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のほほんと生きる物書きです。
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【キヨリリ】まちがいさがし【キヨテル誕】
「私たち、別れようか」 散歩にでも行こうと誘われて、夜の公園のベンチにたどり着いた時に彼女は唐突にそう告げた。 「何がいけなかったんですかね」 「んー、特別嫌なことがあったわけではないけど、そろそろ限界かなって思ったんだよね」 「これ以上はいられないと、そういうことですか」
閲覧数:109
2021/12/04 10:41
Memoria --『Symphony』--
その記憶に確証が持てますか? -------- 目覚めたのは彼の部屋だった。確か彼と話していたら首元に何かを当てられて……、それで? ——“こんなところまで来るなんて、本当に馬鹿だな”—— 最後に聞いた言葉を思い出す。そうだ、それで気を失ったんだ。
閲覧数:108
2021/11/29 00:25
【カイメイ】恋煩いの後味と【ハロウィン】
ねえ、もしも。あと一年で俺が大人になったら、あなたは振り向いてくれますか。 生徒のままでは、一人の男としてのスタートラインにすら立てないというんですか。 幼い子どもは、身近な年上の存在に恋をすることが多い。 そう言ってしまえば偏見かもしれないけれど、よくある話の一つではあると思う。俺もその多数の一人で、俺の場合は近所に住む少し年上のお姉さんがそうだった。 近くだから、俺が通りかかる度に挨拶をしてくれて、時々一緒に遊んでくれもした優しい人だった。俺が落ち込みながら歩いていると話を聞いてくれたし、ハロウィンの時期は「もらったお菓子のおすそ分け」と言いながら俺に菓子をくれた。都会の学校に行くから、と笑ってある日突然どこか遠くへ行ってしまったけど。
閲覧数:110
2021/10/31 23:55
【キヨリリ】影を踏むばかり【Lily誕】
それはただの思いつきだった。 保育園からの長い付き合いだけど、ずっと同じ関係性のままではつまらないから、何かの真似事をしようと言ったのは高校二年の夏だった。何かって何を、と彼が笑うので、私は真っ先に思いついたことをそのまま口にした。 「コイビトとか?」 「恋……いやいや、ちょっと待ってください」 「だって私も清輝も恋人いないじゃん。好きな人がいたらごめん、この話は聞かなかったことにしてね」
閲覧数:142
2021/08/25 02:33
【がくルカ】拍手と喝采【がく誕】
眠らない街、高みを目指して競い合うスタッフたちは、裏では仲がいいとは限らない。社会勉強とバイトを兼ねてやってみよう、と俺を誘った友人はもうすっかり鮮やかな照明と名声に彩られたこの世界に馴染んでいるようだ。 一方の俺は、次々に注がれる度数も値段も高いアルコールの量に慣れず、せっかくの休憩時間を手洗いの個室で潰す有様。 以前までは合コンに行くにも一人では心細いなんて言っていた友人は、フロアに出ればそんな面影なんてきれいさっぱり消し去って、夢の一夜を演出するキャストのひとりになる。俺は店ではまだ笑顔を取り繕えているつもりだが、友人ほど切り替えがうまくはない。 そもそも。一番の相手だからと交わされる言葉には嘘しか混じっていないし、その都度相手の変わるお姫様のエスコートが得意、と言えるほど話術に自信もない。 短期のバイトのつもりだったのだ、この一ヶ月で酒やらストレスやらで荒れた胃が回復する兆しがない。性格上合っていないどころか、このままではしばらく寝込む羽目になる。そろそろ、やめ時なのかもしれない。
閲覧数:229
2021/07/31 22:20
【がくルカ】拝啓、となりの君へ
