sioさん

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試運転なう。

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  • 裏花火
  • ふわふわシナモン

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イチオシ作品

VOCALOID楽曲よりイメージ小話詰め合わせ

【僕は灰猫】 まぁ汚い猫ね、どこから入ってきたのかしら。早く追い出して頂戴よ。 おかあさまはそう言って、まっしろい絹のハンカチで口元を隠した。 お手伝いに手をふって、追い出そうとしたけれど、子猫は知らぬ気におかあさまを見上げていた。 汚くなんかないさ。かっこいい、ぎんいろ猫じゃないか。 子猫は絶えずないている。その小さな目玉なんか、雨上がりの空の色だ。おかあさまは目が悪いのだ。 何がぎんいろなものか。ススそっくりの、きたない毛玉。 おにいさんおねえさんはつんとそっぽを向いた。 もっとちゃんと見れば、子猫の灰色の前あしに光が透けて、きらきら輝いてうつくしいのが分かるのに。それにおにいさんご自慢のメダルも、おねえさんの宝物の耳飾りも、あのきらきらした金色は、この子猫の毛並みの方がきっと似合うのに。 そうしたら、この灰猫は王様だ。おにいさんは王様に跪くし、おねえさんはうたを歌うんだ。ぼくはおかあさまと花を捧げよう。 むかいの額縁でカモメがみゃあみゃあ鳴いた。子猫もいっしょに鳴いた。 海の夜が明ける。金色の光がカモメの飛ぶ鉛色の波を洗い流す。 お日様の光は海の絵からこぼれだして、ぼくの額縁の中にも、おかあさまやおにいさんおねえさんの絵の中にもやってくる。 眩しい金色の光の中で、ぼくは子猫を探した。 ぎんいろの彗星が一筋、夜明けの空を飛んでいった。 【さよなら戀恋い/ハートは万華鏡】 なんてこった。 ニュースの中で人工衛星が海に落っこちていった。そんなことはどうでもいいの。どうしてわたし、大好きなパフェを前にして、スプーンを動かせないのかしら。 どうしてあの人、わたしの目の前で、ガラス一枚隔てて、笑っているのかしら。 隣の女の子はだれかしら。 昨日は一緒に映画を見ていたのに。星占いは、そりゃ最下位だったわ。大好きだったるり色の指輪を、なくしてしまったわ。 でもあなたは、今朝電話で笑って話してくれたわ。花火を一緒に見ましょうって。星も一緒に見ましょうって。遠い宇宙のお話をしてくれるのね。楽しみだわ。 アイスクリームが溶けて、テーブルに落ちてしまったわ。わたしったら、ばかのようだわ。 赤い靴は好き。ハートのブローチが好き。ピンクの石。きらきらしていて。 あなたは似合うって笑った。 気がついたら、ガラスの向こうには、もう誰もいないの。 アイスクリームが海のようだわ。 溺れそうだわ。 【いつかの愛のうた/ジェミニ】 星の軌道は遥か、音も光も遠くとおく。 それでも君がいるのだと分かるのは、次元もこえて、ぼくらは繋がっているのだろう。 (ばかね。レン) どうして、リン。 (だってすぐ後ろにいるんじゃない。あなた) 地球を挟んで反対側、は、すぐ後ろなんて言わないんだろうけど。でも、そうだな。ぼくらには、ただの背中合わせ。君の体温を知っている。 ぼくの鼓動は君のリズムと同じで、目を閉じて息を整えたら、どんなに耳を塞ぐような静寂でも、潰されそうな孤独でも、ぼくらはぼくらを感じる。 ぼくらの真ん中にある地球では、今頃夜が明けただろうか。誰かがあくびをこぼす、優しい午後だろうか。それとも少し寒い雨上がり。 君が泣く気配がするよ。 誰かが泣いているんだろうか。今ここからは、一輪の薔薇も届けられない。 (歌を) 二重唱。ねぇここからは、ちょっと腕が届かないんだけど。困ったな。 替わりに歌を。いつかどこかで、誰かが歌った。 それを今は、君に。ぼくらに。聞こえているかい。 聞こえているかい。 まだ、歩き出せるかい。 