姫という鳥 城という鳥籠  -悪ノシリーズ-  2/2 > ブクマでつながった作品

姫という鳥 城という鳥籠  -悪ノシリーズ-  2/2

 その齢十四の少女は手の中にある小瓶を握りしめる。
 彼女は走りだした。向かう先は。

   街はずれの小さな港
   一人たたずむ少女
   この海に昔からある
   ひそかな言い伝え

  「願いを書いた羊皮紙を」
  「小瓶に入れて」
  「海に流せばいつの日か」
  「思いは実るでしょう」

 私は思い出す。
 昔、私とレンは毎日のようにこの港に来ていた。
 レンは毎日ここで、羊皮紙の入った小瓶を流していた。

「本当にレンは律義ね」
 ある日、私は言った。
「そんなので願いがかなう訳ないじゃない」
 その言葉にレンは微笑んで返す。
「お嬢様もやってみませんか?」
 私はそっぽを向いて答えを返す。
「そんな庶民的な遊び、私にはやる必要がないわよ」
 そして。
「だって……」
 レンがこちらに振り向く。
「私の願い事はレンが全部叶えてくれるじゃない」
 レンは少し驚いて、そして、優しく笑ってくれた。

 こんなにこの風景が綺麗なことはなかった。
 私は笑ってしゃがみこんだ。
 そして、小瓶を流す。
 
   流れていく ガラスの小瓶
   願いを込めたメッセージ
  
 遠くを見つめる。
 雲ひとつない青い空。
 澄んだきれいな海。
 私はまた思い出す。
 
「毎日、そんなに熱心に何をお願いしてるの?」
 ある日質問した私に、レンは静かに答える。
「リン様の胸が大きくなりますようにって」
「な!?」
「ウソです」
 驚き慌てる私の顔を見て、レンは無邪気に笑って答えた。
「お嬢様がいつまでも幸せでありますようにって」
 その言葉に私は手を後ろで組んで返す。
「そう思うなら、ずっと私の側にいてよ……」
 レンは少し驚いて私を見る。
 私は顔を少し赤めてレンを見つめ返して、続ける。
「私連と一緒にいる時が一番幸せなの」
 レンも呆然と顔を赤らめて、私を見つめる。
「……そう……」
 ぽついとレンは言う。
 そして、遠くを見つめて、レンは言った。
「できたら嬉しいなぁ……」

 今までの私とレンを、私は次々に思い出す。
 紅茶を注ぐレン。
 お菓子を作るレン。
 周りのいろいろな世話をするレン。
「君はいつも私のために何でもしてくれたのに」
 私は遠くを見つめる。
 駄々をこねる私。
 イタズラをさせる私。
 緑の娘を殺すように言う私。
「私はいつもわがままばかり、君を困らせていた」

   願いをかなえてくれる君
   もういないから
   この海に私の願い
   届けてもらうの

 目の前の景色がぼやけていく。
 そして、私の頬を涙が一粒。
 二粒、三粒、四粒。
 私はまた泣き出した。
 止めどなく涙は流れる。

   流れていく 小さな願い
   涙と少しのリグレット
   罪に気付くのはいつも
   全て終わった後

 水が、波が、当たっていることも気にせず、私はひざまずく。
 泣きながら私は言う。
「ごめんなさい」
 泣きながら私は叫ぶ。
「ごめんなさい」
 謝る相手はレンか、それとも神か、それは私も分からない。

   流れていく ガラスの小瓶
   願いを込めたメッセージ
   水平線の彼方に
   静かに消えてく

「神様……どうか……」
 泪を流しながら。
「お願いです」
 手を組む。
 私はひたすら祈る。
 私はひたすら願う。

  「もしも生まれ変われるならば…………」
  「                 」






 レンは意識を取り戻す。
「ここは?」

   目覚めたとき僕はひとり。
   黒く塗りつぶされた部屋
   何も見えず 何も聞こえず
   一人震える闇の中

「ここはどこ?」
 僕は戸惑う。
「僕はどうしてここに?」
 まったく思い出せない。
 自分が今までどこにいたのか。
 自分が今までどんなことをしてきたのか。
 覚えているのは自分の名前がレンであることだけ。