恋をしている。こう言うとフィクションの物語に影響を受けすぎかと笑われそうだけど、ある日突然彼のことを異性として気にするようになってしまった。 昔から同じことをやっていたくせに、たまたま触れた彼の手のひらが記憶にあるものよりもずっと大きくて男らしいなと感じて、そうなると腕まくりをしたときにうっすらと浮かぶ血管も、軽く頭を振った時に揺れる紫の長髪も、見慣れているはずの全てに翻弄された心臓は早鐘を打つことをやめない。 ただの幼なじみで、友達より家族のような距離感がずっと続くと思っていたのに、まさか別の種類の『好き』を抱いてしまうなんて。俗に言う恋人のような関係になったとして、それに準ずる行動を取れるかは正直に言ってわからない。だけど例えば好きな本を読んでいて、隣で一緒に文字を追いかけたり、出かける時は手を繋いでみたり、なんて行為には憧れてしまう。その相手が彼だったら、と想像しては枕に顔を埋めて叫び出したい衝動に駆られるけど。 隣に座っていても突然距離を取ってしまったり、目が合っても気が気でなくて目を逸らしてしまったり、急に態度が変わったはずの私に彼は何も言わない。少しは変だなって気にしてもいいんじゃないか。かと言って面と向かって指摘されたら戸惑うだろうけど。 いつまでも私だけがドキドキするのは癪だ。私が今味わっている分の一割ほどでもいいから、逆にドキドキさせてやりたい。多少なりとも同じ感情を抱いてほしいと願うのは私のエゴだ。
閲覧数:575
2021/05/23 23:09
【がくルカ】Future【1】
君はもういない。 君はもう、私の前から姿を消してしまった。 君が何処へ行ってしまったのか。 君がどうして消えてしまったのか。 その理由を、私は一生知ることができないのだろう。
閲覧数:351
2021/04/10 23:58
【カイメイ】Plus memory【7】
友人につられてその空き教室に足を踏み入れたとき、浮かび上がった光景があった。 出席番号が一つ違う彼女は、いつも前の席で笑顔で話しかけてきたんだ。 ……その空き教室に入ったのは初めてなのに、なぜか茶髪の女の子の笑う姿が頭から離れない。 立ち止まるオレの意思なんてお構いなしに、フラッシュバックは続いてゆく。 手紙のやりとりをした。
閲覧数:622
2021/03/27 02:20
【がくルカ】memory【31・終】
記憶の中の彼へ ---------- 『空き教室で待ってる』 それだけ書かれたメモを握りしめて、私は教室の扉を開いた。カーテンの引かれた教室で、彼が背を向けて立っていた。 「来たね」
閲覧数:784
2022/01/10 03:06
【がくルカ】ゆく年を思う
玄関のドアが閉じた音を聞いて、眠気に閉じかけていた目を開く。ごろんと転がっていた体勢をそのままお見せするわけにはいかないので、さっと上半身を起こすと、丁度彼がリビングにやってくる。 「ただいま。寒かっただろう、体調は崩していないか?」 「おかえりなさい。大丈夫でしたよ。私は部屋で温まっていましたから」 「それはよかった。そうだよなあ、こんな日はずっと部屋に篭っていられたら最高だよなあ」 「買い出し、任せてしまってごめんなさい」
閲覧数:129
2020/12/31 22:52
【がくルカ】夕映えの君
平凡な人生を生きてきた。 映画なら、スタッフロールが流れ始めた瞬間に席を立つような。ミステリー小説なら、中盤で犯人が分かってしまうような。プラスチックのカップ一杯のコーヒーなら、飲み終わった後のカップに氷が半分以上残されているような。 他人にわざわざ語ることもないほど、特別な出来事を人生に刻んできたわけではない。万人に共感されるような前向きな日々を過ごしてきたわけではない。 毎日同じことの繰り返しで、何にも染まらない無色透明な日常。 そんな俺の日常は、ある日突然色付いた。
2020/12/19 10:25
Memoria --『Serenade』--
もう自らの存在を証明する手立ては失った。 あとは生きるか死ぬかを選ぶだけだ。 そうすれば、余計なことは考えなくてもいい。 --------
閲覧数:1088
2020/12/14 01:23
【がくルカ】Plus memory【6】
「やあ、久しぶりだね」 私は目の前の光景に目を疑った。 最後の授業を終えたその日、卒業前に一度景色を見ておきたいと屋上に行ったら、神威先生が柵にもたれかかっていたのだ。しかも白衣も着ていなければ眼鏡もしていない。それに、「久しぶり」なんて言葉はおかしい。 「……毎日授業では顔を合わせているはずなんですが?」 「あっ、そうか。んー、この格好だとわかりやすいと思うんだけどなー」
閲覧数:1489
2022/01/10 03:00
【カイメイ】背中合わせの温度【ハロウィン】
