アナザー:ロミオとシンデレラ 第三話【何故ならそれこそが恐怖だから】後編 > ブクマでつながった作品

アナザー:ロミオとシンデレラ 第三話【何故ならそれこそが恐怖だから】後編

「いやああああっ!」
 びっくりしてそっちを見る。初音さんが悲鳴をあげていた。あれれ。巡音さんも画面を見るどころじゃなく、初音さんを見ている。
 こんな反応するってことは、初音さんってホラーが全くダメなタイプ? クオ、お前、何考えてんだ。俺と巡音さんはどっちも唖然として、悲鳴をあげる初音さんを見ていた。
「クオのバカっ! 変態っ!」
 初音さんはいきなり立ち上がってクオに飛びかかると、その首を勢いよく絞め始めた。うわあ……。
「何考えてんのよっ! 信じられないわっ!」
「…………」
「あんなグロい映画見せるなんてっ! クオの悪趣味悪趣味悪趣味っ!」
「…………」
 いや、こんなのまだ序の口で、この後もっとすごいシーンが……なんて言ってられる状況じゃないな。とりあえず、俺はリモコンを手にすると、停止ボタンを押して画面を消した。消えたら落ち着くかなと思って。でも、初音さんは相変わらず叫びながらクオの首を絞め続けている。
「ねえ、巡音さん」
「何?」
「初音さんって、ホラー苦手だったりする?」
「……そう言えば、わたし時々ミクちゃんと映画見るのだけど、ホラーは一緒に見たことがないわ。わたし、ホラー映画って見たの、これが初めて」
 なんか今引っかかる台詞があったけど、今はクオを助けてやらないと。口から泡ふきかけてるし。俺は立ち上がると、初音さんの肩を軽く叩いた。
「初音さん初音さん、それくらいで勘弁してあげて。クオ、白目むいてる」
 初音さんははっとした表情になり、クオの首を絞める手を離した。えーと……今、クオの頭がソファの腕木にぶつかって、なんだか鈍い音がしたような……。
 ……っていうか、クオ、動いてないぞ!?
「きゃ~っ、クオ、しっかりしてっ!」
 初音さんはもう一度クオに飛びつくと、今度はクオを激しく揺さぶり始めた。その度にクオの頭がソファの腕木にぶつかって、鈍い音がする。……なんというか、背筋が寒くなってきたぞ。
「ねえ、ミクちゃん……そっとしておいてあげた方がいいんじゃないの?」
 たまりかねたのか、巡音さんがおずおずと口を挟んだ。
「リンちゃんっ! クオが起きないっ! どうしようっ!」
 初音さんはクオを放り出すと――また鈍い音がしたぞ――巡音さんに勢いよく抱きついた。巡音さんが初音さんの頭を撫でている。……もしかして、ここの家これが日常茶飯事だったりするんだろうか。
「えっと……多分大丈夫よ」
 巡音さんはそう言っているが、本当に大丈夫かこいつ? 俺はクオの傍らにしゃがみこむと、頬を軽く叩いてみた。
「お~い、クオ。生きてるか?」
「う……」
 クオは首をさすりながら起き上がった。さすがにちょっとほっとしたぞ。救急車を呼ぶような事態にならなくてよかった。
「ほら、ミクちゃん。ミクオ君は大丈夫だったから」
 巡音さんが初音さんにそう言っている。
「悪いが……全然大丈夫じゃねえ……ミク……俺を殺す気か……」
 それはそうかも。
「クオ、良かった! 生きてたのね!」
 初音さんはそう叫んで、今度はクオに抱きついた。巡音さんはほっとした様子で、そんな二人を見ている。
「誰の……せいで……死にかけたと……」
「あーん、クオ! ごめんなさいっ! わたしがやりすぎたわ!」
 これは一応いい光景と呼んでいいんだろうか。……俺にはわからん。
 というか、映画は? クオも息を吹き返したので、俺は訊いてみることにした。
「で、映画はどうする?」
「ホラーは嫌よっ!」
 初音さんの即答。確かに、これじゃあ俺もホラーを見る気にはなれない。今のクオの臨死体験は、下手なホラーより怖かった。
「じゃあ、初音さんが見たい映画を見るということで。それでいい?」
 巡音さんの方を見ると、頷いた。クオを見る。
「もうそれでいいよ……」
 それが、クオの返事だった。諦め半分、疲れ半分という顔をしている。あんなことがあったんだから仕方ないか。
「じゃあわたしのお薦め映画を……」
 初音さんが立ち上がって、プレイヤーにDVDをセットした。そして、映画上映会は再開したのだった。


