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【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん! THE PHANSY #6【二次小説】

葛流市立博物館。地元の人間からは葛流の森と呼ばれており、東京ドーム十一個が収まる程の大きさだけあって森の名も伊達ではない。中には四季の木々花々を見て回れる公園や遊歩道。森の一割に相当する大きな池がある。また文化面での施設も充実しており、博物館、コンサートホール、古代家屋を復元した広場、工芸作製の窯場、バーベキュー広場にキャンプ場。ベッドタウンで家々が密集している葛流市民にとっての憩いの場となっている。
約束の日は、生憎心咲の家の都合で延期となる。その日は高校が入学式の為一般生徒は休みとなる日だった。部活動は全面的に休みとなるので、それを見越したフット同好会長の新垣の提案だったが、家の事情では仕方が無いと、次の日曜日の日となった。
召集当日。今日は風が穏やかだが日差しが強く、夏と思えるほど暑い。博物館の坂下にある石畳の広場は休日と言うこともありカップルや家族連れなど往来が多い。そんな中、一台のバスが停留所に止まるとゆかりが降り立った。今回の事件を焚きつけてしまった為に、仲介役として約束の時間よりも三十分早い時間に到着した。彼女はパープルのチュニックに黒のレギンスと、今日の気温に合わせて軽めの服装でやってきた。曲線の綺麗な足にブラウンのショートブーツが大きく見え、アンバランスでありながらもフェミニンさが強調され可愛らしさが溢れてくる。ブーツを鳴らしながら広場の案内掲示板にやってくると、一人ただずんで約束している二人を待った。
十数分後に来たのは心咲だった。白いカットソーにスカイブルーのブラウス。ボトムスにはタイトなスキニージーンズだ。長身で顔つきも大人びている事から、学校で見る彼女とは垢抜けた印象を受けた。
「心咲ちゃん!お疲れさまー」

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2014/05/02 22:54

【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん! THE PHANSY #4【二次小説】

ランニングから戻ってくると、先日監督業が遂行できなかった大智がうっぷんを晴らすかのように今日の紅白戦の重要性を説いていた。だがいつにもまして浮ついている雰囲気に我慢ならん様子ではあったが、この一件に自身も携わっている事を考えると注意の仕方はいつもより大人しかった。チーム分けの後、いつものようにバスケ部から借りてきた赤と黄色のゼッケンを配布し、ボールを手に試合前の準備に入った。
今日の紅白戦は先日の白木高校との試合に出たメンバーとそうでないメンバーで行われた。先日の試合運びはゆかりにパスが回った時点でほとんど得点していた事に目を付け、非出場のメンバーには彼女にパスを回さないよう予めアドバイスしていたのだった。二十分だけ行われた試合の結果は七対二。ゆかりが三得点と、ボールを持った時点で決めた得点だった。残りの四点はつばさと他一名で会内でも実力のある選手だが、それにも大体ゆかりのアシストが絡んでいる。後半二十分は大智と新垣会長で考えた新しいチーム分けでの試合だった。ゆかり一人が抜きんで過ぎていて、他のメンバーがゆかりを頼り出したらチームの益にならないと考えていたからだった。自分が干されたのを察しつつも仮部員だからと割り切りって試合を眺めていた。
お腹が空き始めてきた頃には、今日で最後になる女子フットの仮部室三年二組の教室でのミーティングが終わり、そのまま解散となった。大智が教室を出ると女子たちは各々着替え始めた。ゆかりは大して汚れておらず、またお腹が空いたので早く帰りたかったが、二年の先輩たち数人に囲まれてしまった。
「ゆかりさん・・・」
彼女を心配する心咲だったが、先輩たちから席を外すよう言われるとしぶしぶ教室の外へ出るのだった。

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2014/04/16 21:11

【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん! THE PHANSY #2【二次小説】

フットのメンバーたちがマネ監主催の反省会をすっ飛ばしてでも早く帰りたかったのにも理由があった。この辺りは七年前に開通した首都圏新都市鉄道の常総新線の白木キャンパスステーション開業に伴い出来た新興の学生街で、その駅ビルにはショッピングセンターラ・ラパークが入っており、若者向けの店が多数出店していることから、放課となった彼女たちは誰に言われる訳でもなくそちらに向かう。ゆかり自身は特別に行きたい気分ではなかったが、心咲の付き合いで同行した。
キャンパス群を通り越し、ショッピングセンターの大型立体駐車場が見えてくると、それに沿って店舗入り口を目指す。角を曲がって数百メートル先には高架橋を走る常総新線のキャンパス駅が顔をのぞかせた。その通りに彼女たちの目指す店舗入り口があった。
彼女たちのお目当ては既に決めていた。衣料品、雑貨小物の店など、時間があればゆっくりと回ってみたい店ばかりだが、黒いジャージ姿の二人は店舗内を突き進む。すると魚の生臭さやら総菜の芳ばしい臭いやらが入り混じった空気に変わる。そこは生鮮食品売り場だ。その一画にあるアイスクリームショップのショーケースの前に彼女たちは立ちはだかった。
「やっぱアイスだよねー」
ケース内の色とりどりのアイスを、腰を折り食い入るように見つめる心咲は心底楽しそうだった。ゆかりは隣で見ていてなんだか微笑ましくなる。

