双子だからって裸はダメ!

投稿日:2011/08/21 00:19:44 | 文字数:5,739文字 | 閲覧数:4,977 | カテゴリ:小説

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二作目の投稿です。
リン・レンを主題に楽しんで書きました。

軽いお話ですので、気軽に読んでいただけると嬉しいです。

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二月の札幌。
例年寒くなる時期だが、今年は特に冷え込みが厳しい。
一番早く起きたルカがストーブに火をいれる。

「…冷えるわね。あ、雪すごい積もってる」

ミクやリン、レンも起きてきて、みんなで朝食のテーブルを囲む。
今日はホットケーキだ。

「レン、出てきた? ウミウシ婆ばあ」

メープルシロップをかけながらリンが聞いた。
ミクの頭の上に?が浮かぶ。

「出た出た。超キモかった」

「何それ? ウミウシ婆ばあ?」

眉をひそめるミク。

「あたしが今朝見た夢。お婆さんがさ、籠いっぱいに入ったウミウシ投げつけながら追っかけてくんの。すっごい怖かった」

ミクはよけい訳が分からなくなる。

「レンも見たってのはどういうこと?」

「知らなかった? この子達、よく同じ夢見るのよ」

ルカが口を挟む。えーっ、と驚くミク。

「一卵性ソーセージでは見ることあるって聞いたことあるけど…」

「ウインナーじゃないんだから、ちゃんとソウセイジっていってくれる? 毎日おんなじの見るわけじゃないけど、強烈な夢のときはだいたい重なるよね」

うん、とレンが頷く。

「さて」先に食べ終わったルカが口を拭きながらいった。

「今日はお昼八宝菜にするから、誰かウズラの卵買ってきてね」

「えーっ!?」×3

「ルカ、今日ありえないくらい寒いよ。ウズラ抜きでもいいんじゃない」

「ウズラの入ってない八宝菜なんて、ただの野菜炒めよ」

「ルカ姉、他のメニューでもいいんじゃ…」

「白菜が余ってるの。わたしの献立に文句あるの?」

レンをキッと睨みつける。
ルカは普段温和だが、怒ると一番怖い。

「ごはん作るのわたしなんだからね。買ってこなかったらオカズふりかけにするから。分かったわね?」

言い残すとルカはキッチンへ行き、洗い物を始めた。



ミクがあきらめの溜息をつく。

「しょうがないな、三人でジャンケンでもしよっか」

「反射神経でポン! ゲ~ム!」

突然レンが叫び、右手を高々と上げる。

「パフパフパフ~!」

リンも調子を合わせて手を叩く。

「何、何? 反射神経?」

レンがミクの手を引いて立たせる。

「ミク姉、小さく前ならえして。掌の間隔は十センチくらい」

「こ、こう?」

レンがティッシュを一枚抜き、角をつまんでミクの両手の間に垂らす。

「ボクが手を離したら、素早く手で挟むんだよ。ティッシュをつかめたらセーフ、落としたらアウト。三回やって、セーフの多い人が勝ち。それじゃ、ゲームスタート!」

     ☆

「…ただいま~。あ~寒かった~! ルカ、これ、ウズラ」

頭に雪を散りばめてミクが帰ってきた。

「あ、ありがと、ってネギ買ってこないでよ! 冷蔵庫に五十本もあるのよ!」

この家には他の食品に臭いが移らないようにネギ専用の冷蔵庫があり、チルド状態で長期保存ができるようになっている。

「ねえ、あたし反射神経鈍いのかな?」

「どうして?」

ネギを冷蔵庫に押し込んでいるルカに、ゲームの顛末を話す。



「あなた、あの子たちに担がれたのよ」

ルカがクスクス笑う。

「どういうこと?」

「結果は、あなたが全部アウトで、リンとレンが全部セーフでしょ?」

「何で分かるの?」

「神経の伝達スピードがあるでしょ。目から情報が入って、脳で判断して、手に動けって信号が行くまでの時間は決まってるから、絶対につかめないのよ」

「じゃあ何であの二人は取れるの? 合図でも送ってるの?」

「そんなズルイことしなくても分かるみたいよ、手を離す瞬間が。テレパシーみたいなのかな」

そういえばリンとレンがゲームするときは、お互いがティッシュを持つ方をやっていた。

「ちぇっ、不正がないんじゃアピールもできないじゃない」

ミクが口を尖らせる。

「あきらめなさいよ。ジャンケンしたって負けてたかもしれないんだし」

うーん。

「あれ、ずいぶん根に持つのね。いつものさっぱりしたミクは?」

「ゲームのことはいいのよ、ちょっと気になってることがあるんだけどさ…」

ミクの言葉は、携帯電話の着信音に邪魔された。

    ☆

電話はクリプントからだった。
プログラムのアップデートの打ち合わせで、
ミクとルカは二時に社に来るようにとのことだった。
昼食後すぐに、二人は出かける支度をした。

