歌のたまご

繰り返す鼓動　囁き合う声
罅割れて生まれゆく想いにのせ
ただ貴方の為　育む記憶と
どんな風になろう　温かいメロディ
揺れるゆりかごで　繭に包まれて

てふてふ草子

瞼の裏広がる 鬼灯　恋い焦がれし幻想　甘露に　崩れかけた温もり 喘ぎて　積み重ねてゆく　朧に
螺鈿の爪喰い込む 手枕　宵さやかなる褥　袖に 音もなく舞う蝶は 爆ぜて　夜伽花衣
そっと手を差し伸べて　深く抱きしめていて　剥がれ落ちて滲む言の葉　記憶に燈して
揺れる魂のように　沈む情景のように　狂い咲いた月の涙の 花弁残して　契りて
紅に染まりゆく 秘すれど 陽炎たゆたう夢　糸遊　

夜想戀華

流離う時の影　素肌で感じ取る　移ろんだまなざしも　
縁取る零れ灯が私をいざなって　しなやかな微睡みも闇の中へ溶けてゆくのか
　
埋もれた声を聴かせて　陰りゆく夜の宙に浮かぶ華　
溢れる想いを伝えて　大地へと横たわる記憶のように

茨姫コレクション

茨に包まれた少女　微笑み　夢の中　踊る
眠り眠る　飾られたまま　時を忘れ　愛し続ける
止まった時計の針　巡り巡る想いに囚われたのは誰？　貴方を救いたくて
夢に眠る少女　壊れゆく少年　からみつく茨の蔓はすべて閉ざした
瓦礫に囲まれた少年　悲しみ　夢の底　沈む

月光石

硝子に映る景色　まるで曇った夢　　
溢れる月明りを　そっと閉じ込めている

ウンデーネ

眩しい木漏れ日が　大地に降り注ぐ　木立の中　泳ぎ渡る　影に包まれて
揺れている水面は　時を映し出す　漣（さざ）めく霧の中で　戯れるように
開いた窓の外　眺める景色　彩る水の音　囁く木々の唄
心のその羽をはばたかせてゆく　見上げた空の色　亡くした後も　きっと
広がる波紋から　生まれる旋律は　緑の中　流れてゆく　雲に抱かれて

薔薇の下で

途切れた思い出　閉じ込めた庭園　　
舞い散る花弁（はなびら）　薔薇の褥（しとね）
消えない記憶と　埋めたの　鍵束