「ツキノカケラ」小説/第六話

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/08/07 22:51:11 | 文字数:3,913文字 | 閲覧数:126 | カテゴリ:小説

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今月のテーマ「夜空」への投稿作品です。

「夏空」ではあまり登場しなかった、

海中人の文化がちょっと出てきます。

麟ちゃんのヘアピンの話は引っ張る予定。

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TEXT
 

 私達が乗って来た宇宙船は、今度こそ本当に「鉄の塔」と化してしまった。
 もう、モールス信号すら送るエネルギーはない。壁に備えられた光発電のデジタル時計だけが、律義に地球の時間を刻んでいる。
 私達地上人は、海に浮かぶ第二期移住民の宇宙船にある「貨物」を、改めて調査した。
 食糧や水があるのは分かってたけど、花の種や球根、農作物の種等が発見された。
「相当広い土地のある星に移住しようとして居たんだな」と、あるおじいさんが言った。
 そして、「乗客」の中に、生きた子牛や子羊などが居る。
 それから、私には何の施設か分からなかったんだけど、ある大人が観たら、「生物学の実験場によく似ている」と言う設備もあった。
 そんな施設があれば、もし入植先の星に恐ろしい病原菌が居ても、薬を研究開発することもできる。
 もちろん、施設があると言うことは、その技に長けた人材も、乗客の中にいるかもしれない。
 私とメイさんは、最初にあった「侵略者」のイメージを、少しずつ緩めて行った。
 だけど、そこで襟を正した。何かの研究を行うと言うことは、危険な「排水」を、海に流し込むことになる。海中人からしたら、環境破壊曲がりない。
 排水を浄化する設備なんかを整えない限り、薬物の研究開発は行えないだろうと判断した。

 近所の住人に、第二期の宇宙船の中を見てもらうこともあった。
 代表者数名と、私の言葉の先生「リーリ」、それから私達と懇意にしていると言うことで、ウータにも一緒に巨大な宇宙船の中を見学してもらった。
「これだけの地上人が住むとなると…巨大な街を地上に作らなくてはならないな」と、ある住人が言った。
 そこから、地上にどんな街を作るかの話し合いをした。
 いつくかの案の中から、海底に丈夫な柱を穿って、塔のような物を作り、その間に細かい橋をたくさん渡して、その橋の上に街を作ると言う提案がなされた。
 それなら、海底深くの岩盤に柱を穿つための工事の許可と実行を、海中人に頼まなければならない。
 最初は私達の島で話し合っていたのだが、「一般市民の間で片付く話じゃない」とされ、海中の都市での話し合いの場が設けられた。
 海中人の近隣の人達が、まず自分達の自治会に報告し、そこからこの国の中央政権に話を届けてもらった。
 代表者として、もちろんメイさんが呼ばれた。そして通訳として私も招かれた。改まった席なので、細かいニュアンスなんかを間違うと大変だと言うことで、リーリも一緒についてきた。
 地上人と懇意にしていて、その生態にも詳しいと言うことで、ウータも呼ばれた。この4人で、私達の住んでいる島を中心に、なんとか「地上空間」に街を作る方法の説明と、理解を得られなければならない。
 女4人で大丈夫かな…と、私は思わなかったわけではないが、半年前の戦闘でのメイさんの頼もしさや、ウータの機転の良さから、私は男性が10人同行するより信用を得られるのでは、とも思っていた。

 海中都市の話し合いは、空気を満たした部屋で行なわれた。壁や天井や床は半透明で、チューブのカプセルの中に似ている。
 私達は「公の場に出る服を用意してくれ」と頼んで、海中人から服を借りた。以前見たテレビモニターで放送されていた、「水中でも水を含まない服」のようだ。
 汗を吸い込まないので、繊維がつるつるゴワゴワしていて、肌触りはそんなに良くない。私はAラインのワンピース、メイさんはジャケット付きのパンツスーツだった。
 リーリとウータも海中人用の服を着ている。リーリはクールなツーピーススーツ、ウータはゆったりしたチュニックワンピース。
「たぶん、首長大臣と直接面談になると思うから、失礼の無いようにね」とウータが言った。
 この星にも「椅子とテーブル」があることは以前見たテレビモニターで知っていたが、テーブルクロスまでかけられている。
 テーブルの下に隠れてちょっとだけテーブルクロスを触ってみたら、なんとも言い難い不思議な触感だった。手指の水分が、布に吸い込まれないで、これもつるつるする。
 これも多分防水仕様の布だ。
 私達の島のある国のトップ…つまり首長大臣の人が中心になって会議は行われた。今まで私達に「生きる術」を与えてくれていた代表者達も参加していた。
 何せ、私達が行おうとしているのは、この星のシステムを変えるかもしれない一大事業だ。それは、トップの人だって参加しなきゃならない。
 メイさんが地球の言葉で「建築物」の話をして、私がそれを同時通訳として一旦この星の言葉に置き換え、リーリが細かい所を言い直してくれた。
 ウータは、それを現地の噛み砕いた言葉で説明する。トップや、代表者の人達は、私達4人が、確かに筋の通ったことを言っていると言うことを、吟味しているようだった。
 ある言葉が、別の言葉に置き換わる時のニュアンスのずれなんかも、最小限に抑えられたと思う。
 私達の説明が終わると、この国のトップは、「分かりました。その提案を、前進する方向で話を進めましょう」と言い、海中人の代表者は、一斉に「ガッガッガッガ」と言う音を喉から鳴らした。
 私とメイさんはきょとんとしてしまったが、リーリが「『賛成』の合図よ」と言って、ウータが「地球の、『拍手』みたいなものだよ」と言っていた。