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2014/04/16 21:09

【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん!#7【二次小説】

7.怪盗少女は夜空を舞う
「ファンシー・ザ・ゆかりん、メーイクアーップ!」
ゆかりは喋る人形、うさりんを空高く放り投げた。空中で一回転するとともにその目が激しく光りはじめ、やがてそれに飲み込まれていった。光の中では彼女が着ていた服が怪盗ゆかりんのコスチュームに置き換わる。二の腕まで袖のある紺のロンググローブ。赤みがかった桃色の二―ソックスに紺のロングブーツ。だが結わく紐はソックスと同じディープピンクで小粋だ。身体に纏う紺のワンピースは双肩を大胆に露出した大人っぽさがある。だが腰に巻かれた特大リボンで可愛さも忘れずアピール。首には蝶結びのリボンが飾り付けられた、喉元を大きく隠す黒い付け襟。最後は怪盗ゆかりんのトレードマークと言っても良い長耳付きのベレー帽。うさぎを模したかのような外観のインパクトと、跳躍時に後ろへ流れる美しさに目を惹かれる者は多い。右手に持ったウサギ顔シルエットの眼帯を右目に当てて装用すると、光の中からゆかりんが飛び出してきた。
「月の縁に導かれ、華麗に参上っ」
夜空の三日月に右手を差し伸べ、徐々に手を降ろし、両腕交差させた。

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2013/09/02 23:08

【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん!#5【二次小説】

5.音楽少女の奉仕な週末
常総新線に怪盗ゆかりんが現れたという情報はインターネットを通じて瞬く間に広がった。人物特定出来るスチルは撮られていなかったが、数多くの目撃者が騒いだ結果だった。一方で、ゆかりとその友人ずん子に強制わいせつを働いた男は鉄道警察に確保された後、葛流警察署へ連行された。大手建設会社の社員で、葛流市の再開発計画の為単身赴任でやってきたのだが、激務によるストレス発散の一環として気の弱そうで母性溢れる女子高生をターゲットにしたと供述していた。だが今回逮捕の決め手となった被害者の女性に関しては、付け狙っていた女性と勘違いしてやってしまったとの事。だが新聞には怪盗ゆかりんの記述は、あまりに荒唐無稽だったためか書かれなかった。
朝食後、普段新聞を読まないゆかりが食い入るように痴漢騒動の記事を見ていたため、出社前の父親にからかわれた。本当の事など言るはずもないので、強がって大人ぶってみたが、いつまでも子供のままでいいんだぞ、と頭をポンと優しく撫でられた。ゆかりはむくれながらも出社する父親を玄関まで見送ると、気を付けてね、と見送った。
今日は土曜日。学校は休みであるが出掛ける用事があった。友人のマキからイベント準備の手伝いを頼まれていたのだ。集合はゆかりが登校時に下車する粕平駅に午前十時。父親は既に出勤してしまったので、今日は最寄り駅まで歩きとなった。
ゆかりが手伝うのは、マキが毎週日曜の朝に欠かさず顔を出している教会のミサの後に行われるバーベキューの準備だ。先月末、桜が満開を迎えた頃、寒い中無理をして花見を敢行したものの寒過ぎて盛り上がりに欠け、もっと暖かくなったところで改めて食事会をする事になっていた。ゆかりは電車に揺られながら目的地である粕平に到着。時間は約束の十時にはなっていなかったが、マキがいつもの赤い自転車に乗って既に待っていてくれていた。