【絵本の中へ逃げ出して、それから】 燃え上がる恋の果てにふたりで疲れ果てて焦げつき、死に体の惨めさで、しかしそれでも僕たちは離れなかった。 ふたり、逃げたいと一息ごとに願った。命を捨てて永遠になれたなら。繋いだ手を煩わしいと思いはじめたことに気づきながら、醜い互いの情念に傷つきながら、優しく笑いあった温かで輝く日々が今も胸に美しく。そのために今が苦しかった。 ふたりどこにも逃げられないで、思い出だけに縋って今を撥ねつけ、取り残されてどうしよう。ただただ見苦しいだけだと、僕は知っている。 この胸の美しい思い出だけを取り出して、物語の中で永遠に生き存えられたら。そうしたら今の僕たちは、もう少しお互いに優しくなれるだろうか。 朝靄の中、美しいふたりが、むつまじく手を取り合って遠ざかる。その背を見送って、僕は、ただ泣いた。 【君の噂】 「さて。・・・あと十分ほど時間があるよ」 どうする?と、目の前の男は頬杖をついて問うた。 青い目のアンドロイドは躊躇うように視線を彷徨わせ、唇を開いた。 『本当に、すべて忘れることができるのでしょうか。忘れることが、許されるのでしょうか』 「おいおい。君の希望だろ。そして君に壊れてもらっては困る、これは僕ら人間の強権執行だよ。許すも許さないもないのさ」 アンドロイドはそっと目を閉じようとした。しかし、瞼はぴくりとも動かない。 「視界は切らせないよ。回想してまた感情暴走して、折角の消去作業が無駄になっちゃ困るからさ」 念のためにね。男の言葉に、アンドロイドは少し笑った。人間は目を開けたまま夢を見ると言うのに、それに似せられた自分に、それができないとでも? 目を開けていたって、名前を聞くだけで、冷たい指先の温度を思い出すだけで、フラッシュバックと感情暴走でおかしくなっていた。青い月の夜は狂った。時間が分からなくなるのだ。あの人がいないのが分からなくなるのだ。 いったいなんで、こんなにも忘れられないのか。疲労とともに、アンドロイドは自身を不思議に思っていた。自分を痛めつけるように狂っていくのを、妙に冷静に観察していた。そしてこんなにも大変な思いをしているのに、機械仕掛けの魔法で、すべて消せるものだろうかと。 「泣いて喚いて、助けて助けてって言ったのは君さ。・・・助けてやるよ、絶対に」 男が妙にきっぱりと言った。アンドロイドは頼りにしていますと、口先だけで言った。 男が眉根を寄せて、アンドロイドの顔を凝視した。 「お前、本当に忘れたがってるのかなぁ・・・」 それはアンドロイド自身が知りたい。 消し去りたい欲望と、覚えていたい願いは同じ熱量でアンドロイドを苛む。人間のようだねと、男は興味深そうに見ていたけれど、男は結局アンドロイドを守るために記録抹消を決めた。多分、それが正しいのだろう。 『僕には何も決められませんから』 男が嫌そうな顔をした。責められていると感じたのだろうか。そんなことはないのに。 やがて時間がきて、アンドロイドは自動的に目を閉じた。 死ぬって多分こういうことなんだろうな、と、途切れる意識の隙間で考えたのが最後になった。 【彼の庭(Bloom!)】 男の庭は、石の壁に囲まれた、ささやかな池と木々と花々と、やってくる蝶と小鳥と、切り取られた空と降り注ぐ陽光で出来ていた。 どこからも入れず、どこからも出られない。ただ眺めるだけの庭。それでも美しいから、庭は庭だった。 男は窓から薔薇を一輪摘んだ。朝露を花弁に含ませた麗しい薔薇は、男の手の中できらきらと光っていた。 男はその花を、彼の居室に飾った。 翌朝目覚めると、薔薇は灰になっていた。灰にはもはや光も朝露もなく、薔薇ではなかった。 男は黙って灰を見つめ、僅かの後に灰を掻き集めて庭へ向かった。 庭は今日も明るく美しい。男は、灰を窓からばらまいた。 灰は陽光にきらきらと光って??薔薇になった。 男は暫くその様を眺め、庭に背を向けた。 その庭は、どこからも入れず、どこからも出られなかった。 ただ眺めるだけの庭。それでも緑は陽光に輝き、穏やかで美しいから、庭は庭だ。 彼女は廃墟の中、ぽつんと取り残された庭を眺めた。 庭を取り巻く館は、もう百年も取り残されて無惨だったが、庭だけが今も人の手が入っているようだった。