【二次創作】粘着系男子の15年ネチネチ【後編】

投稿日:2011/09/16 20:56:39 | 文字数:2,697文字 | 閲覧数:263 | カテゴリ:小説

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前編に引き続き、お読みいただいてありがとうございます!

感想やアドバイスをいただけると嬉しいです!

家の裏でマンボウが死んでるPさんの解説や歌詞を参考に書かせて
いただきました。


何かご都合が悪かったら、消去します。


追記>注目作品&なにこれ泣けるタグが追加されてる…なんて!?
    感動で、もうおなかいっぱいです。

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TEXT
 

※これは前に投稿した 【二次創作】粘着系男子の15年ネチネチ【前編】の後編です。
前編をご覧になっていない方は先に前編をご覧ください※



「貴方もよくここに来るなとは思ってましたけど、まさか事故に合うなんてねぇ。
だから、無茶のし過ぎはいけないと注意したのに。」

蝉の鳴き声がやかましく聞こえる中、僕の目の前には白衣を着た医者の男性が
困り果てたように溜め息をついている。

「はぁ……。」

医者から聞いた話によると、僕は交通事故にあって後頭部を殴打して
記憶を失ってしまったらしい。
道路にふらりと僕自身が飛び出したそうだ。
ただ、過労で倒れたという可能性もあってはっきりとは分かってはいないので、
自殺なのか事故なのかは分からない。
とにかく、どちらにしても僕のせいでその加害者になってしまった人には
とても悪いなぁ、と頭の片隅で微かに思った。
実際に、僕は自分の名前も自分の住んでいる場所も何も覚えてないのだから、
嘘ではないだろう。
いや、「何も覚えてない」わけではない。
僕は、とある女性が好きだったことは覚えている。
僕が事故に合った時、大事に抱えていた手紙の相手らしい。
一体、僕が記憶を失ってまで覚えている程、愛した女性とは
どんな女性なのだろうか…。


9年目に僕は事故にあった。
どうやら、頭を強く打ったせいで記憶を失ってしまったらしい。
僕は自分の名前も覚えていなかった。
でも、君を愛していた事だけは覚えていた。



「はぁ……。」

秋冬春夏秋冬春夏秋と季節が移り変わっても、結局あれから
何一つ思い出さない。
頼りの女性への手紙にも何度も「少しでいいから返事を下さい」と書いても、
返事が来る気配はない。
ポストを確認し落胆した僕の目の前を、赤い赤とんぼが僕の気持ちなど
関係なしにマイペースに飛び交う。
家にその女性と思われる、女性の写真が1枚だけあった。
何となくその写真を眺めているだけで心が和らいできて、
本当に好きなんだなぁと他人事のように思った。
ただ、何があってもやっぱり、僕はその人の事が好きだった。


10年目も11年目も。
記憶は戻ってこない。
ただただ、返事がほしくて。
君の事が変わらず大好きだった。



また何度も季節が移り変わったけれど、やはり何も思い出さない。
手紙が来る様子もない。
どうしてだろう どうして 彼女は返事をくれないのだろう。
知り合いではなかったのだろうか?
住所の場所に行って確認しようと思ったが、女性の家をいきなり男性が
訪ねるのも悪いと思って止めた。
もしかすると、記憶を失くす前の僕はストーカーだったのかもしれない。
そうも思ったが、手紙を送ることは止められなかった。
ここで止めてしまったら、いけないような気がしたのだ。
とにかく、僕は変わらず、手紙を毎日送り続けた。


12年目も13年目も。
記憶は戻って来ないけれど、それでも君が好きだった。
凄く、凄く、愛していた。
「その人の事が好き」しか、僕は持っていなかった。



怖いよ。
不安だよ。
僕は、何も、覚えてないんだ。
「君を愛していた事」しか。
僕には、何も分からないんだ。
お願いだから、頼むから。
一目で、いいから、一言で、いいから。
何も、分からなくても、いいから。
君に会って、話したかった。


14年目になっても戻らない。
毎日、毎日、怖くて、不安で。
君を一目見たくて、一言言いたくて。
君の事を、どうしようもない程、愛していた。



「あ……あぁぅあぁあぁああああっぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ。」

ボロボロと涙が零れる。
もういい歳した男が部屋で声を上げて大泣きして恥ずかしいが、
僕には泣く事しか出来なかった。
上手く喋れなくなって、喉に声が詰まるように感じる程に、
綺麗な泣き方なんか忘れて顔が涙と鼻水でくしゃくしゃになる程に、
僕は泣いた。
思い出したのだ。
全てを。


15年目に記憶が戻った。
全部思い出して、声を上げて泣き出した。
僕は思い出した。
僕の全てを、今までを。



8年目に、君を何に例えるか悩んだ事。

7年目に、完調した事。

6年目に、体を壊した事。

5年目に、プロポエマーになった事。

4年間に、サラリーマンを辞めた事。

3年目に、手紙にこなれてきた事。

2年目に、火事になった事。

1年目に、がむしゃらだった事。




15年前に、君が死んだ事を―――。



たんすの奥に仕舞い込んでいた箱から鍵を取り出し、すぐに今日の分の手紙を持って
家を飛び出す。
住所の場所に着き、鍵でドアを開ける。
中には誰もいなかった。
ただ、彼女の使っていた物が置き去りにされるようにそのまま残っていた。
それと、僕が送り続けていた手紙。



君が事故にあった日。
もう助からないと言われて病室で手を握って付き添っていた僕に、
力を振り絞るように笑って話していた君。

「ねぇ、そんな、泣きそうな顔、しないでよ。ただ、近距離恋愛が、遠距離恋愛、に、変わる、だけじゃない。」
「それだけじゃないよ。もう、会う事も話す事も一緒に何かする事も
出来なくなるんだよ。」

涙声で言う僕に、息も絶え絶えに君は語る。

「会う事が、話す事が、一緒に、何かする事が、出来なくても、私は、いつも、貴方の事、を、見守って、るから。貴方が、愛してくれる、限り、私は、貴方を、愛し続ける、から。」
「そんな事言わないでよ。僕はずっと君だけを愛してるよ。」
「ありが、とう、私、も、貴な、た、の、事、あ、いし、てる、か、ら、ぜっ、た、い、に。」
「分かった。分かったから!!もうそれ以上、喋ったら……!」

心配そうに顔を覗き込む僕に、君はへにゃりと優しく微笑んで、僕を抱きしめた。

「          」

僕の耳元で微かに弱々しい声が聞こえた。
その直後、耳障りな機械音が病室に響き渡った―――――。



会う事が、話す事が、一緒に何かする事が、出来ないのなら、
君にこの思いを、伝えるために、手紙を書こう。
重ねていけば、きっと、いつか、届くさ。
君のだった部屋に、毎日放り込んだ。
例え、見えなくたって、触れられなくたって、愛し続けると決めたんだ。

でも、また会えると思ったよ。

君はまた、僕の目の前からいなくなった。



君への愛を綴ったポエムを送り続けて16年。

返事はまだ来ない。

返事はまだ来ない―――――。




《完》

書き手になりたい、コウです。

主にボカロ曲の二次創作小説をうpすると思います。

よろしくお願いします。

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