   天井には大きな穴
   よく見ればそこには巨大なぜんまい
   その先から突如響く
   得体の知れぬ不気味な声

  「罪深き少年よ」
  「お前はこの先永遠に」
  「この部屋からは出られぬ」といった

 女性の声?
 どこか聞き覚えのあるようなその声。
 その声に僕は震え、そして、その意味するものを、伝えることをハッと理解する。

   瞬間 思い出した全ての記憶
   自らが重ねた罪の数々を
   ここにいる理由と結末に気づいた
   もうあのころには戻れないのだと
 
 僕はここから逃げ出そうとした。
 気づいても信じたくはなかった。
 あのころに戻りたい。
 楽しくリンと過ごしていたころに。
 だが、走りだそうとした瞬間。
 ジャラ。
 音のなったところを僕は見る。

   気づけば両腕にはめられた赤い手錠
   それはきっと誰かの流した血の色
   両の足首には青い色の鎖
   それはきっと誰かの涙の色

 るりらるりら。
「歌声が……聞こえる」
 僕は聞こえてきた歌に呟いた。
「だれが歌う子守歌だろうか?」
 暗闇の中、僕ができるのは立つことか座ることだけ。
 歩くことさえも足枷がそれを阻む。
 
「どれぐらいの時間が過ぎたんだろう」
 僕は動かぬぜんまいに尋ねる。
 どこからともなく聞こえてくる歌声だけが、僕を癒す。
 突然、ぜんまいの隙間から小さな光が僕の前に落ちてきた。
 それはきっと。
 君からのメッセージ。
 僕はそう思った。
 そのときだった。
 ぜんまいは廻り始める。
 
   廻り始めたゼンマイは静かに語る
  「罪は決して許されることはない」

 ぜんまいは一人の天使に変わる。
 僕は驚く。
「でも、罪に気付き、悔いたとき、神もそれに慈悲を掛ける。神は非情ではない」
 天使は静かに語る。
「あなたにも罪はありますが、ここに閉じ込め出られないようにしたのは、あの王女に反省してもらうためです。そして、王女はもう十分に反省したようです」
「リン!」
 僕は反省などしたことも謝った事もないリンを思い出す。
 あのリンが反省したの?
「あなたの魂を死者のいる国に連れて行くこともできますが、それがお望みですか」
 天使の言葉。
 その言葉が意味することに、隠された意味に、僕は気付く。
「もし……もし戻れるというなら…………僕は……僕はリンの元に帰りたい!」
 途端。
 
   赤い手錠外れ 僕に語りかける
  「これからあなたは生まれ変わるのよ」と
   青い足枷外れ 僕に話しかける
  「今日が君の新しいBirthday」

「あなたに新しい命を授けます。姿も年齢もすべてが前世と同じまま。さあ、君の大切な双子の元にお戻り」
 ぜんまいだった天使は静かに言う。

   すべてが廻りそして白く染まる
   もうすぐ君に会いに行くよ


「僕たちまた双子が良いね」
 その声にバッと私は振り返る。
「――――!!」
 そこには、そこには。
 私は驚きを隠せない。
 それ以上に、この光景を信じられない。
「レン!?」
 そこには、私の片割れの召使が立っていた。
「レン……なの?」
 私はまだ信じられない。
 でも。
「はい、リン様」
 レンのいつもと変わらない笑顔と声が私を信じさせる。
「どうして?」
 その言葉に、レンは首をかしげた。
「どうしてレンが? だって、レンは、レンは……」
 その瞬間。
 ふと、目の前に、何かが舞い降りた。それは……天使?
「レンは確かに一度死にました。ですが、天使の一人セーレのお慈悲で彼の魂は死者の国には運ばれませんでした。そして、神は王女が自分の今までの行為を後悔し、心から反省したならば、もう一度チャンスをあげると言ったのです」
 天使は静かに語った。
「私……許されたの?」
 その言葉に天使は静かに答える。
「罪が許されることはありません。ですが、慈悲というものはあります。恩を忘れずに生きていればいいのです。セーレのお慈悲、セーレの恩を忘れないでください」
 そう言うと、天使は消えた。
 私はまだよく理解し切れていない。
 ただ、分かったことは。
「レン」
「はい、リン様」
 レンがまだ私の側にいられること。
 私たちがまだ一緒にいられること。
 また、どっと涙が流れだした。
「リン様。もう泣かなくてもいいのです」
「レン!」
 私は、嬉し涙を流している。
 今までに私がそんなものを流したことがあるだろうか?
 すべてに満足しきっていた私がうれし涙を流したことがあるだろうか?
 涙が止まらない。
「リン様。心配をかけてすみません」
「レン! ごめんなさい! ごめんなさい! わたし……わたし!」
 私は心から謝った。
 自分の犯した罪。
 いままで、迷惑ばかりかけていたこと。
 レンを死に追いやったこと。
 もう謝り切れないほど。
「リン様、もういいのです。僕はしっかりここにいます」
 静かな変わらないレン。
「もうあなたのそばを離れません。僕はずっとリン様と一緒です」
 そう言って、レンは優しく微笑んだ。
 私は、耐えきれずにレンに抱きついた。
「リン様……!?」
 驚くレン。
「約束よ。この先ずっとよ」
「……はい」
 レンは静かに答える。
 そして、分かったことはあと一つ。
 
