【カイメイ】 ネコに飼い慣らされる方法

投稿日:2012/06/25 13:49:06 | 文字数:4,583文字 | 閲覧数:915 | カテゴリ:小説 | 全3バージョン

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*前のバージョンで進みます。全3Pです。


DIVAモジュール『KAITOクラシック』と『MEIKOブラックテール』で脳内妄想よろしくお願いしますということでカイメイだと言い張ってみる第2弾 第一弾 http://piapro.jp/t/s6gr

鬼畜で通るクラシックだがひょんなことから迷い込んだ一匹の猫との出会いが彼の人生を変えた!かどうかは不明なパラレルです。

2人の出逢いの話です。意地悪クラシック様、ちょっと可哀想なテールちゃんがいますお気を付け下さい。
愛には溢れています。主にクラ様の愛が凄くてちょっと…貴族ぶってても所詮カイトなんだなコイツ…(遠い目)って思いました!

色々考えまして、今回呼び名が変わっております。前回の分と合わせ、ご了承ください。

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TEXT
 

ほんの気まぐれで、獣を一匹捕らえた。
元よりそれなりに知能のある獣だ。一から十まで面倒を見てやる必要はないだろう。寝床と風呂場、不浄場、餌さえ与えておけば、あとは自分でどうにでもするはずだ。
ただ、捕らえたその日に召使いが全身を傷だらけにして私の元を訪れ、「何が何でも逃げ出そうとします」と半分泣きそうなのを堪えながら申し入れて来た時はさすがに、屋敷の最下層にある強固な鍵付きの客間――要するに人間を生かして飼うための檻――の使用を認めた。

仕事で4、5日、屋敷に帰らなかった。その間捕らえた獣のことが気にならなかったわけではないが、仕事に比べれば余りに些末なことだった。片付けるべき全てのことが終わり一息ついた瞬間まで、私はそのことを忘れていたくらいだった。


                     *


お帰りなさいませと名前も顔も知らない使用人たちにズラリと頭を下げられ、いつものことだが内心で辟易する。このような者たち、私個人には一人たりとも必要のない連中だというのに。何代も歴史を遡り、大昔から引き継いできたこの館を管理するには、どうあってもそれなりの人手を要する。
一瞥もくれずに通り過ぎようとしたその列の最後、一人のメイドがひどくおどおどと声をかけてきた。
「―――ご、ご主人様」
…珍しい。この私に、望まれてもいない状況で何かを申し出るとは。特段怒ってはいなかったが、その女は私が視線をやっただけで肩を震わせた。
「なんだ」
「…も、申し訳ありません。…お任せ頂いていた、…猫のことなのですが」
…猫?
一瞬なんのことかわからず眉を寄せる。機嫌を損ねたのだと思った女は、さらに怯えた様子を見せた。
猫。…あぁ、例の獣のことか。
「あれがどうした」
「…その、わたくし共も、最大限の努めはしたのですが」
「言い訳はいい要点を言え」
「は、ハイ。…その…」



屋敷の地下へと続く階段を下りながら、私はため息をついた。
面倒な話だ。獣など飼うものではない。多少知恵があるとなればなおさらだ。
メイドが言うには、捕らえてからのこの数日間、あれはどんな餌を出しても、絶対に口にしなかったという。水は風呂場で飲めるのだろう、しかし差し出された餌には、例え水だろうとミルクだろうと金のかかった食事だろうと残飯だろうと、全てに毛を逆立てて警戒し、無理に食べさせようとすれば凄まじい抵抗に遭った。
あれでも、名の知れた怪盗だ。身のこなしに関しては素人がかなうわけがない。そのうち誰も手が出せなくなり、無言で餌を部屋に置いて退散するだけになったが、次に部屋を訪れても中身が減っていることは決してなかったという。
このままでは死んでしまいます、と訴えたメイドの懸念は正しい。そうなれば困るのは自分たちなのだ、必死にもなる。私に言ったところで「お前たちの仕事だお前たちでどうにかしろ」と言われればそれまでだ。それでもあえて申告してきたのは、本当に最後の手段だったのに違いない。
―――ただし私が今こうしてあれの元に向かっているのは、純粋な好奇心が仕事の疲れよりもわずかに勝ったからであり、事態を打開してやろうという気はさらさらなかった。


