「ツキノカケラ」小説/第一話

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/07/20 17:22:10 | 文字数:3,877文字 | 閲覧数:163 | カテゴリ:小説 | 全2バージョン

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今月のテーマ「夜空」への投稿作品です。

あれだけ青春なプロローグから、

一気に現実的な第一話。

作中に出てくるポッドの仕組みとかはあんまり描写しません。

そこまで書いてると、唯のSFになってしまう。

メイはメイコ。

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TEXT
 

 ポッドのガラス越しに薄暗い船内が見える。
 もう何人かはポッドの外に出ているようで、ガラス越しに話し声や人の歩く足音がした。
 私のポッドの中を照らしている光を受けながら、数人の少年少女が通路を駆けて行く。
 入眠装置の解除されたポッドの中で、私が夢見心地から覚めると、自動で扉が開き、私の手足と体を固定していたベルトが自然に解けた。
 私はポッドの外に出て、おばあちゃんと錬の様子を見た。
 錬も、ぴくぴくと手足を動かし、目が開きそうなところだった。だけど、おばあちゃんが目を覚まさない。おばあちゃんのポッドの外側に赤い小さなランプがついていた。
「緊急案内」と、液晶の上に書かれたボタンがあったので、押してみた。
「乗客、無呼吸状態。呼吸停止から3.5万年経過」と言う、一瞬意味の分からない表示が出た。
 おばあちゃんは、ポッド内に居る時に、何かの原因で呼吸が止まった。それも、3.5万年前に…私達はそれだけ長い旅をしてきたと言うことだろうか。
 錬のポッドが開いた。私は、弟が無事かどうか心配だったけど、錬は何事もないみたいにポッドから出てきた。
「錬、体大丈夫?」と聞くと、「ちょっと頭が痛い」と答える。それから、「ばあちゃんは?」と聞いてきた。
「死んじゃったみたい。遺体が保存されてた」と答えて、私はおばあちゃんのポッドを見た。
 錬も、眠ったままに見えるおばあちゃんの遺体をガラス越しに見てから、「そっか。でも、ぐずぐずしてても仕方ない。外に出てみよう」と言って、その場から引き離すように私の手を引いた。
 宇宙船の外は、岬の近くの海辺のような場所だった。
 広く海が広がり、岩礁に波が打ち付ける。
 宇宙船から、次々に人が降りてくる。みんな、少しずつ様子が違う。
 もう12歳くらいに見えるのに、つんつるてんの子供服を着ている人も居れば、髭や髪の毛が異常に伸びている人もいる。私達も、互いをよく見てみて、少しだけ「成長」していたのが分かった。
 私は、髪と身長が少し伸びている。錬も、解いてた髪の毛が少しぼさぼさになるくらい伸びて、身長が私より頭1個分高い。
「装置の中でも、ちょっとは変化するんだね」と私は言った。
「そうじゃなきゃ、ばあちゃんだって死なないよ」と錬は少し苛立たしげに言う。「此処が、人間の入植が可能な星って事だけど…。なんにもないな」
 生き残った入植者達は、まだみんな状況が分かって無い風だった。
 誰が決めたわけでもなく、陸地の様子を見に行く者や、宇宙船の中に仕えそうなものが無いかを探し始める者が現れた。
 宇宙船の中から、子供の泣き声が聞こえてきた。たぶん、移住前に赤ちゃんだった子供達だ。自分でポッドを出ることが出来ないので、恐怖で泣いているのだろう。
 保護者に見つけてもらえた子供は良かったが、保護者が死亡している場合もあった。そんな子供達は、他の大人の手でポッドから解放された。
 移動中に亡くなっている人は、おばあちゃんだけじゃなかった。数名の保護者や若者は眠ったまま死んでいた。
 私達は、これからどうすれば良いんだろう。
 そんなことを考えてると、陸地の様子を見に行っていた一団が、大量の枯れ枝のようなものを持ってきた。
「燃えそうなものがあった。火を起こそう」と、ボーイッシュな茶色の髪と目の女性が大声で言う。
 海の浅瀬になっている場所を見つけた一団は、
「何処かに大きなビニールシートはない?」と聞いてくる。聞くに、海水を蒸留して真水を作ろうとしているらしい。
 宇宙船の中を漁っていた一団が、レジャーシートのようなものを見つけて、海チームに渡していた。

