先に行くリンを追いかけながら部屋の安全を再確認し扉を閉める、リンの部屋と僕の部屋は続き部屋の様だから何か有れば直ぐに守れるな、と考え歩いていると、リンがポツリと
「グミやネル達ともっと仲良くなれるかな?」
と僕を振り返り聞いてきた、あっ…その事も少し不安だったんだな~と気が付き
「いい人達見たいだしきっともっと仲良くなれるさ」
と安心させる様に頷く。リンは僕の頷きに安心したのか、寂しそうな表情から悪戯っ子の表情に
「レン。最初睨まれてたもんね(笑)」
「まぁね(苦笑)」
「でも実は…見惚れられていたと(笑)。レン、もてるね」
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