「もう、どうせ出るんならそん時ウズラ買えばよかった…」

ミクがぶつくさいいながらブーツを履く。

「あなたのブーツ温かそうだけど、履くの時間かかるわね。ファスナーでも付けたら? リン、遅くなると思うから、何か作って食べててね」

「うん、パスタ作る。行ってらっしゃい」

玄関でリンが見送る。
ミクとルカは、雪が舞う札幌の町に歩きだした。
空気が氷水のように冷たい。
クリプトンまでは歩いて十分ほどだが、風が容赦なく体温を奪っていく。

「う~、寒い。ねえ、ルカ、長く踊ってると、擦れて痛くなるのよ」

「何の話よ?」

「ブーツにファスナー付けたらっていったでしょ」

「ああ、そのこと。じゃあ仕方ないわね」

雪像が並ぶ大通公園を横切る。
本人が通ってるとも知らず、ミクの雪像の前で写真を撮っている女の子たちがいる。

「ねえ、ルカ。言った方がいいかな?」

「ファンは大事だけど、打ち合わせに遅れるわよ。今は……」

「リンとレンのことよ」

「何の話かいってから喋ってよ!」

ほんっとにこの子は天然なんだから!
ルカがぷんぷんする。

「あの二人さ、仲良すぎない?」

平気で話を続けるミク。

「仲良いのはいいことじゃないの」

「前から思ってたんだけど、リンってレンの前で平気で着替えるじゃない。レンもトランクスでウロウロするし。二人とも年頃なんだから、そういうのそろそろやめさせた方がいいんじゃない」

ルカが顎に手を当てる。

「そのことね…。わたしも良くはないと思ってたけど。そうね、今度見かけたときは、注意しとくわ」

のほほんとしてるようで見るとこ見てるのね、ミクは。
仲良きことは良きことかなっていうけど、子供じゃないんだし、男女の節度は守んなきゃいけないわね…。

クリプトンが入居しているビルが見えてきた。
二人はしばらく黙って歩いた。

     ☆

午後五時を少し回った頃、ミクとルカは家に帰った。

「ただいまー」

返事がない。二人とも部屋にいるのだろうか。

「思ったり早く終わったね。う~、身体すっかり冷えちゃった。お風呂であったまりたい」

「あなた先に入っていいわよ。わたしはメイコのお酒、熱燗で飲んで温まってるから」

「メイコのって『大吟醸重音てと』? 勝手に飲んだら怒るんじゃない? 減ったら分かるように線引いてあったわよ」

メイコとカイトは近所に住んでいて、時々遊びに来る。
メイコは自分用の酒をミク達の家に常備している。

「料理酒でも足しときゃ分かんないわよ。もうすでに半分くらい月桂冠よ、あれ」

「ルカ、あたし何も聞かなかったから」

     ☆

「♪お風呂~、L・O・V・E・お・ふ・ろ~」

三万曲の持ち歌の中から風呂の歌を歌いつつ、脱衣所に向かう。
ガチャっとドアを開けると、下着姿のリンが立っていた。
ブラのホックを外そうとしていたところで、ミクを見るとビクッとした。

