@片隅さん

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鏡音ーズ大好きです。超大好きです。
どっちのが好きかって言われたら僅差でリンちゃんです。

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イチオシ作品

狭い小鳥の籠の中にて 最終話

 暗い夜空に小鳥を放すと、瑠璃の小鳥は空に向かって一直線に飛び立って、暗い空の中に溶けて行った。りんはひととき、その姿を目で追って、空を見上げて立っていた。  そして、戻ろうときびすを返したところで、それを見つけた。見つけてすぐに、顔色を変えて走り出した。  息せき切って、人ごみをかいくぐり、時にぶつかりながら、廓への道を走った。遠く見える廓の方角の空が、町中にいるこちらからでも判るくらいに明るく、はっきりと橙に輝いている。あれは、火の色だ。家屋を焼き尽くす、炎の色だ。  嫌な予感が胸を締め付けて耐えられなかった。  ぶつかった人の怒号を聞き流し、泥を跳ね飛ばし、ただ力の限りで走る。途中、何かに躓いて一度体が宙を待ってから道に横転した。それもものともせず、すぐに跳ね起きて走り出そうとして、草履の鼻緒が切れてしまっている事に気がついた。躊躇(ちゅうちょ)は一瞬、それをぬいで指先にひっかけると、素足で地面を踏んで、また駆け出した。  芽衣子は手渡された手紙を読んで、大きくため息をついた。それから、はくを振り返って、その顔をじっと見つめた。   「はくさん、身ごもっているのね?」  「……どうして、ですか?」  「みくが貴方と貴方の子供をよろしく、って書いてきているからよ」  芽衣子ははくに向かってその手紙を差し出すと、自分はその場に腰掛けて、両手に顔を伏せて、俯いてしまった。  はくはその手紙を受け取って目を走らせる。見る見るうちに、その顔は強張って行った。  『芽衣子姉さん、みくは罪を告白します。  兄さんが死んだのは、私のせい。  私は、兄さんが好きだった。誰にも渡したくないくらい、大好きだった。  兄さんが、一揆がうまくいったら姉さんと結婚しようと約束をしているのを聞いてしまって、居ても立っても居られませんでした。私は、姉さんも勿論好きだったのだけど、それでも、兄さんを諦める事は出来なかった。  だから、役人に、一揆の事を話しました。  言い訳になるかもしれないけれど、まさか、あんな事になるとは思わなかった。だけど、どちらにしても同じ事なのかもしれません。  みんなが死を覚悟してやっていたのに、あんな形で台無しにして。  結果的に、兄さん一人の死で全ては上手く収まったとしても、私は自分が赦せなかったし、みんなにあわせる顔なんて、当然なかった。  だから、みんなから逃げるために、お金がないことを口実に廓に入りました。  廓の生活は、とても言い表せないくらい酷いものでも、私の罪に比べれば軽いものでした。 私はこのまま、ここで生きて、散っていくと思っていました。  あの男に会うまでは。  姉さん、私は、兄さんを殺したあの男とここでまた会いました。忘れもしないあの冷酷な顔。たしかに間違いなくあの男でした。  私は、自分も赦せないけれど、兄さんを殺す事にしたあの男だけは、もっと赦せない。だから、どんな事をしてでもあの男を殺してやろうと思います。 敵討ちをします。  あの男と再会した日から、私は鬼になることを決めました。  必ず殺してやると、少しずつ計画を立て、それは、叶いつつあります。  姉さんがこの手紙を受取っているということは、きっと私はその達成を目前にしている頃です。うまくいけば。  一つ、お願いがあります。  手紙を届けてくれたはくちゃんは、お腹に子供が居ます。彼女と、お腹の子を、どうぞよろしくおねがいします。                                                 