イチオシ作品
最近の投稿作品 (2)
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ugly grace
1人の男性が、今日も仕事を終えて家路につく。
その帰りの電車、つり革につかまりながら、丸い月が白く輝く真っ暗な外を、彼はボーっと眺めている。座っていたら眠ってしまいそうなくらいに疲れていた。
「あっ……」
そんなさなか、電車がある駅で止まると、ドアの向こうに女性が電車を待っていた。彼女は、白い肌に腰が隠れるほどのピンク色の長い髪、暗い赤のドレス姿に、首にはネックレスをしている。ドアが開き、車内に入ると、彼女は彼のそばを通り過ぎて少し離れたところで同じようにつり革につかまった。
彼は疲れも忘れて、彼女に釘付けになっていた。仕事の後、この電車で彼女を見ることが、彼にとって毎日の楽しみなのである。
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snow white
雪のちらつく冬の日、ある男が仕事を終えて家への道を急いでいた。今日はこれから荒れると、朝の予報で知っていたからである。しかし……彼が家に着くよりも早く、天気は徐々に荒れ始める。やがて風も出てきて、本格的な吹雪と化してしまった。
前がほとんど見えない中だが、歩きなれた道を彼は立ち止まることなく進む。近道をするため、男は公園の中を通ることにした。すると、視界の悪い中に見えてきた公園のベンチに、影が見える。なんと……人が座っているようだ。不思議に思った男は道を外れ、その人に近づいてみた。
徐々に視界に捉えたその姿は──帽子からコートにブーツまで、全身白の服装に黒い手袋、薄紫の長いストレートヘアの、女性であった。一体この吹雪の中、このような場所に座って何をしているのだろうか……?
男は声をかける。
「あの、」