 昼食やら休憩やらを挟みながら、俺たちは結局映画を二本見た。どっちも初音さんのお薦めのラブコメ映画。クオはずーっと仏頂面をしていたが、女の子二人は楽しそうだった。一本目はともかく、二本目の映画は音楽の使い方が面白かったな。
 映画を二本見終わると、巡音さんは「門限があるから」と言って、帰って行った。初音さんも自分の部屋に引き上げてしまい、ホームシアタールームには俺とクオが残された。さて、と……。
「俺もそろそろ帰るけど、クオ、ちょっといいか?」
「なんだよ」
「今日見れなかったホラー映画、借してくれ」
 結局『ブレインデッド』は見れなかった。
「ああ、別にいいぜ。今日は悪かったな。ミクと鉢合わせしちまったせいで、お前までラブコメ映画につきあわせちまって」
 やっぱりこいつ、なんか変だ。ちょっと確かめよう。俺がクオを正面から見つめると、クオはたじろいだ。
「……なんだよ」
「訊きたいことがあるんだ。クオ、お前、俺に何か隠してないか?」
 クオは、なんというか、わかりやすいほどに派手にうろたえた。
「……な、何だよいきなり。そ、そんなことないだろ」
 お前、嘘つくの向いてないよ。演劇部なのになあ。……思わず派手なため息が出る。
「お前さあ、その態度だけで『はい、俺は何か隠してます』ってバレてるよ?」
 クオがむっとした表情になる。だが、俺はクオが口を開く前に、先を続けた。
「そもそも、昨日の時点で変だと思ったんだよ。お前、あんまり自分の家――ってか、初音さんの家か――に人呼びたがらないだろ。なのに今回に限ってはやけにしつこかったし。何がしたかったんだ」
 絶対何か魂胆があるはずだ。何を企んでいるのか知らないけど、正直、こういうのは面白くない。
「別に深い意図はねえよ」
 そらっとぼけるクオ。あ、そう。それなら俺にも考えがあるよ。
「クオ。正直に全部喋らないと、この前の合宿でのこと、初音さんに話すぞ」
 俺がそう言うと、クオの顔が引きつった。
「レン、あのことは言うなって言っただろ!」
「うん、だから、黙っててやるから、隠し事があるんならここで全部白状しろ」
 クオは冷や汗を流しながら固まってしまった。……そんなにあのことばらされたくないのか。別に大したことでもないと思うんだがなあ。アニメ見て号泣するのって、そんな変なことでもないだろ。そりゃあの時、クオがボロ泣きしたせいで、みんな引いてたけど。
 普段から初音さんの前で「『フランダースの犬』!? その程度のアニメでこの俺が泣くか」とでも宣言してるんだろうか。
「で、クオ、どうするんだ?」
「えーっと……誰にも、特に、ミクと巡音さんには絶対に言うなよ?」
「わかったからとっとと喋れ」
 俺がそう言うと、クオはうつむきながらぼそぼそとこんなことを言い出した。
「ミクと一緒にホラー映画を見たかったんだ」
「……なんだよそれ」
 理由になってないぞ。
「最後まで聞いてくれよ。ミクはホラー映画が嫌いで、俺がホラーを鑑賞してる時は絶対よりつかない。そんなミクと一緒にホラーを見るにはどうしたらいいか!」
 妙に力を込めてそう言うクオ。おい……そんなことの為に、わざわざ俺を引っ張りだしたのか?
「それで初音さんの予定を調べて、わざわざ巡音さんが来る日を選んで、俺を呼んだわけ?」
「だって一人だと逃げられるだろ。誰かいたら逃げづらいじゃないか」
 巡音さんと俺は、初音さんを引き止めておくための障害物かよ。道理でひたすら帰るな帰るな言ってたわけだ。……アホらし。
「うまくすれば、ミクがきゃーって叫んで俺に抱きついてくれるかもって、思ったんだよ……悪かったな」
「……良かったな、夢が叶って」
 実際、抱きついてはもらえたわけだし。というか、こいつ、普段からそんなこと考えていたのか。まあ、初音さんは可愛いし、クオがそういう気持ちになるのはわからなくもないけど。けどなあ、一緒に住んでるんだからもっと別のアプローチあるだろ。
 大体理由には納得したが、これだけは言っとこう。
「ホラーが嫌いという人にホラーを見せるのは、はっきり言って悪趣味だよ。せめて、もっと大人しいのにできなかったのか?」
「ゾンビはホラーの王道だろ。お前だってゾンビ映画好きじゃねえか」
「ホラー苦手な人と一緒に見たいとは思わない」
 他のジャンルはともかく、ホラーだけは苦手な人に下手に見せるもんじゃない。
「もう二度としねえよ。さすがの俺も懲りた。たく、巡音さんぐらいミクも落ち着いててくれりゃいいのに……」
「あれは落ち着いてたんじゃなくて、初音さんが騒ぐから画面に集中できなかったんだと思う」
 初音さんが悲鳴を上げ始めてからは、巡音さんは初音さんの方ばかり見ていた。あんな大声で悲鳴をあげられたら、誰だってそっちを見るだろう。
 と、クオが急に、妙なことを訊いてきた。
「お前、巡音さんのことどう思う?」
「何だよ藪から棒に」
 いきなりそんなこと訊かれたって答えられるか。同じクラスとはいえ、一週間前までまともに喋ったことなかったのに。
「いいから答えてくれ」
 ……こいつ、また何かろくでもないこと考えてるんじゃないだろうな。
「クオは、巡音さんのことどれぐらい知ってる?」
「あんまり知らん。ミクとは仲いいけど、俺はほとんど話したことないし」
「巡音さんの口ぶりだと、よく遊びに来てるみたいだったけど。それで全然話す機会ないわけ?」
 よく一緒に映画見るみたいな感じだったもんな。クオはちょっと嫌そうな表情で、こう言った。
「だって俺あの子に用事ないし、たまに話しかけても黙り込んじゃって、結局はミクが代わりに話すし。ミクも何だか俺に冷たいし。で、お前は巡音さんのことどう思うわけ? まだ質問に答えてもらってないぞ」
 確かに巡音さんは人と話すの苦手みたいだけど……要するに、クオは巡音さんのことが邪魔なんだろうな。ついでだからもう一つ確認しとこう。
「ごめんもう一つだけ教えてくれ。初音さんの方が、巡音さんの家に遊びに行くことは?」
「ねえよ」
 ふーん、そうか。それにしても……クオ、ちょっと大人げないぞ。自分が初音さんの一番になりたいからって、その親友を追っ払おうとするのはさ。というか、俺にどうしてほしいんだよ。
「で、お前いい加減に俺の方の質問にも答えろよ」
「何だったっけ?」
 別に忘れてないが、ちょっとからかってみる。
「巡音さんのことどう思うのかって、さっきから何度も訊いてるだろ」
 悪いけどお前に同意はしかねる。
「お前は俺にそれ訊いてどうしたいわけ?」
「レン! 質問に質問で返すなよ!」
「だってお前の意図がわかんないし」
「ああもうっ!」
 大体、自分の人間関係に俺を巻き込むなよ。この環境じゃ色々気苦労も多いのかもしれないけどさ。とばっちりを受ける身にもなってくれ。
「……お前の気持ちもわかんなくはないけど、そういうのはよくないと思うぞ」
「は?」
「じゃ、俺は帰るよ。あ、クオ。DVD」
 クオがDVDを渡してくれたので、俺は家に帰ることにした。