その夜、きっと僕は疲れていたんだろう。 まともな教育も受けていない僕は定職には就けず、日雇いの仕事で得たほんの僅かなお金と疲れ切った体だけを抱えて、その日寝るための地面を探して路地裏をさまよう毎日。 その日だって、廃棄されたパンでもないかとパン屋がある通りに向かっていただけだった。 「もう、なんでそんなにしつこく追ってくるのかなあ!」 店の前で複数の人間に追われている黒ローブのひとが僕に勢いよくぶつかって、貧弱な僕はそのまま地面に倒れ込んでしまう。
閲覧数:1981
2020/10/31 21:28
【キヨリリ】わたしの居場所【Lily誕】
その日、私は初めて一人になった。 きっかけは些細なことだった。唯一の家族である兄と口喧嘩になり、頭にきた私は部屋に戻り、リュックに荷物を詰め込んで家を飛び出した。 リュックの中身は一日分の着替えと財布くらいのもの。せめて今日一日くらいは、兄の顔を見たくないと思った。 勢いで飛び出してきたものの、一日泊めてほしいと頼めるような友達はいないことに気がついた。 昔から仲のいい友達はいる。今の友達は社会人か大学生、だけど今まで一度もお泊まり会などしたことがなかった。突然押しかけて一晩お世話になる、そんなことはとてもできそうにない。
閲覧数:293
2020/08/25 23:43
約束の日まで【がく誕】
「流れ星が流れている間にお願い事をすると、それは叶うんだって」 かつて彼女から聞いたその話を、今更思い出したのはどうしてだろう。 流れ星を確実に見る方法は流星群の情報を調べることで、次に大きな流星群が見られるのは、八月十二日のペルセウス座流星群。だけど、大量に夜空を流れ落ちる星屑にかける願いは、本当に叶うのかどうか疑問になる。数少ない一つの希望に祈る方が、本当に大切な願いを選べるんじゃないだろうか。 『……明日の天気は、晴れのち曇りでしょう』 車内のラジオは、お気に入りの番組が放送終了し、次の番組に移るまで天気予報を告げている。明日が晴れようが雨が降ろうが、今の俺には何の関係もないのに。
閲覧数:107
2020/07/31 23:21
【カイメイ】お願いを、きみに
「ねえ、こんなトキメキは別に求めていないんだよ」 だから話し合おう、ね? 人間は何のために言葉を持っているの、そう、話し合うため。唯一ヒトだけが取ることができるコミュニケーションだもの、活用しないともったいないでしょう? 「君は私と一緒にいるのが嫌なの?」 「そうは言ってないよ、だけどかわいいきみの頼みだもの、なんでも聞いてあげたいとは言ったけどさ」 「じゃあ、どこがいけなかったの?」
閲覧数:1085
2020/06/06 20:48
【がくルカ】グラスを満たす感情は
毎週土曜日、午後七時半。それは紫の彼と一緒にいられる唯一の時間。 いつものように各自で食材を持ち寄って、徒歩五分の距離にある彼の家に集まる。お酒が入ることもあるけど、それはどちらかの気が向いた時に限り、大抵はウーロン茶を飲んでこのひとときを過ごしている。 今日もまた、私は彼の向かいの席で、彼の話を聞いている。 「へえ、本当に今の仕事が大変なのね」 「まあ仕事が大変だっていうのは大抵の人が感じていることだと思うから、俺だけがどうこういうつもりは特にないんだけどな」
閲覧数:1332
2020/05/31 22:08
【がくルカ】鏡合わせの心
光とは、決して掴み取れないもののひとつだ。物理的な話だけではなく、例えば輝かしい未来や思い描いた希望、人生の道標なども光と言っていいと思う。 僕にとっての光とは、突然僕の人生に現れた君だった。最後列の窓際の席は、片隅でひっそりと生きてきた僕の指定席だった。誰ともうまく接することができない僕には、親しくしてくれるひとなんていなかった。 席替えをしても、「この席がいい!」と我先にクジを引きにいくクラスメイトたちを眺めていたら、いつのまにか最後のクジとして残った片隅の指定券を持っているのだ。 普段友達と毎日楽しくお喋りをしているクラスメイトたちにとって、僕はただの空気だった。いてもいなくても同じ存在。もし視界に入っても気に留めることはない、街中ですれ違う通行人以下の認識しか持たれることはない。 「ねえ、何の本を読んでいるの?」
閲覧数:854
2020/05/31 22:02
【キヨリリ 】歪む光の射す先に【キヨテル誕】