 あっと言う間に夜が来た。この星は、地球より日照時間が短いのだろうか。それとも、私達が起きたのが、日暮れに近い時間帯だったのだろうか。
 気温はそんなに変わらないけど、微かに肌寒くなった。私達は、陸地チームが起こしてくれた火の周りに集まった。
 統率のとれてなかった集団の中で、リーダーを選出した。
 茶色の髪と目の、20代くらいの女の人が選ばれた。昼間、火を起こそうと呼びかけていた人だ。
「私は、メイ・カシス。メイと呼んでください。これからの、この星での生活について、話し合いましょう」と、女性は言った。
 会議は、まず「生命維持が出来る環境を整える事」と、「移動中に死亡した者達の弔いをする事」、それから「知的生命体の有無を確認する事」が優先された。
 数百人居る「入植者」達は、自己決定で3つの班に分かれた。子供の面倒を見なければならない者達は、任務から除外された。
 私は、まだ体力的に探索に出るに適していないとされ、亡骸の埋葬と、保護者の居ない子供の面倒を見る仕事を任された。
 錬は、水を作る仕事を手伝うことと、知的生命体を探す係の一人になった。水を作るには、地面に大きな穴を掘らないと成らないので、腕力が必要なんだって。
 だけど、人を埋葬するって言うのも、そこそこ腕力は必要だった。
 浅く地面を掘っても、風の浸食で亡骸が露出してしまう。
 宇宙船内に備えられていた「最低限の道具」であるスコップや鍬で、1m以上は深く掘り、一つの穴に一人の亡骸を横たえて埋め、目印として墓標を立てた。
 私はその仕事を終えてから、海水で手を洗い、子供達の面倒を見た。
 人格を形成するのに必要な時間を眠って過ごした子供達は、体は成長していても、精神的には赤ん坊のままだった。
 なんでも口に入れようとするし、なんにでも興味を示すのに、なんにでもすぐ飽きて、泣きだす。昼夜関係なく、気分が良ければすぐに眠ってしまう。
 話はほとんど通じない。彼等が何を言いたいかは、つたない幼児語と、泣き方やぐずり方を見て判断するしかない。習性が無い分、猫の世話より大変かもしれない。
 私は「女は楽だよな。子供と遊んでりゃ良いんだから」なんて言われてた、元の世界が馬鹿みたいに思えた。
 子供を危険から守りながら、夫の世話をして、家庭を切り盛りしていた「主婦」と呼ばれる人達が、どれだけ有能だったのかを知った。
 そして、男性が何故、妻に自分の面倒まで任せきるのかの理由も分かった。「女の仕事は簡単だ」と言う先入観があるんだ。
 その予測を見事に的中させたのが、うちの弟だった。
「水、残ってる?」と、焚火が明るくなる頃に探索から帰ってきて言う。
「ごめん。粉ミルク溶かすので、ほとんど使っちゃった」と私が言うと、「なんだよ。人が苦労してあちこち駆けずり回ってるのに。水くらい残しとけよ」と文句を言ってくる。
「赤ちゃんが泣くんだから、仕方ないでしょ」私も少し怒りながら言い返した。「大人なんだから、1日くらい何も飲まなくても死なないでしょ。我慢してよ」
「歩き回るってのは体力が要るんだよ。お前達は地面に座ってるだけなんだから分かんないだろうけど」と、錬。
「地面に座ってられる時間が欲しいわよ」と、私は皮肉を返した。
 だけど、錬や周りの男の人達は、その意味が分かんなかったみたいだ。子供と触れてないから、想像力が無いんだ。

 頭の中が赤ん坊で、体だけが成長した子供達は、手足が上手く動かせない。まず、歩き方や道具の使い方を教えなければならなかった。
 備品の布を切って、子供服やおしめを作り、子供達にあてがった。
 体が動くようになってくると、子供達は興味の赴くままにあちこちに出かけようとし始めた。
 幼稚園のような施設もないし、大人達が自由に出かけている陸地を、子供達は「どこからどこまでが出かけて良い場所」かなんて分からない。
 その子供を達を追いかけまわして、女性達は毎日くたくたになっていた。
 子供達は、女性達に追い掛け回されるのを楽しんでいるようにも見える。特に、男の子は運動が活発なので、男の子の面倒を見る係になった日は、朝から憂鬱だった。
 幼児達は、自分の感覚で覚えたもの以外は疑いを持つようで、危険だと教えられても、焚火の中に手を突っ込もうとしたりする。
「何故それが危険なのか?」と言う疑問を解消したいのだろう。

 私達が降り立った陸地は、完全な孤島で、この星の時間で半日も歩けば島が一周できる。メイさんが、そう教えてくれた。
 見える範囲の近くに似たような島もなく、陸地にいる生命体は植物以外見つけられなかったそうだ。
「ですが、人間らしきものを見たと言う証言もあります。しばらく、知的生物の探索も続けましょう」
 そう決定された日、この星に来てから、初めて「雨」が降った。
 成分が何かわからないので、そのまま飲んだり、長時間浴びるのは危険だとされて、私達は宇宙船の中や、島の中にわずかにある林の中に逃げ込んだ。
 肌寒さにガタガタ震えながら、雨が通り過ぎるのを待っていると、言葉を覚えて来た子供達の一人が、「なんでかくれるの?」と聞いてきた。
「雨が降ってるからだよ」と私は答えた。「普通の雨じゃないかも知れないから」
「ふつうのあめってどんなあめ?」と、子供は問い続ける。
「普通の雨は、空気を洗ったり、地面を洗ったりしてくれる、空から降ってくる綺麗な水。でも、この星の雨はまだ、どんな水か分からないんだよ」と、答えると、子供達はきょとんとしていた。
 自分が生まれた「星」と、自分達が成長しようとしている「星」が、違うことをまだ学習していないのだ。
 私達は、唯、暗闇の中で雨の音が止むのを、待った。

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

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