みく』  殿は、反射的に掴んだその細いみくの手に握られた短刀の切先が、今まさに自分の胸に刺さっているのを見下ろして……幸いに、それは致命的な傷を与えるものではなかったものの、厳しくみくを見据える。が、すぐにその瞳は驚きに見開かれた。みく越しに見える大広間の中、自分の連れてきた従者や、この座敷に居るみく以外の遊女たちが、全て一様に畳に臥せっていた。  「そなた……」  みくは素早く殿の腕から逃れると、立ち上がってそちらに向き合い、冷やかに見下ろす。  「毒ではございません。眠り薬」  どちらでも、同じ事かもしれませんけど。みくは言って、唇を笑む形にしようとしたが、それは微妙な形に歪んだだけで、どうやら失敗したらしかった。  「みなさま、地獄の道連れに」  みくのそんな呟きに応えるかのように、どこからか、火の爆ぜるような音が聞こえてきた。気づけば、障子の向こう側は既に、夜の暗さに似つかわしくない眩い明るさで、夕日に照らされたように橙に色づいていた。ただ、夕日と違うのは、そこに激しく、狂わしく、くるくると影が躍っていること。  「なるほど」  殿は呟いて、自らの胸元に刺さっていた短刀を引き抜いた。思ったとおり、自分の手足の動きは鈍っている。抜かりのないこの娘は、きちんと短刀にも体の動きを緩慢にする薬を塗っていたのだろう。  「あなたのお酒には何もいれてございません。聡いお方ですし、それに、生きながら焼かれる苦しみを、味わって頂きたくて」  「あの時の憎しみ、忘れずもち続けたか」  その言葉に、みくは訝しげに殿の顔を見る。  殿は見透かしたようないつもの顔で、みくの顔を視線を正面からとらえた。  「私はそなたの顔を見覚えていた。あの、一揆のときの、痩せこけた、目だけがぎらぎらと輝いた娘をな。廓で見かけたのは偶然であったが、さて、興を覚えて通ってみれば、なんとも面白き女。始めは憎しみを隠しきれないようにしていたが、そのうち、それを隠すことを覚えたか、面のような笑みで心のそこを一切隠して……だが、近頃またそれが揺らいで、とうとう天下の初音太夫も堕ちたかと、己惚れておったところに、この処遇とは」  はっ、と殿は嘲るように声高に笑う。低く腹に響くその声は部屋中に響き渡った。  「なんとも良き女。そなたが望むのならば、是非もない」  ひときわ大きな火の音がして、部屋を囲む障子や屏風に火がついた。炎は舐めるように壁を、天井を伝って部屋中を明るく、毒々しく照らし出す。全て幻に見える豪奢な装飾品、夢のような世界を彩るうその浮世のうその遊戯場を罰するかのように。黄金色の屏風も、名工の簪、器や調度品も、書院造の床の間も、そこにかかる掛け軸も。全ては火に呑まれて行く。火はその行く手を広げる度に、ぱちぱちと眩い火花を散らす。それが、みくの腕や肩に降りかかって、肌や着物や髪をじわりと焼いた。  「そなたと心中というのなら、これもまた本望」  殿はそう言って、何を思ったのか、みくに向かって両手を広げて見せた。  訝しげなみくの視線に向けて、余裕気に、笑みさえ浮かべてみせる。  「心中、なのだろう? 来い」  「わたしが?」  「一緒に、地獄へ」  どう、とひときわ大きな音がして、柱の一つが炎に飲まれて床に倒れた。火の勢いは更に増し、強い熱風がみくを煽って、長い髪も、長い着物の袖も裾も、激しくはためいた。強い炎は殿の顔をくっきりと照らしていた。その顔に、かつてみくが望んだ人のような優しさも、あたたかさも、なにもない。あるのはただ、冷酷そうな瞳と、不適な口元の笑みだけだ。望んだものとは、まるで違う。  でも、そこには差し出された両手があった。一度も、みくには差し出されることがなかったそれがあった。望んでも望んでも、得られなかったものがあった。  みくはゆらりと一歩踏み出した。  炎に照らされて、濃く映しだされた影がそれに合わせる様に揺れる。  