最近の投稿作品 (20)
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リンが猫になっちゃった 【後編】
夕方になってもミクとルカは相変わらずリンをおもちゃにして遊んでいた。
「……ミク姉、そろそろクリプトンからワクチンプログラム届いてるんじゃない? メールチェックしてみたら?」
いたたまれなくなってレンが言った。
「まだ早いでしょ。電話もないし」
「いいから、チェックしてみて」
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リンが猫になっちゃった 【前編】
ミク、ルカ、リン、レンの四人は、クリプトンから立派なマンションを与えられ、一緒に暮らしている。
東京で二日連続の大きなライブが終わり、昨日札幌へ帰ってきたところだ。大仕事が終わったので今日はみんな休みである。
朝食をすませた後は、それぞれ思いおもいの時間をのんびり過ごしていた。
リビングではミクが北斗製菓のネギ煎餅をポリポリ齧り、レンはテレビゲームをしている。ルカは爪にマニキュアを塗り、リンは自室にこもっている。リンは漫画でも読んでいるのだろう。
携帯電話の着信音が鳴る。ミクのだ。
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ミク×リン百合ソング「sweet-sour distance」【後編】
髪を乾かし部屋着を着てリビングに行くと、ミクがソファでテレビを見ながらポッキーを齧っていた。
撮影ではイチゴ味のほかに定番のチョコや抹茶味のも用意してあったので、余ったのをもらったのだ。今食べているのは抹茶味だ。
撮影を思い出させるようなアイテムを出すなっつってんのに……。
文句を言いたかったがいいかげん突っ込み疲れしてきたので、リンは何も言わず長いソファの隣に座った。
目はテレビに向いているが、ミクがポッキーを食む音が気になって全然内容が頭に入らない。
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ミク×リン百合ソング「sweet-sour distance」【中編】
「シーン7、カット3、スタート!」
カチンコが鳴り、撮影が始まる。
昼休み、晴天の校舎の屋上。深呼吸したくなるような気持ち良い風が吹いている。
リンはポッキーを齧りながら空を眺めていた。水色の空に、高く飛ぶ飛行機が白い雲の線を引いていく。
こうやってぼんやりと空を眺めながら、あの飛行機はどこに行くんだろうとかのんきなことを考えていると、心がだんだん軽くなっていく気がする。
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ミク×リン百合ソング「sweet-sour distance」【前編】
「……ちょっとリン、そうやって じ~っとあたしの顔見るのやめてくれる? 落ち着かないんだけど」
日曜日の朝、ミクとリンは新曲「sweet-sour distance」のPV撮影現場へタクシーで向かっている。
セガのゲーム用の曲で二人のデュエットだ。セガにしては珍しく百合をテーマにした曲である。
吹奏楽部が舞台で、上級生のおしとやかなお姉さまがミク、それに恋焦がれるウブな下級生がリンの役だ。ミクはリンのことを可愛い後輩と思っているが、リンの恋心には気付いていない。
ミクの方はツインテールをほどいてお嬢様っぽく微笑んでいれば務まる役柄だ。一方リンの役はなかなか難しい。
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初音ミクの再建 ~ネギ煎餅の北斗製菓を救え~(後編)
ミクと鶴田社長、幸子夫人は固い握手を交わし、工場を後にした。
社長と夫人はミクとレンの姿が見えなくなるまで、何度も頭を下げ、手を振っていた。
「ミク姉、いいの? あんな大金貸しちゃって?」
大通りでタクシーを待ちながら、レンが聞いた。
「大丈夫よ。鶴田社長、いい人だったでしょ」
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初音ミクの再建 ~ネギ煎餅の北斗製菓を救え~(中編)
ヤダマ電気の裏手にある北斗製菓の工場は、看板も見落としそうなほどこじんまりとしていた。
コンクリート建てで築年数はそれほど古くなさそうだが、住宅と工場が一緒になっている。
一階の三分の二が工場、一階の残りと二階が住居のようだ。住居としては立派な方だが、工場としては零細の部類に入る。
工場用の出入り口と住居用の出入り口が別になっている。ミクは工場用の出入り口に向かった。
アルミの格子戸の向こうは、四畳半ほどの事務所になっているようだ。呼び鈴もないのでミクは軽くノックして戸を開いた。
