「夏空」小説/第六話

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/06/25 18:31:03 | 文字数:4,074文字 | 閲覧数:89 | カテゴリ:小説

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さぁて。

ミークさんは、音楽家に成れるのか?

グミーさんの荒療治に着いて行けるのか?

なんにしたって猫は最強の恋人なんですよ。

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TEXT
 

 わずかの「テレビタイム」に、コントを見て大笑いしてるネルの声が遠くの部屋から聞こえてくる。
 作詞一日目、私はオレンジで連想する物をとにかく書いてみた。
「夕焼け ニンジン パプリカ カーブミラー ジュース トラ猫 マーマレード バラ ひまわり 紅茶」
 これじゃ唯の箇条書きだから、ちょっと文章っぽくしてみたくなった。
「夕焼けのカーブミラーに映っていたトラ猫がオレンジ色のバラの木の下でニンジンを見つけた」
 我ながら、意味不明だ。
 しばらく、よく聞いてるお気に入りのラブソングの真似をしようとしたが、とてもじゃないが恥ずかしすぎて使えたもんじゃなかった。
 みんな、ああいう言葉をしらふで、しかも大声で、曲に乗せて、社会的に「発表」してるんだなぁ。
 ものすごい図太い神経してるんだなぁ、なんて思ったくらいだ。
 そこで、グミーに「なんかヒントちょうだい」と、ルーラーを送った。
 すぐに既読がついて、返事が返ってきた。
「タイトル考えたら?」
 グミー先生の助言はそれだけだった。あくまで、調べたり作ったりするのは、私がやらなきゃならないんだ。
 私は、オレンジ色を探して、家の中を物色した。
 食器棚の中に、明るいオレンジ色の蓋をしたボトルがあるのが目に入って、何だろうと思うと、ハク姉がいつも飲んでるサプリのビタミン剤だった。
 そうだ。タイトルは、「ビタミン」にしよう。
 私はこうして第一段階をクリアした。

 二日目、家に帰ってきてすぐ机に向かった。授業の合間にメモしておいた、「中々気の利いた言葉集」を、机の上に広げる。
「夕方の真っ赤な日射しが照ってる」
「オレンジジュースが透き通ってる」
「オレンジの海に潜ってみたい」
「君が心のビタミン」
 最後の一文を読んで、私は顔面が発熱した。
「君って誰だよ!」と、己に突っ込む。一瞬、恋文かと思ってしまったじゃないか。
 その時、何かに気づいたように、愛猫のトラゴローが私の足にすり寄ってきた。私はトラゴローを抱き上げ、膝に乗せて背中を撫で、話しかける。
「ゴロー。お前は私の気持ちが分かるのか? そうか? そんなに焦るなって? お前みたいに生きてみたいよ私も」
 そこまで言って、この「君」は、何も人間の異性でなくても良いんだと言うことに気づいた。
「ゴロー。私、お前にラブソング書くよ」
 二日目は、愛猫をもみ散らかして終わった。

 三日目、私は一日中猫のことを考えていた。猫のどこのどのような部分が猫であり、何処が愛らしくて、何処がいけ好かないのか。
 「可愛い所『耳、肉球、尻尾、目、なで肩、柔らかい、カワイイ』。嫌いな所『爪、抜け毛、爪とぎ、気まぐれ、いらずら』」
 そして、1日目に辿り着いた「文章化」をしてみた。
「耳に触ると嫌がる。面白いからもっと触ると嫌われる。肉球に触ると嫌がる。可愛いからもっと触ると嫌われる。尻尾に触ると嫌がる。可愛いから嫌がられても触るともっと嫌われる」
 ここまで書いて、私の「愛」の不毛さに、目眩がした。
 嫌いな方に焦点を当てるとどうなるだろうと思って、念のために書いてみた。
「爪を切る、嫌われる。抜け毛をコロコロしてあげる、喜ぶ。爪とぎ用段ボールにマタタビを撒いてあげる。気まぐれな割にはマタタビには素直だ」
 これは詞じゃない。観察日記だ。
 笑いが浮かんでくるくらいになって、クラスメイトにばれないように顔を覆って笑ってた。
「ミーク。どうしたの? なんかあった?」と、友人のゆかりんが、心配そうに声をかけてくれた。
「なんでもないの。笑ってただけ」と言うと、「紛らわしいよ。泣いてんのかと思ったじゃん」と言われた。それから、メモを発見された。「これ、何書いてんの?」
「え? うーん…猫の観察日記」と答えると、ゆかりんは遠慮なくメモを机から摘み上げ、「ふーん。ミーって、猫の可愛い所に『カワイイ』って書くんだね」と言って笑う。
「だって、イケメンを描写するのに、イケメンって書かないわけには行かないでしょ?」と言うと、「別の言い方あるんじゃない? 男前とか」って言われて、
「ゆかりんの言葉のセンス渋いなぁ」って言い返したら、「ハンサムって言うよりマシでしょ?」と言われた。
「ハンサムは無いわー。死語だよー」と言って、私達は笑い転げた。