 その回の話し合いでは、「地球人用の街の建設」が決定されたのみで終了した。
 私はこの朗報を地上人に伝えた。島のみんなは、嬉しそうに拍手をして、笑いあった。
 そして、次の課題についてみんなで話した。「海底に穿つ柱はなんの物質で作るか、塔のような建造物は、どの規模の大きさにするのか」が主だ。
 次の回の話し合いでは、この点が問題になってくると思ったから。男も女も大人も子供も、もちろん老人達だって、知恵を出すのを惜しまなかった。
 この星の海に長年あっても分解されない物質で、海中人に健康被害をもたらさないものはないかと案を練る。
 安直に、「鉄で良いんじゃないか?」と、最初は提案されたが、その鉄をどのように加工すれば、この海で劣化しないものが作れるかを、みんなであーだこーだ言いながら煮詰めた。

 第二回の会議の時、海中人の技術者が招かれていた。
 その人に助力を仰ぐため、私達の仲間の一部…錬達が集めている「鉄」を上手く使う方法が無いかを提案した。
 海中人達は、「鉄」の利点と欠点をよく聞きさだめ、しばらく黙り込んだ。それから、この星の技術について話し始めた。
 私とメイさんは、息を飲んでその技術者の意見に耳を澄ました。地球の言葉で合うものが無かったので置き換えられないが、ナタリウム加工と言うものがあるらしい。
 言葉はナトリウムと似ているが、鉄に塩を塗るわけじゃない。
 ナタリウム加工は、「ロール」のチューブにも使われている、撥水防水加工の事を言うのだと言う。恒久的に劣化することが無く、海中人にとっても毒性はない。
 この星にある既存の物質にはほとんど適性があって、もしかしたら「鉄」にも使えるかもしれない、と言う話だった。
 私がそのことをメイさんに伝えたが、技術者の話はまだ続いた。
 技術はあるが、実際に「鉄」が無いと、ナタリウム加工ができるか分からない、と言うことだ。
 そこで、私は自分の前髪を止めていたピンを思い出した。これも、確か鉄製だ。
 私は髪のピンを2つはずし、「これが、『鉄』で作られた物の一種です」と言って、差し出した。前髪が、だらりと私の顔を覆う。私は、長い前髪を二つに分けて耳にかけた。
 会議場の私の席から、隣渡しにピンを技術者のところまで送ってもらい、技術者はそのピンに触れて、「表面はとてもつるつるしていますね」と言った。
「髪を止める時に、引っかからないように、多少錆を防ぐ加工がされています」と、私は答えた。
「なるほど。地球の技術も学べると言うことですね。これはありがたいサンプルだ。これを使って、ナタリウム加工の試験をしてみましょう」と技術者は言った。
 また、代表者達から「ガッガッガッガ」と言う、賛成の声が起こった。

 会議が終わった帰り道、チューブのカプセルの中で、残った2本のピンを使い、どうにか髪型を整えていると、運の悪いことに、たぶんニュースのリポーターが近づいて来た。
 こんなに前髪がぼさぼさの状態で、テレビには映りたくない。
「『チキュウ』の住人の方ですね。はじめまして。私達は、ハルム局の者です」と言って、カメラらしきものとマイクらしきものを向けてくる。
 ハルム…つまり、中央放送局。地球人の女の子は、前髪を長くのばして整えもせずにいるのが普通だ…と思われても嫌だ。
 私はメイさんの後ろに隠れ、メイさんは、私の前に出て、地球の言葉で堂々と話しを始めた。
「この星の住人が、『共生』を申し出てくれた言葉に偽りが無いことを、とても喜ばしく思っている」と言う内容を。
 リーリは、通訳の仕事はしたことないけど、なんとかメイさんの言葉をこの星の言葉に訳してくれていた。
 ウータも、「地球人と言うものはどんなものなのか」を聞かれていた。ウータは、非常に好意的な意見を述べてくれた。
「彼等は、この星の環境をなるべく変えないように努力してたけど、『天空を引き裂いた船』の乗客が増えたから、やむなく今回の街の建設を思い立ったんです」と。
 私は、メイさん達の後ろで必死に前髪を整えていた。でも、手探りだと整ってるかどうかよくわからない。
 ああ、鏡が欲しい!

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

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