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初音ミクの再建 ~ネギ煎餅の北斗製菓を救え~(前編)
「あれ? ネギ煎餅今日も無い…っていうか置場無くなってるじゃない、どうなってんのよ!?」
今日はミク、レン、リンの三人で、ジャスコ札幌店へ買物に来ている。
ミクがルカに買物を頼まれたのだが、レンとリンも暇なのでついて来たのだ。
午前十時。開店したばかりなので、まだ客はまばらだ。
衣料館→電気館と回って、ミクがいつも立ち寄る北海道特産品のコーナーへ来た。
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リンが歌えなくなった日(後編)
(中編からの続きです)
二年前、札幌市内のとあるPさんの家で歌を録音しているとき、ミクは漏電したアンプで感電した。
ちょっとビリッとした程度だったが、直後にミクは声にノイズが混ざるようになった。
うろたえるPさんに心配をかけまいと、「クリプトンに行けばすぐ直ります」と言って、その足でミクはクリプトンに向かった。
楽天家のミクは、本当にすぐ直ると思っていたのだが、実際クリプトンでは手に負えなかった。
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リンが歌えなくなった日(中編)
(前編からの続きです)
羽田空港でヤマハ東京支社の社員と合流し、静岡県磐田市の豊岡工場に着いたのは午後四時だった。
剣持がいるのは工場内にあるサウンドテクノロジー開発センターだ。
四階建ての立派な社屋。玄関前にタクシーを横付けする。
若い男性の社員がミク達を出迎えた。
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リンが歌えなくなった日(前編)
宵の口から土砂降りの雨を降らせていた雨雲が、深夜を過ぎると雷を落とし始めた。
地が裂けたかと思うような雷鳴が鳴り響き、ミクは目を覚ました。
彼女は普段子供のように眠りが深く、滅多に夜中に眼を覚ますことはない。
あたしが起きるくらいだから相当近いわね…。まあいいや、寝よ…。
再び枕に顔をうずめる。しかし、すぐに肩を揺すられて夢の世界から連れ戻された。
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ボクも痛車になりたいな(後日談)
( 『ボクも痛車になりたいな』の番外編の後日談です)
三週間後、富士スピードウェイの廊下で、ミクと綾波レイは再び鉢合わせた。
レンの事件があってから、ミクのボディーガードは二人に増えた。
綾波は相変わらず四人の黒スーツに囲まれている。
鈴鹿の時との同じように、二人は三メートルの距離を置いて睨みあった。
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ボクも痛車になりたいな(後編)
(前編からの続きです)
☆
ピットに帰ったレンは、もうあちこちうろつくことはなかった。
綾波の視線を思い出すと、背筋に冷たいものが走る。
ミクにくっ付いていたいのだが、報道陣に囲まれていて近づけなくなってしまった。
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ボクも痛車になりたいな(前編)
「ミク姉、今日鈴鹿サーキット行くんでしょ? ボク一緒に行ってもいい?」
ピザトーストを齧りながらレンが聞いた。
ボカロ家、朝の食卓。
ミク、ルカ、リン、レンの四人が揃ってテーブルを囲んでいる。
鈴鹿サーキットでは明日からスーパーGT300の予選が始まる。
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「ルカ、おっぱい揉んで」(後編)
(前編からの続きです)
「…ミク、ジェンダーとか勝手にパラメータ変えてない?」
スーパーセロPの自宅。
シンセサイザーやミキサーなど音響機器が所狭しと並んだ部屋で、ミクは新曲の調教を受けていた。
いつもより手こずるので首をかしげていたセロだが、どうやら原因に気が付いたようだ。
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「ルカ、おっぱい揉んで」(前編)
ミク、ルカ、リン、レンの四人はクリプトンから与えられた立派なマンションに住んでいる。
リビングの隣には防音のレッスンルームがあり、音響機器が一通り揃っているばかりでなく、結構な広さがあってダンスのレッスンもできるようになっている。
今日はミクとルカが新曲の振り付けを練習している。
「ねえ、ルカ、腰の振り方教えてくれない」
ルカが絡む曲は大人っぽい楽曲が多く、振り付けも相応に艶やかだ。