 作詩四日目、猫のことを考え初めて二日目、私は帰ってきてから、制服を脱ぐのも忘れてベッドに寝ころび、またトラゴローを愛撫していた。
「なんでお前は可愛いのに、この愛を素直に示せないんだろうね」と、トラゴローの顔の前で哲学的に呟いてみても、トラゴローは目を細めるだけだ。
 猫が目を細めるのは、気を許している証拠らしいが。
「愛」ってつまり、気を許すって事なの? と私の中に一つの案が浮かんだ。
 そして、それをメモしておいた。「愛」から矢印を引っ張って、「気を許す」と。そして、その愛に気づくときは? と疑問を考えると、「アイサイン」をしてくれる時だ。これも、矢印を引いてメモした。
 よーくトラゴローを観察してみると、尻尾を高く上げたまま先を歩くときは、「ついておいでよ!」と、誘っている時だ。
 注目されるのも大好きで、トラゴローの縄張りである家の中を、並んで一緒にゆっくり歩くと、トラゴローは家のあちこちに頭を擦りつける。
 その行動は、お気に入りの物や目新し物に自分のにおいをつけて、「僕はこのおうちが大好き」と言う親愛の情を示しているらしい。唯の縄張り主張だと言う説もあるが。

 作詩五日目、私は家に帰ってから、昨日のうちに観察したトラゴローの生態と、彼等が常に放っている「愛」のサインについてと、私の心情を、ポエムにした。

「気まぐれな君はいつもアイサインをして
 私の心を引っ張りまわすの
 オレンジ色の君を抱きしめて
 夕日の中で眠れていたら
 それだけで幸せな午後に変わるんだけどな
 今日も君は金色の髪のあの子の膝で甘えてるんだ
 私はいつも待ちぼうけだけど
 本当に寂しい時には君が側にいてくれること思い出す
 オレンジの海に飛び込んで君の毛皮にくるまれたいの
 そうだよ
 君が私の心のビタミン」

 歌詞にはなっていないが、グミー先生に提出する「宿題」は出来上がった。
 グミーに、ルーラーで「作詞できた」と教えると、「じゃぁ、今から、うちに来て」と気軽に呼ばれた。
 ちょっと! 今、もう、17時なんですけど! 夕方も夕方。これから片道3時間かけろと? と言う、イライラを抑えて、
「出かけたいけど、お小遣い足りない」と答えると、「それじゃ、バブルボムで迎えに行くよ。うちで2泊する準備だけしておいて」と、返事が来た。
「了解」と返事の返事を返したけど、作曲と言うのは泊りがけをしなきゃならないくらい大仕事なんだろうか?
 そんなことを思いながら、私は大急ぎで着替えと筆記用具なんかの準備をした。

 グミーの家で、先生にポエムを見せると、「初々しくて良いんじゃない?」と感想をもらった。「相当なプレイボーイに引っかかった女の子って感じ」
「相手は猫ですから。トラゴローって言うの。うちの飼い猫」と、私は口頭で注釈をつけた。「写メあるけど見る?」
「いや、それは時間のある時に見せてもらうよ」と言ってから、グミーはいつの間に用意したのか、赤ペンを手に取って、「いくつか、私なりの意見を追加したいんだけど」と言ってきた。
「何処に?」と聞くと、グミーは何度も書いて消した後のある紙に、容赦なく赤ペンで印をつけた。
 2回出てくる、「オレンジ」の言葉の所だ。
「ここ、強調したいならこのままで良いけど、他の言葉に言い換えて雰囲気出す方法もあるよ」と、グミー。
「他の言葉…。オレンジ色は…変えられないから、『オレンジの海』を変える?」と疑問形で言ったが、
「いや、それはミークの好きだけど」と、グミーはあくまで私に作らせる姿勢を崩さない。
「オレンジ色の海…。あったかい海とか?」
「ナイス」とだけグミーは言って、赤ペンで紙の余白に「あったかい海」と書いて、「オレンジ色の海」の所に矢印を引いた。
 そんなこんなで、ポエムを洗練させて行ってから、「歌メロの前に、伴奏作るよ」とグミーが言い出した。「ミーク、おへその下に力入れて、背筋伸ばして、肩の力抜いて」
 伴奏を作るのと、姿勢を正すのが、何故関係あるのかはすぐに分かった。
 グミーは、あらかじめ用意してあったシンセサイザーでピアノの音を鳴らす。「これと同じ高さの声、出して」
 私は、中学校でやってた合唱の声出しを思い出して、「ら~…」と声を出した。
「ちょっと細いな。もう少し、声量出る? この家、防音設備あるから、結構大声出しても平気だよ」と言いながら、グミーはまた同じ音を鳴らす。
「ら~!」と、さっきより声を張ると、「じゃぁ、この音は?」と、もっと高い音を指定される。
 私が、かつてソプラノだった時の経験を思い出しながら、頑張って高音域を出すと、「結構高い音に強い声だね。これは使いやすい」と言われた。
 それから、低音域が何処まで出るかを試され、「低音と高音だとだいぶ雰囲気違うね」と言われた。「C4付近で歌メロ作ったほうが良いかも。伴奏も、そのキーに合わせるか、近い所の音で作る」
「私がその伴奏を作るの?」と、聞くと、「もちろん」と返される。
「幸い、君には私と言う先生がいる。シンセの設定はピアノにしてあるから、これで伴奏を作ってごらん」
「伴奏って言われても…。どんなの?」
「何のために詞を書いたの? このポエムから、イメージする音を鳴らしてみて」
「イメージする音…。ほのぼのした音?」
「うん。ほのぼのした音ってどんなの? ピアノ鳴らしながら、探してみな。私、ちょっとご飯食べてくるから。その間、自習ね」
 私は、スパルタ教師によって、ピアノと共に放り出された。

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

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