キャットフード ① ミクオside.
ザー… ザー…
「ミク… 雨だぞ。早く帰って来い―――…。」
*
1人の猫のような彼女の話をしよう。
僕の"猫"であり、僕の"彼女"だった女の子の話を……。
*
彼女と出会ったのは、今日みたいな雨の日だった。
僕 -初音ミクオ- は仕事を終え、家に帰ろうとしていたら急に雨が降り出した。
「おいおい、マジかよ…。」
今日の朝の天気予報では、雨が降るなんて一言も言ってなかったのに…。
心の中で文句を言いながら、僕は走った。
(もちろん、傘なんて持っていないからだ。)
僕の家の前にある公園を通り過ぎようとした時。
彼女を見つけたのはその時だった。
彼女は雨で濡れ、体は冷え切っていた。
「ちょ、大丈夫!?」
僕は必死に声をかけたけど、全く反応しない。
…このままにしてちゃ駄目だよな。
そう思った僕は彼女を家に連れて帰ることにした。
この公園と僕の家は、目と鼻の先。
身元が分かれば家に帰してあげればいい。
そんな気持ちで彼女を抱きかかえ、家に連れて帰った。
*
「ただいま。」
僕は一人暮らし。返事がないと分かっていても言ってしまう。
多分、癖のようなものだ。
「んっ……?」
彼女をソファの上に横にならせた途端、彼女が声を出した。
「目が覚めた?」
僕は優しく声をかけたつもり。
でも彼女は目を見開き、周りをキョロキョロしていた。
「えっと…。誰…、ですか?あたし、公園で飼い主探してて…。」
………は?
僕の頭の中は、はてなでいっぱいだった。
だって、飼い主って…。
君は人間だろう?
そう、ききたくなった。
「えっ…と、飼い主って、どういうこと?」
「んー、説明はあなたがあたしをこの家で飼ってくれたらしてあげる。」
僕はもうこのときから、彼女に惹かれていたんだと思う。
だって、
「わかった。飼うよ、君のこと。」
こんな返事をしてしまったんだから。
これが僕らの物語の始まりだった。
でも今、僕の家に彼女はいない。
ミク…お前は今どこにいるんだよ―――…