二重になっている重い扉の最後の鍵を開けると、すぐ目の前に鉄の格子が現れる。
その格子ごしに部屋の内部を見渡す。この明らかに牢としか言いようのない格子さえなければ、中は非常に豪奢な貴賓室で、かつての屋敷の主が莫大な費用をかけて作らせたものらしい。一体どんな用途で、必要に迫られたのか、好んで使ったのか、興味もなく知りたいとも思わないが。
獣は部屋の角にペタンと足を折り曲げ床に手をついて、下から睨みあげるようにこちらを凝視していた。
いつ飛びかかられても対処できる気概を整えて、格子の鍵を開け毛足の長い絨毯に足を踏み入れる。
私はなに食わぬ顔で部屋を横断し、テーブルに置いてあった食事一式に目を留めた。
いくつかのパン、サラダ、卵料理、魚料理、水差し、皿の上のミルク…立派なものではないか。獣一匹にしては贅沢な配膳だ。しかし告げられた通り、それらには全く手が着けられた様子はなかった。
私はミルクの入った皿を手に取り、身を竦ませている獣の前に立った。あれは私を見上げ、じり、と壁に身を寄せる。尻尾の毛が全て逆立ち必死の警戒を示しているが、完全に虚勢なのは目を見ればわかる。
その容貌はわずかに やつれ、毛並みは落ち、気勢はない。数日間水ばかりなら当然だろう。馬鹿な奴だ。逃げ出そうと思っているのなら、物を食べないで弱るなど得策ではない。
「…なぜ食べない?」
威圧を籠め、低い声音で尋ねる。
足元に皿を置き、爪先で軽く蹴りやった。
獣は射殺せんばかりにこちらを睨み上げている。
屈みこみ床に片膝をつけ至近距離で覗きこんでやると、獣はますます身を引いて私を威嚇した。それを嘲笑うかのように、細いあごを掴み、無理やりにこちらを向かせる。
その瞬間、鋭い爪が私の目に飛び込んできた。咄嗟に避けたが、油断ならない素早さだ。獣は八重歯を剥き出して、フーッと獣らしく唸っている。
私は冷めた目でそれを見下げ、その頬をバンと強くはたいた。それとほぼ同時に両手首を掴み、絨毯に組み伏せる。容赦はしない。獣には最初の脅威付けが重要なのだ。あまりに一瞬の出来事に驚き、虚勢をはぎ取られた琥珀の瞳が、見開いて私を見上げた。
「―――自分の立場を自覚しろ」
私の恫喝的な声に、触れている箇所から、獣が大きく身体を震わせたのがわかる。
「お前を捕えたのは私だ。私にはお前を殺す権利がある。それを生かしておいてやろうというのだ」
「―――……ッ」
はじめの威勢はどこにいったのか。怯えきり、眉尻を下げる表情は完全に圧倒されている。
その顔に、造形に、私は少しの不快感とごまかしきれない渇き、そして焦燥に近い苛立ちを覚えた。
―――あぁ、この顔が。
―――なぜよりにもよってこの顔の獣が、私の前に飛び込んできたのか。
目を眇め舌打ちを隠せない私に、獣の脅威はますます加速していく。
これの本能は、私を主と認めたようだ。ならばこれより逆らうことは認めない。
…捕えたのは、単なる気まぐれな興味からだった。
しかし今、私が決めた。
勝手に死ぬなど許さない。
この獣は、一生私の元で飼い殺す。
「……っや」
か細い声が漏れた。抑えつけた手首は今にも折れそうに細い。
「は、なし」
「ならば喰え」
「ゃ、だ」
怯えた瞳のまま、たどたどしく首を振る。その強情さに私は再び舌打ちした。
床にあるミルク皿を、獣の口唇に寄せる。獣は驚きすぐに顔を背けたが、許すはずもない。頬を強く掴み口を開くよう強要するが、私を拒み、暴れ、弱々しく叫ぶ。
「やだ、ぁ…!きらい、き、らい」
私は鼻で笑った。猫のくせにミルクが嫌いなのか。どんな贅沢な環境にいたのだ、獣の分際で。
らちが明かないと、獣の細い首を片手で絞めんばかりに掴んだ。ビクリと身を強張らせて硬直するその隙に、私はミルクを自分の口に含み、戦慄く口唇を自分のそれで塞ぎ、獣の中に無理やりミルクを注いでやった。
驚く瞳を間近に見ながら、指をゆるめ、滑らかな感触の首筋をスルリと撫でる。抗っていた獣はその動きに促されるように、些か苦しそうだがコクリコクリと、のどを動かして生ぬるい液体を飲み込んだ。
口唇を離す。すぐに咳き込み、キツく瞳を閉じたまま、獣はボロボロと涙を流した。
「…っひ、…ひぅ、うぅー…」
甲高い泣き声ほど鬱陶しいものはない。私は眉を顰めた。
「泣くな」
「…っき、きら、きらい………きらい…」
「何がそんなに不満だ。そんなに嫌いなら吐くほど飲ませてやる」
私は自分でもわからぬ苛立ちに駆られ、再びミルクの皿を手に取った。それを見て猫は恐怖を露わにし、悲鳴をあげて私に握った拳をむちゃくちゃにぶつける。
「やだ、やだあぁ!!きらい、―――ニンゲン、きらい…っ!!」
…それを聞き咎め、私は思わず動きを止めた。
獣は繰り返し、泣く。そのうち抗う力も失くし、手の甲で顔を覆って、ひっくひっくと咽喉を震わせた。
私の身体の下で、無力に泣きじゃくる一匹の猫。
それを改めて見下ろし、ふと思う。
―――これは美しい獣だ。
美しく、知能があり、それでも充二分に愚かで、扱いやすく、…何より珍しい。
涎を垂らして欲しがる下卑た輩ならいくらでもいるだろう。
…なるほど。合点が行った。
決して人に懐かないのも。人からの餌をこれほどまでに拒絶するのも。
「…かつて毒でも飲まされたか」
猫は濡れた瞳を見開き、その時の畏れを思い出したのか、自身の肩を抱いてカタカタと震えた。
「…っ変な、の、もう、いや」
「…」
「あんなの、ぃ、いや、やだ…」
尋常ではないその様子に、飲まされたものが単なる「毒」ではなかったのだろうと私は朧気に感じ取った。
美しい獣。―――なるほど、使い道などいくらでもある。
心の奥にふつりと沸いた感情の正体がわからぬまま、泣き続ける猫の腕を掴んで、強引に上半身を引っ張りあげた。猫は床に座り込み、私のことなど見もせずに何度も首を振る。
「もう、信じ、な…っ。ニンゲン、きらい…きらい」
ミルクで汚れた口元、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をスカーフで拭ってやる。猫はされるがままに、それでもきらいきらいと繰り返した。