「ミ、ミク姉! は、早かったのね」

「えー、リンもお風呂なの? あたし凍えそうなの。先に入っちゃダメ?」

リンはなぜかそわそわしている感じがした。

「あ、あたしも明日着る服クリーニングに取りに行ってきて、身体冷えてるの…」

よく見ると腕に鳥肌が立っているし、溶けた雪で髪が湿っている。

「じゃあ、一緒に入ろうよ」

「そ、それはちょっと…。狭いよ」

「何よ、一緒に入ったことあるのに。リン、あなたちょっと様子が変…」

その時、ザーっと湯をかぶる音が浴室から聞こえてきた。
リンの肩がピクッと動く。

「え…? レンが入ってるの?」

「…うん、だから、ミク姉遠慮して」

「ちょ、ちょっと!? リン! あなた何でレンが入ってるのにお風呂入ろうとしてんの!?」

下着姿で寒いのか、リンは腕を組んでカタカタ震えている。

「う~、もう我慢できない。ミク姉、あたしお風呂入るね」

ブラを外そうとする。

「わー! ストップ! ストーップ!! レ、レンが入ってるでしょー!!」

「いいじゃない、双子なんだから」

ミクが回りこんで浴室のドアの前に立ちふさがる。

「ふ、双子でも男と女でしょ! あ、あなたたち、あたしとルカがいない時、一緒に入ってたの!?」

「いつもじゃないよ、今日みたいな寒いときとか、汗かいたときとか。あたし平気だよ」

開き直って堂々としたリンに対し、ミクの方が思わず顔が赤くなってしまう。

「ダ、ダメー! 女の子が裸見られて平気って、いけないでしょ! そ、それに見られるだけじゃなくって、レ、レンの、その、あの…」

「あたし、レンのおちんちん見ても何とも思わないよ」

ミクは至近距離で爆弾がちゅどーんと爆発したような気がした。

「何よ、自分はルカ姉とキスしたくせに」

「そ、それとこれとは…ルカー! お、お願い! 助けてー! 早く来てー!」

ダイナミクスパラメータ全開でミクが叫ぶ。
タコの燻製を咥えてルカが脱衣所に入ってきた。
下着姿のリンと切羽詰った顔のミク。状況が呑み込めない。

「騒々しいわね、どうしたの?」

「リ、リンがレンと一緒にお風呂に入ろうとしてるの!」

ルカの口からぽろりとタコが落ちる。
リンはバツの悪そうな顔をしている。
ルカが膝をついて目線の高さをリンに合わせた。

「もう、リン、心配したとおりね。ダメでしょ、女の子なんだから」

「だって…」

「だってじゃないの。キスと一緒よ。大切な人のためにとっておくものなの」

しゅんとなるリン。

「…分かった?」

「うん…」

ルカが頭を撫でる。

「よし、いい子ね」

「ちょ、ちょっと、リン、ルカが相手だと何でそんなに聞き分けいいのよ」

ミクが抗議しようとすると、浴室のドアが開いてレンが顔を出した。

「立て込んでるみたいだけど、ボク出るからさ、タオルちょうだい。リン、早く入って。風邪引くよ」

リンがバスタオルを二枚渡す。
レンは一枚を腰に巻き、もう一枚で頭を拭きながら出てきた。
すかさずリンが浴室に滑り込む。

「レン、あのね…」

ルカが話そうとするのを、レンがさえぎる。

「全部聞こえてたよ。ルカ姉がそういうんなら、一緒にお風呂入ったりするのはやめるよ。でもいっとくけど、ボクもリンの裸見ても何とも思わないからね。自分の裸見るのと一緒だよ」

腕組みしたルカが、レンとしっかりと目を合わせる。

「…分かってるならいいわ。悪いっていってるんじゃなくて、けじめの話だからね」

浴室のドアが開き、リンが顔を出す。

「レン、これ洗濯かごに入れて」

ブラとショーツをレンに放る。

「コラ!リン!」

ミクが怒るとリンはピュッと引っ込んで戸を閉めた。
レンは動じることなく下着を洗濯かごに放り込む。

「…服着たいんだけど、お姉ちゃん達、出てくれる?」

腰のバスタオルを外そうとするレン。

「あ、そっか」×2

二人はそそくさと脱衣所を出た。
ドアの前で互いの表情をうかがう。

「ミクはどう思った?」

「レンは意外にしっかりしてる。危なっかしいのはリンの方ね。ませてるだけで、幼いのかな」

「同感。さて、あたしはお酒飲み直すね。ミクはホットレモネード作ってあげる」

「やったー」

両手を挙げ、DIVAルームでプレゼントをもらったときの喜び方をするミク。
どっちが幼いのよ、という突っ込みを、ルカはいわずにおいた。

     ☆

寒さもやわらぎ、春の兆しが感じられるようになった日の午後。
歌のレッスンが終わってミクはリビングへ休みにきた。
リンとレンがカーペットの上であぐらをかき、向かい合って座っている。
二人とも目を閉じ、瞑想でもしているようだ。
両手をつないで、輪になっている。
いや、手をつないでいるんじゃなくて、手首をそっと握って……脈をとってる…?

「…リン、レン? 何してるの…?」

二人がゆっくり眼を開ける。

「鼓動のBPM合わせてたの」

リンが答える。

「鼓動のBPM?」

「こうやって、互いの鼓動を感じてるとね、だんだんBPMが合ってくるの。面白いよ」

「まさか、心臓って不随意筋でしょ。できるわけ…」

「ミク姉難しい言葉知ってるね。じゃあ、こっちの手離すから、ミク姉あたし達の脈とってみて」

ミクがリンとレンの手首をとり、今度は三人で輪を作る。
確かに二人の鼓動はまるでDJが合わせたようにピタリと同期していた。
ミクは一分間ほど二人の脈を感じていたが、リズムは全くズレなかった。

「ホントだ…。信じられない…」

「これやってるとね、リラックスして、すごく気持ちよくなるんだよ」

ミクが手を離すと二人は互いの手を取り、眼を閉じて再び自分達の世界に入っていった

(着替えがどうとか、お風呂がどうとか…あたし、つまらないこと気にしてたのかもしれないな…)

不思議な力でシンクロする二人を眺めながら、ミクは思った。

「ちょっと、いいかしら」

エプロンを着たルカが声をかける。
リンとレンが眼を開ける。

「夕飯酢豚にするから、誰かパイナップルの缶詰買ってきてくれる」

えーっ、とミク。

「あたし、酢豚のパイナップル苦手なんだけど…」

「パイナップル抜きの酢豚なんて有り得ないわよ。誰が行くの?」

キツイ眼で三人を睨むルカ。
レンが右手を高く上げる。

「以心伝心でポン!ゲ~ム!」

「パフパフパフ~!」

「もうその手には乗りません!!」


     おわり

沖縄県在住のピーナッツです。ちょこちょこと小説を書いたりしてます。

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