ロミオとシンデレラ 外伝その四十八【嫉妬は愛の子供】その三
私が自分の感情の折り合いをつけようと必死になっている間に、実家はまた妙な局面を迎えていた。父が突然、隠居すると言い出したのだ。私が母の厄介になっている間に、父が失明したことは聞いていたけれど、そこまで日常に支障を来たすようになっているとは思っていなかった。
ガクトさんと一緒に父に会って、名義の書き換えといったあれこれを行う。父とは、あまり話さなかった。何を話していいのかわからなかったから。ガクトさんと父が話しているのを黙って聞いて、必要なところにサインをしたり印鑑を押したりする。
私が育った家が、私のものになる。もともとその予定だったはずだが、何だか奇妙な気がする。
定期的にリフォームしているから古びては見えないが、実際のところ、かなり古い家だ。父もここで育ったのだから。更にその前のことは、よくわからない。物心ついた時には祖父母はいなかったから、この家の歴史を聞いたことはなかった。
あの家でガクトさんやミカや母と一緒に暮らすのか。あまり、いい思い出はない。思い出すのは淋しかったことばかり。