俺と彼女は付き合っていない。 成人式後、高校時代のクラスメイトとの同窓会で再会した彼女は、偶々目が合った俺に話しかけた。 彼女は俺に問うた。恋人はいるのか、仕事は楽しいのか。よくあるやり取りだ。 別に隠すこともないから、「一人で繰り返す無色の日常は退屈だ」と返した。 特に親しい仲でもなかったからか、彼女も深くは聞かなかった。
閲覧数:610
2019/12/04 03:27
【キヨリリ】夕暮れに染まる恋歌
高校で出会ったその人は、不思議な女性だった。 息の詰まる授業を終えて、賑やかなクラスメイトに混じらずに、ひとりで本を読む僕は、クラスでも一際地味だったと思う。 だけど本を読みだすと、必ず声をかけてくる女性がいた。 「ねえ、さっきの授業、難しくなかった?」 最初は自分に話しかけられているとは思わず読書を続行していた僕だったが、「おーい、氷山くーん?」の声で初めて彼女が僕に話しかけていると気がついた。それ以降、彼女は僕に話しかけることが多くなった。
閲覧数:122
2019/11/17 01:31
【カイメイ】恋とはどんな味でしょう【ハロウィン】
私には、幼なじみがいる。 控えめに笑う彼は一つ年下で、よく互いの家に遊びに行っていた。 彼は優しく、おとなしく、私がよくからかっていた。 彼の性格故にその本心を知ることもなく、私が社会人となっても、近すぎる関係は続いていた。 「やあ少年、今年もお困りの季節がやってきたようね」
閲覧数:200
2019/10/31 23:49
【がくルカ】ハニー・ミードは未だ苦く【ハロウィン】
私には、幼なじみがいる。 一つ年上の彼とは家が隣で、休日もよく一緒に過ごしていた。 「勉強を教えてもらう」という年下の特権を使って、彼の隣に居続けた。 彼が私のことをどう思っているのか、そんな大事なことだけはいつも聞けないままなのに。 「お願いします、勉強教えてください」
閲覧数:206
2019/10/28 23:59
【キヨリリ】甘い誘惑は君だけに【ハロウィン】
私には、幼なじみがいる。 教師を目指している彼とは長い付き合いになるが、お互いに浮いた話もなく今まで過ごしてきた。 その原因が、異性の幼なじみとずっと一緒に遊んでるから、という自分なりの分析はできているのだけど。 恋人とか、深いカンケイというものがよく理解できないまま、結局彼の隣に居続けている。 「ねーえキヨテルー、有給ってどのタイミングで取ればいいと思うー?」
閲覧数:246
2019/10/27 23:48
【がくルカ】黄昏のジャメヴ【ルカ誕】
例えば、昨日まで隣を歩いていた君が、遠くに感じるようになった時。 例えば、久しぶりに会った君の背が、私を見下ろすくらいに変わっていた時。 どれだけ親しくても、長い年月がその関係を変えてしまうことは人生においてよくあることだ。 勿論それが悪いこととは限らない。より距離が縮まることだってあるし、会わなかった時間がそうさせたように、今後疎遠になっていくことだってある。 私の場合は……少なくとも、私にとっては良くないことだった。
閲覧数:170
2019/01/30 23:56
【キヨリリ】瑠璃色の氷上【キヨテル誕】
偶然すれ違ったその人に、懐かしい面影を感じて振り返る。 腰まで伸びた輝く金髪、鮮やかな青色の瞳が、ゆっくりとした動きで僕を捉える。 一介の通行人に過ぎない彼女が、同じくただの通行人である僕を見つめたまま動かない。 午前十時、駅前の大きな交差点の信号待ちで、キャリーバッグを引いたその人は声を発した。 「もしかして、氷山くん?」
閲覧数:461
2018/12/04 23:58
【キヨリリ】Lost days --下--
まとまらない思考で階段を降りきって、彼女の元へと辿り着いた。 予想していた光景と違うものが視界に飛び込んできて、俺は言葉を失った。 彼女の体は、まるでその場に眠っていると錯覚するほど、状態が綺麗だった。 その場に広がっているはずの、赤色が全くなかった。 血液が流れていない人間などいるはずがない。
閲覧数:117
2018/11/21 23:59
【キヨリリ】迷い子の祈り【ハロウィン】
十月三十一日、ハロウィン。 それはかつて古代ケルト人による秋の収穫祭として考えられたお祭りの日。 秋の終わりと冬の始まりを告げるこの夜は、死者が家を訪ねてくるらしい。 魔除けの火を焚いたり宗教的な意味合いが強かったこの海外の祭も、現代のこの国ではお祭り騒ぎの口実として使用されている。 十月に入ればハロウィンをモチーフにしたパッケージの商品が溢れかえり、魔女やお化けなどの仮装グッズもよく店頭で見かける。