二歩、三歩、震えるように歩いてようやくそこにたどり着いて。  倒れこむようにその腕の中に身を任せると、体をきつく抱きしめる腕の感触を感じた。目を閉じて、瞼の裏を焼くような、熱い炎の眩さを感じながら、みくはほう、と一つ大きく息を吐いた。  廓の周囲は人だかりで覆われていた。だけど、それを掻い潜って近づくまでもなく、その様子は見て取れた。  廓は地獄の劫火かと思われるような炎に包まれていた。周囲を取り巻く火消しも手出しが出来ないほどの、酷い炎。  りんは呆然と、眩く輝く廓があったはずのその場所を、今はただ、炎が踊るだけとなったその場所を見つめた。  何が起こったのだろう?  みくは、いったいどうしたのだろうか?  まさか、よもや……。  「一緒に逝くと、約束したのに……?」  火が廓を食らう音が、耳を劈(つんざ)くように辺りに響いていた。  黒い大きな煙と、それを取り巻く無数の黄金色の火の粉が、炎で不気味に明るく照らされた夜空に向かって昇っていた。  「みく姐さん?」  呟いてみたところで、誰も応える者はいなかった。右手の指の先にひっかけた草履が、虚しい音をたてて地面に落ちる。  騒々しい人々の噂話が右から左に、耳に入っては抜けていく。  その姦しさの中で、突然、一つだけ、一つの声だけが、りんの頭の中に入ってきた。  「りん?」  自分の名を呼ぶ、そんな声。聞きなれた声。もうずっと、聞きたかった声。もう二度と聞けないと思っていた声。  「りんだろう?」  りんは恐る恐るその声の主を振り返る。  幻かと思った。居るはずのない人間が、そこに立っていたから。自分とよく似た姿かたちの、自分が何よりも愛しいと思っている人間が。  「どうして?」  掠れた声を、ようやく搾り出すと、相手は困ったように笑った。  「みくという人から手紙を貰った。お前はここにいる、と」  「みく姐さんから?」  「そう。謝罪も書いてあった。手紙をすり替えて俺が死んだとお前に思い込ませたのだと。彼女はお前を利用しようとして、そうしたと書いてあったけれど……」  廉はそう言葉を濁して、いまだ轟音とともに炎と火の粉を躍らせている廓を見上げる。  炎に煽られて、熱風がこちらに届くくらいに強く吹き荒れる。それは、りんの髪や袖を浚って、激しくはためかせていた。りんは、纏わりつくそれをそのままに、いまだそこに立ち尽くしていた。  「じゃあ、本当に廉なの?」  「はあ?」  「幻でなく?」  ああ、と納得したように廉は微笑んで、そうしてりんに向けて両手を広げて見せる。  りんはそれでもまだ少し迷うかのように二歩、三歩、震えるように歩いて、それから駆け出す。迷わずその腕の中に飛び込むと、体をきつく抱きしめる腕の感触を感じた。その温かさと懐かしい感触を感じながら、りんは声を上げて泣き出した。  二人の背後では、遊女たちを閉じ込めていた煌びやかで大きな鳥籠は、いまだ轟音を奏でながら、炎の中で踊っていた。 完

完結です。無駄に長いのにお付合いいただき(はたしてそんな方がいらっしゃるのだろうか…?)ありがとうございました。

折角なので書きながらBGMにしていた(=モチベーション的な意味でめっちゃお世話になった)曲あげときます。(あいうえお順)選択基準は「和風」。
・いろは唄(修羅場とか、回想シーンとかで大活躍)
・siGrE(回想シーンとか、感情的な時とかで…)
・そいやっさぁ!!(喧嘩のシーンとか、修羅場とかで…)
・夢みることり(何というか、基本)
あと、書き始める前にテンション上げるために「のろいのめがね」も聞いてました。
そんな感じで、ではではまた会う日まで!どろん。

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投稿日時 : 2010/01/03 19:45

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