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2013/08/23 00:24

【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん!#4【二次小説】

4.女子高生、怒りの鉄槌
世間の話題になりつつある怪盗ゆかりんではあったが、今は損壊犯として警察に追いかけられ、怪盗と名乗ったばっかりに盗みを働いているのが世間のイメージだった。厄介事が増えそうなので止めてしまっても良かったが、自分のせいで警察の人材が割かれ、友人のずん子が痴漢被害に苦しむのを間接的であれ目の当たりにしてしまった。このような事案ならもちろん女子学生が単独でどうこうできる問題ではないが、指名手配犯であれ、怪盗ゆかりんになら今すぐにずん子を救える。現実的に考えて警察が動くには時間が掛かっる。犯人逮捕までの間、ずん子の登校が遅れるようなら、彼女の未来への扉が少しずつ閉ざされていく。黙って見過ごしたくは無かった。
そんなゆかりが目指したい怪盗ゆかりんの今後の方向性は、弱い者の味方、だ。出来れば義賊として活躍し、世間のイメージを少しでも良い方向に持っていけば博物館の壁の一件もお咎めが軽くなり、ダイヤを守った件をきちんと評価してくれると考えた。
とはいっても、都合良く怪盗が活躍できる舞台などそうそう整うはずもない。名声を得るにはまだ早いが、未使用のうさりん怪盗スキルの試験運用も兼ね、痴漢騒動を鎮圧し、手の届く範囲で活動すると決意を新たにするのだった。

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2013/08/17 04:56

【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん!#3【二次小説】

3.肉体派女子の苦悩な日々
桐生まな美。葛流博物館の事件以前は刑事生活安全課強行盗犯係巡査長という肩書きだった。普段から事件解決の為に心血を注ぐうら若き二十七歳。検挙率も高く希代のエースと影でささやかれながらも、頭のつかえている縦社会では爽やかな上目立つ存在は言うまでも無く疎まれもしていた。
「はぁ・・・」
会社の帰り道。桐生は二十代にもかかわらず、既に四十代のサラリーマンのような深い溜息を漏らしていた。ICPOに研修生の名目で籍を置く、怪盗ゆかりん専属捜査官となり早三日。現場検証や目撃証言の収集をしていたが、現場では物証が上がらず、証言においては博物館が森林公園内にあったことにより、近隣住民どころか、深夜だったので施設関係者などの証言もほとんど得られずにいた。いっその事新しい事件が起きてくれたらとも願う自分がいたが、それは警察官としてあるまじきことであると、自分を戒めた。
今日は紺色の安スーツ。駅前のおしゃれカフェにふと眼をやると、カジュアルなベージュのスーツを着こなした、栗色カールヘアーの女性が、恋人と思われる年の近い男性と楽しそうにラテをすすっている。肌寒い春の夜の暖かいお茶はさぞ暖まる事だろう。

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2013/08/10 07:09

【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん!#1【二次小説】

1. 怪盗少女と春陽の日々
朝刊の一面を騒がせていたのは、葛流【かづる】市立博物館の展示物、「月の雫」と呼ばれるダイヤモンドの窃盗未遂と同博物館の建造物損壊事件だ。窃盗犯と損壊犯らの関係性は皆無で、月の雫が盗まれるのを阻止したのが損壊犯とされる女だが、その際壁の一部にレーザー光線のような光で直径一メートル程の大きな穴を開けており、これが今回の主容疑となっている。月の雫は葛流市と姉妹都市であるオーストラリア、エンブリッジ市の宝で、今回は都市親交深化の一環で貸与され、記念展示されていたものだった。世界に名だたるサンドロップに対を為す真円の美しいイエローダイヤモンドで、その輝きは妖艶な月の様だと称賛されている。これを狙った国際的な窃盗団の可能性も視野に入れ、ICPOの協力の下、県警が調査に乗り出している。また女には目撃証言があり、黒いパーカーのフードを目深にかぶり、眼帯と杖のような物を所持していた模様。そして自ら「怪盗☆ゆかりん!」と名乗りを上げたという。光学兵器の所持、使用の観点から武器等製造法などの余罪も視野に入れ、窃盗犯同様、損壊犯の逃げた足取りを目下捜索中である。
うららかな朝の電車はゆっくりとした時間が流れていた。昔ながらの単線鉄道私鉄葛流線。葛流市中心部と主要路線を結び、四十年ほど前は地場産業を支えてきたが、宅地化が進み現在では通勤を始め住民の足となっている。ゆかりはこのゆったりとした時間が好きだった。耳を澄ますと、自分が通う葛流中央高校の学ランを着た男子生徒二人の話し声が聞こえた。いや、彼ら以外にも女子学生やサラリーマンたちも専ら昨日の窃盗未遂事件の話でもちきりである。
「ゆかりんって何者だよ?可愛いのかなぁ」
「ダイヤモンド守るのは良いんだけど、名乗っちゃったんでしょ?」

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2013/07/25 00:22

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