閲覧数:98
2018/10/31 23:58
もうひとりの
教会の鐘がその大きな音を二回響かせた時、私はルシフェニア王宮の厨房にいた。 レヴィン大教会の鐘は、王都ルシフェニアンのどこにいても判別できる。この王宮にもすぐ何時かわかってしまうほど大きな音が届くので、教会の周辺で鐘の音を聞けば耳が壊れるのではないかと、この国にきた幼い頃の私は感じたほどだ。不思議なことに、教会の周辺で鐘の音を耳にしても、「もうこんな時間なのか」と思うだけでそれほど大きな音には感じない。世の中には不思議なことがあるものだ。 献立を考えるのは時間がかかるのに、いざ調理を始めると次の行動が何か考えずともこの体はスムーズに動く。使用人の仕事は天職なのではないかと感じるほど、私は自分の仕事に自信を持っている。 それは養母であり侍従長マリアムの教育のおかげでも、数年間侍従をやっていた慣れからくるものでもない。なんだか遠い昔、誰かのためにひたすら料理を作ったり、家畜の世話をしたり、主に仇をなす邪魔な人間を排除したり……そんなことをやっていた気がするのだ。私にそんな記憶はないのに。 「あ、ネイ。お疲れ様ッス。リリアンヌ様のおやつッスか?」
閲覧数:190
2018/09/28 02:10
【キヨリリ】モノクローム【Lily誕】
「それで、課題は進んでるんですか?」 その声は、私一人に向けられた先生としての言葉。 心の内では何を思っているのか。彼がそれを口に出すことはない。 「手厳しい誰かさんがしっかり勉強教えてくれたおかげで、大体は終わってまーす」 「それは良かった。去年聞いた話では、最後の週にまとめて終わらせたということだったので、ちょっと心配だったんですよ」
閲覧数:147
2018/08/25 23:52
【がくルカ】宵を待つ間、【がく誕】
振り返れば、隣にはいつも君がいた。 楽しそうに笑う君が、僕のことをどう思っていたのか、それは本人にしかわからないけれど。 その距離感だけは、十年間ずっと変わらないものだった。 家が近所だったわけではない。 物心つく頃からの付き合いでもない。
閲覧数:192
2018/07/31 23:59
【かなりあ荘】おかしな騒動
平成最後の夏は茹だるような暑さだった。 すっかり人の出入りが少なくなったかなりあ荘の共有リビングで、扇風機がひたすら首を振る音だけが響く。 ぶーん、ぶーん、ぶーん……。 一般的に扇風機からエアコンへ冷房を切り替える温度の目安は三十度らしい。 かなりいい感じになったかなりあ荘でも、さすがに扇風機だけでは今年の夏は越せないのではないだろうか。
閲覧数:199
2018/07/29 11:36
【キヨリリ】砂上のネリネ
彼女の瞼が二、三度瞬いた。 数秒遅れて傾げられた首と、いっぱいにクエスチョンマークを浮かべたようなその表情さえ愛おしい。 「いやいや、人にものを教える仕事をしているキヨテルさん?今が何月か言ってみようか?」 「ええと、六月も終盤に差し掛かる頃ですね」 「良かった。時間の感覚が急激にズレたのかと思った」
閲覧数:134
2018/06/30 23:25
【キヨリリ】夜空を紐解く
いつまでもずっと、昔からの関係が続くと思っていた。 ただの幼なじみとして過ごした期間が、彼が大人になり始めていることを認めたくなかったのだ。 高校最後の年を迎えた私と、教育実習を明日に控えた彼。 四つも年が離れた私たちがどうして仲良くなったのか。 親同士の仲が良いのは間違いないだろうけど、肝心の本人たちがそもそものきっかけを覚えていない。
閲覧数:139
2018/05/23 23:59
【キヨリリ】ジェニュイン
「ねえ、明日は出張なんでしょ。準備しなくていいの?」 呼び出された数学科準備室で、未だデスクの書類から目を離さない彼に問いかける。 私が入室して十分程経つが、彼は入室の許可以外に全く言葉を発していない。 人を呼び出しておいて待たせるなんて、という在り来たりな不満はとっくの前に投げ捨てている。 「春休みにわざわざ来ていただいているのにこう言うのもなんですが、誰から聞いたんですか」
閲覧数:279
2018/04/02 01:28