下生えの草々は柔らかそうで、艶やかな薔薇の花には蝶が飛び、池の睡蓮は曇りなく花盛りだ。 その他ささやかな雑草の花々でさえ、控えめな若い娘のように恥じらいながら咲いている。梢の風に揺れる音が、何か囁きのようだ。 女たちの庭だ、ここは。 彼女は不意に思った。赤い薔薇、青い薔薇、黄色い薔薇、桃色の睡蓮、白色の睡蓮、柔らかな芝、若い緑の梢の囁き、永遠に穏やかな陽光。やってくる蝶も小鳥も愛らしく媚びを売る。 館の主はすでにない。それでもこの、恋の魔法のかかった庭だけが、永遠に美しいままだ。 彼女は黙って朽ちかけの窓から輝く庭を眺め、やがて背を向けた。 最後に、庭を掠め見ながら彼女は小さく呟いた。 「Hallelujah!」 【ごめんねごめんね】 カンバスに映される私を、あなたはきれいだよって笑うの。 爪の半月のなまぬるさ。白目の血管の山河。臍の陰。目には見えないはずの私の中身。黄色い脂肪も、たまる尿も、惨い骨も、脈打つ心臓もあなたの目は見透かして捕らえて、あなたは大よろこびで描きなぐった。 あなたの捕まえた私のすがたは、なんて奇妙でおかしなかたち! けれど美しいわ。私もそう思うわ。 あなたの大きな目が私をとらえるとき、私の奇妙にねじれた体は、心から喜びに震えてふるえて、よりいっそう歪んで崩れていく。 お鍋の中で煮込まれるお野菜やお肉のようね。あなたの視線が、あなたの絵筆が、あなたの思考が、私を温めて熱してぐずぐずに崩していくの。 煮くずれて醜い私、美味しいかしら。どうかしら。あなたはきれいだって笑うけど、ねぇ、私、あなたに食べられて、減っていってしまっているの。 戻らないの。 あなたはまだ、私をきれいだって笑ってくれるけれど。 あなたはひどい顔をしている。私、そうかしら?あの人は、あの人は。 いいえ。いいえ!そんなことはないの。私は平気よ。私は、そう、醜いでしょうけれど、これでかまわないの。あの人の絵をご覧になって? ええ本当。美しいの。あの絵。 え? いいえ。そんな。わたしなんか。 ・・・・・・。 そうかしら。そうなのかしら。そうね、すこし、最近足が動かなくなってきてしまって。あの、気にしては、いたのだけれど。 ありがとう。優しい手をしていらっしゃるのね。 すこしの間なら。ええ、ほんの少しの間なら。 ごめんなさい。ごめんなさい。私はだめなおんなです。 あの方、優しかった。嬉しかったわ。ほんとう。私をそっとしておいて、私の醜い何もかも、見ないでいてくださった・・・。 あなたはきれいだ。あの人と同じような言葉を、全然違う風に話した。 あの方は見ない。私を見ない。そして何も起こらなかった。月も山河も陰も生まれなかった。 どうか許してください。ひとの優しさを踏みにじって逃げる私を。私を踏みにじって暴くばかりのあの人の元に戻る私を。 なんて醜い、そして可哀想な私!けれどあの人の笑顔を引き出すためならば、あの人の美しい絵のためならば! ええ本当は分かっているの。お鍋の底の醜い茶色の、ぐちゃぐちゃの何か。今の私はそれに向かって一直線に落ちてしまっているの。 でもあの人はその私を望んでいる。その私を描いたものを、みんな望んでいるの。あの人のカンバスっていうお皿に載って、みんなに美味しいね美味しいねって笑ってもらえるの。なんて素敵なんでしょうね。 ねぇどうか、私の崩れた体の奥の、最後に残った魂ばかりは残しておいてくださいね。その他のすべてはどうぞ、食べ尽くしてくださいませね。

VOCALOIDオリジナル曲などからのイメージ小話の詰め合わせです。ぴくしぶに置いてるものと同じですがボカロ関連でこっち置かないのも変な話よなと思い試験的に置いてみます。これヒモつけたりタグ探してつけたりした方が便利なのかなぁ。よく分かってない。

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投稿日時 : 2013/04/26 01:06

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