サンダルに傷

はだいろの日差しが
とどまる ２Ｆの喫茶店
おしゃべりの代わりに
氷の残りをまぜる音
手をまねかなくても

よなぎ

季節のまじわる音に
まいごの指をたわめて
夜な夜な もぐり込む影
誰しもなまえをためらう
磨り硝子のむこうで

タイトル未定

燃えるような指が
いき肌の その枠に触れて
たちどまっていた
ふたり 場違いに出逢う
あやうい嘘の内部で

団地

西日 容赦なく
団地ゆきのバスは
冷房もきかない
きみの日傘の
手摺に揺れるのを

夏風邪とモノローグ

［イントロ］
［Ａ］
薄目を瞑(つむ)って 微睡み(まどろみ)にまかせて
おもかげ誘った 夏風邪とモノローグ
［Ｂ］

海ばら

はためく帆の色さえ
気にも留めないのです
沖ではなにもかも見える
あなたの卑しさまで
波にさからえず

うつくしいひと

つめたく甘いフォルム
芙蓉のつゆ ふくまず
いられないわたしは
手の内も知らず知らず
虹彩の綺麗なそれ

ロマンス・スポット

つめたい洗濯物には
晩の寂しさが忍んでいる
さすった肌の折り目では
砂糖の溶けきった香りがする
冬の朝 曇り窓

5月のブルー

青く香る ひとひらの色
騒ぐ街の 風 翻(ひるがえ)り
回る回る 明々(あかあか)と夢
肩に揺れた 憧れは覚めて
5月の君は鮮やかな

赤い風船

国道ぬけ出して走る
電灯がちらちら
秘密基地みたいねって
目配せして笑った
ブラウスの匂い

ゆめをみせるよ

ポストのなか増えた手紙に
ひとつ ひとつ マルして
口移しぬるさみたいね
こんなの 好き 嫌い
夢のなか みたいな 閃光

さよなら、三月

1a
君のうす暗い部屋の
夜はずっとそのまま
褪せた仄白いブルー
遠いエンジンの音

淡いうねり

1a
暗いピンクの盲点
パラソルを突き立てた
やわらかな大地の穴
汗のかわいたブラウス

リリー

1a
さあ夜が壊れたら
一緒に隠れよう
あの子はこっそり
泪のつぶに潜る

冬

a
いつか愛したあの子と
よく似た顔でわらった
きみのナイフ数寸に
きっとたくさんの祈りが

ラビッシュ

1a
ローテーブルに散らばる
食べ物とその他のレシート
ヘッドボードに並んだ
紙屑は昨夜の亡骸

リバーサイド

1a
刺さらない左手の甘さ
いっそう危険なサイレン
くだらない話の後でも
泣くことは退屈だった

モルモット

1a
フェーダーの街へんなの
手懐けた賢い生きもの
パチンコの玉あつめて
手作りの賢い生きもの

オーバードーズに沈む夜

1A
騒がしい街がうそぶく灯(あか)りは
私を明日(あす)へと誘(さそ)う
虚(うつ)ろな視線と閉じ行く瞼の
その隙間で手を伸ばす

フルーツ

画面で潰れてる虫の死骸が
彼の名前と重なっている
惰性でつづけてる約束に
真実が覗いてても
I see 賢い彼女は

ポップ

a
あの子の秘密に近づけない
土曜日は新宿で忙しい
何をしているのかしら
何をしているのかしらね

ラブミーテンダー

1a
えっと、二年前にもらった
ピアスがちょっとだけ可愛い
きっとわかり易い阿呆で
フェミニストの方が愛しい

エンジェルブルー

1a
べっ甲のピアスの反照
邪魔そうに揺らしてる
彼女は 栗色の髪で
白い羽を隠してた

Bella

1a
絶対のルーラー
きっと優しく笑ってて
柔らかく髪をなでる
嬉しそうでなにより

浴情

1a
No.402へお出かけ
聞きたいことは
シャワーの音に紛れて
誤魔化してしまった

Sat

1a
夜の匂いに焚きつけた
やさしいプレイリスト
終わらない照明灯
まつげの翳り

實體

1a
灰皿が綺麗な侭だと
本當の事を思ひ出すわ
強かだと測られたら終い
そう思って愛してるの

チュール

1a
熱っぽい最初の合図
半透明な夜のうちは
指切りをしてベットに
ふたり潜って心中した

獰猛なやさしさ

1A
いま寝たら変な夢見そう
微量な手酌で顔にかけて
比べたら柔な恋な方
不快を凌いで認めさせて

No title

1a
1b
かち合ってにげた蜥蜴と
舐めあって埋めた夜の傷
血を吐いてしんだクラゲと

ストリップな激情

1a
夢みたいに綺麗ね
帳(とばり)は上がっていく
翳りに染まっていく
ひらひら笑うわたしの

Breezy afternoon

1a
囁いて頬を揺らす風の
午後を告げる知らせ
ゆらゆら光る昼中の星
今だけは忘れて

ゆめであったら

1a
翻るスカートの昼下り
繰り返すエチュードにぶらさがり
遠くなる幻想に突き刺すよ
笑わなくなった猫の欠伸

mimi

1a
午前0時 記憶とんじゃう
お酒 まわる 胸やけもする
午前1時 愛されている
すごく 綺麗 汚いところ

痛くしないで

1a
飾らなすぎる部屋では
いつだって今が綺麗
傷むことないわたしは
ゆるされている 幸せ