満月小路

A
くるくる
細い螺旋の小路
ゆっくりと降りてくる
途切れずに続く

新月の夜食

1A
満月の腹から逃げてゆく
林檎のうさぎ達
1A
満月の体は細くなる

ブランケット

1A
一般人に紛れてるけど
本当は歪んでるんだ
真実を知ったら皆いなくなっちゃうから
僕は黙って心を閉ざして

夢

1A
いつから歩いてたんだろう
振り返った足跡は遠くて
知らない誰かの足跡みたい
1S

ラピッド・サイクラー

1A
楽しいとか嬉しいとか
そんな気持ちはご無沙汰ローテンション
誰か慰めてくれないかな
引き籠もりのアイデンティティ

鏡合わせのパズル

1A
「信じるだけ無駄」なんだって
僕に笑いかけた君はさ
長かった髪を切られても
動じなかったね

通りすがりランデヴー

1A
ねぇ　ちょっと、そこ行くオジサマ
これからあたしと小洒落たカフェに
腕でも組んで歩きませんこと？
1B

夜

1A
こんな夜は誰かの声を聞きたくなる
真夜中の１時半
みんな寝てるかな
嫌われたくなくて

片道切符45

1A
この線路は死後の国には繋がっていないから
半分以上の確率で僕は何処にも逝けない
ただ落ちて何かを失くして
振り返った自分の影に足りない部分を見つけるのは怖いよな

復讐シタイ

1A
汚い死体になりたいな
なるべく汚く死にたいな
それが私の復讐だから
1A

比良坂童子

1A
17)切り刻んだ哀しみが滲み出して
11)両腕から溢れ落ち
15)点々と染みた真っ赤な足跡
13)着物を汚して黒になる

幻想殺人

1A
そっと首締めた明け方
赤黒いチアノーゼ
気色悪くて手を離す
その感情を忘れないよ

Kill or Die

1A
殺るならば確実に
死ぬのなら正確に
頸動脈を断ち切って
噴き出す赤が綺麗だね

Distortion Night

1A
憎いあの人の不幸願う
それは自然な事でしょう
無様に転げ落ちる姿を
滑稽だと笑いましょう

金木犀

1A
明け方に漂う
甘い金木犀の香り
金色の花盛り
遠い始発電車の残響

冬の花弁

1A
雲ひとつない冬の空
肉厚な花弁は冷たく
落ちる時を待つばかり
1B