私の支配下で、飼うつもりだった。
この獣の全てを私が所有し、私が権利を持つ。
従順である必要はない。どんなに反抗的だろうと、自由を奪うのなら関係ないからだ。むしろ攻撃的であれ。私に噛みつき、逆らった挙げ句、己の無力さを思い知って絶望し、屈せばいいと。
そう思っていた。

「…お前は私のものだ」
無意識に口から紡がれた言葉が、言い終えて己の本心なのだと知った。
そしてその言葉に、猫はあからさまに怯えた様子を見せた。かつて同じ台詞を言い放った輩がいたのだろう。
ふつり。また胸の奥が泡立つ。―――“お前は私のものだ”
「だが、私はお前を力尽くで従わせようとは思わない」
お前をかつて傲慢に扱ったニンゲン達のように。
「…やだぁ」
私の言う意味がわからないのか。猫はただ怯え、私を拒絶する。
「やだ…やだ…出し、て、ここから、出して」
「お前を放す気はない。だが、私はお前を傷つけない」
そうだ。感情のまま言葉にするたび、自分の思考を理解する。こんな風に泣かせても不快なだけだ。ならば私は、この弱く厄介な生き物をどうしたいというのか。
傷付ける気はない。
手放す気も。
随分怯えさせた。トラウマに触れたのだろう、猫はどうあっても私の言葉を聞こうとはしなかった。
竦み上がり小さくなった身体を抱きしめようと手を伸ばして。
ひぅ、と息を飲み竦み上がる様子に、諦めた気持ちになり、手を戻した。
これ以上は何を言っても効くまい。
恐る恐るといった瞳が、私を下から覗きこんでくる。
私は声音を抑え、そっと告げた。
「私を恐れる必要はない。私も、お前と同じ。……ニンゲンなど大嫌いだ」
わずかに、見開かれた猫の目に畏怖以外の感情が表れる。
私はそれだけで満足し、立ち上がると、部屋をあとにした。

MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。

液晶の向こうに行くことは諦めたので悔しいけどめーちゃんはカイトさんに任せることにしました。幸せになれ。幸せになれ。

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