 私の願いが少し届いたこと。

こんにちは
ヘルフィヨトルです。
これは悪ノPさんの歌「悪ノシリーズ」の歌詞二次小説です。
悪ノPさん、ほんとうにありがとうございます。
前半を見てない人は前半も見てほしいです。

今回は
テーマ……歌詞を使用しての、二人の物語
目標………うまく本篇につながるようにする・二人のうまい視点変え
結果………多少満足、視点変え満足
でした。

リンとレンをあまり知らないので、性格も話し方も違うと思いますが、許してください。
これも一応「AuC 金のダイヤモンド」の外伝です。
なので、これからお姫様リンと召使レンの短編を色々出すと思います。

最後にこれは本当にいい出来にしたいので、誤字、脱字、意見、アドバイス、指摘、感想、お待ちしています。

読者の皆様にワルキューレが微笑むことを

投稿日時 : 2009/08/03 09:12    投稿者 :ヘルケロ

ヘルプブクマでつながった作品とは?

語り部のマヨイガ

語り部のマヨイガ
ようこそいらっしゃいました。このたびお聞かせするのはとても美しい魔女の物語です。
山の麓の森の置く深くに青く長い髪を持つ魔女が住んでいたそうです。魔女はとても美しく、その姿を見た者は誰しも魔女に恋してしまうそうです。麗しき魔女の歌声を耳にしたが最後、魔女の虜となった迷い人は誰一人として帰らなかったそうです。
ある時、また一人迷い人がやってきたそうです。その迷い人は、金の髪をひとつに束ねた少年だったそうです。そしてその迷い人は例の如く青い髪の魔女に出会い、恋に落ちたそうです。迷い人は魔女と共に楽しく日々を過ごしたそうです。魔女と過ごすうちに迷い人が虚ろに思い出すのは痛みと衝撃、鈍っていく体の感覚、そして、泣き叫ぶ大切な人の声。つまり、死ぬ間際の記憶でした。ですが、迷い人はその記憶すら忘れてしまったそうです。そして、二度と帰る事無く歌を歌う魔女の傍に居続けたそうです。
 山の麓の森の奥深くたった一人で魔女が住んでいたそうです。時たま、人は訪ねてくるのですが、生きている人間は一人として訪ねて来ることは無かったそうです。迷い人は自身の命が尽きたことに気づかぬまま、魔女の傍に留まり続けたそうです。そんな迷い人のため、魔女は延々とたった一人で歌を歌い続けたそうです。

文鳥さん

文鳥さん

2009/04/03 12:35

Fairy tale 1

 ある晴れた日の昼下がり。
 ミクは姉と共に本を読んでいた。しかし、その本と来たら難しい言葉ばっかりで、十六歳のミクには理解できないものがあまりに多すぎた。次第に、木陰の木漏れ日の暖かさと頬をなでる風の涼しさに、夢の世界へと引き込まれていった…。
 ふと目を覚ますと、姉のほうも眠ってしまったらしい。退屈になってしまった、とミクがあくびをしているところを丁度よく、何かが横切っていった。
 茶色のチョッキ、金と銀のバッジとチェーン、それに兎の黒い長い耳を付け、ズボンにつけたチェーンにはふわふわとしたウサギの尻尾のような飾りがついている。その容姿と懐中時計を持ってあわただしくかけていく自分と同じほどの年齢の少年は、ミクの好奇心に火をつけた。
 気付かれないように気をつけながら、少年の後をついていく。時折不安そうに辺りを見回したり、泣き出しそうな表情になりながら、少年はそう早くもない足で走っていた。どこか自分に似た容姿をした少年は、端正な顔立ちで、格好いいというよりかはかわいらしいというような雰囲気だ。小柄な少年は白いワイシャツを着ているが、どうもサイズが合わないらしく、手のひらが出てきていない。出ているのは指の先っちょだけだ。

リオンさん

リオンさん

2010/02/19 23:02

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