なんかリンパートと比べてずいぶんと長くなっちゃいましたね、ここの部分。

余談ですが、書いている私自身はゾンビ映画は苦手……というか、そんな好きでもないです。

投稿日時 : 2011/08/07 23:48    投稿者 :目白皐月

ヘルプブクマでつながった作品とは?

アナザー:ロミオとシンデレラ 第二話【ミクの興奮】

 その日の朝、登校したわたしの目に入ったのは、信じられないような光景だった。何かって? リンちゃんが、同じクラスの鏡音君と話をしていたのっ! これが驚かずにいられますか!
 ……と言うと、大抵の人は「それのどこが信じられないわけ? 同じクラスなんだから話ぐらいするでしょ?」って思うかもしれない。けれど、リンちゃんに関してはそれはありえないのだ。何しろリンちゃんは、がちがちにガードが固い。リンちゃんの育った家庭を考えると仕方がないんだけど、とにかくもう固い。相手が男の子だとそれはもっと顕著で。わたしはリンちゃんと幼稚園の頃からのつきあいだけど、小学校高学年になった頃から、リンちゃんは自分からは、全く男の子と話さなくなってしまった。じゃあ、話しかけられた時はどうかって? 大抵は口ごもっちゃってまともに返事ができない。わたしの家には現在、わたしと同い年の従弟のクオ――これはあだ名で、本名はミクオ――が同居していて、リンちゃんが遊びに来た時にクオと顔をあわせることもあるんだけど、やっぱり話せずにいる。
 わたしがリンちゃんにおはようと声をかけると、鏡音君は自分の席に戻って行ってしまった。
「ねえねえリンちゃんっ! 今話してたの鏡音君でしょ?」
「そうだけど」

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/08/05 23:36

アナザー:ロミオとシンデレラ 第四話【ミクの不満】

 わたしが立てた作戦は完璧だった。まず、わたしがリンちゃんを「映画でも見ない?」と言って家に呼ぶ。そして同じ日に、クオがやっぱり映画を口実にして、鏡音君を連れてくる。後はわたしとクオが喧嘩をする振りをして、二人だけ部屋に残して出て行ってしまうのだ。これで、リンちゃんと鏡音君が部屋の中で二人っきり、という、非常に美味しい状況ができあがることになる。
 クオはうまくいくわけないだろう、という態度を崩さなかったけれど、鏡音君を呼ぶことは呼んでくれた。なんでも、このために鏡音君の見たがっていた映画のDVDを買ったらしい。ありがと、クオ。
 わたしもリンちゃんに電話をかけて話をする。こっちは簡単だ。リンちゃんは基本的に、わたしの誘いは断らない。二つ返事でわたしの家に来ることになった。
 そして当日。わたしとクオは予定どおり、ホームシアタールームで鉢合わせして喧嘩した後、「話をつける」と言って、部屋を後にした。お二人さん、ごゆっくり。
「ところで、第一段階(二人を呼び出して、二人だけにする)はうまくいったけど、この後はどうするんだ?」

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/08/07 23:52

アナザー:ロミオとシンデレラ 第六話【檻の虎に太陽を見せて】

 クオの家で映画を見てから、数日が経過したある日。俺は学校の図書室で『RENT』のサントラを聞きながら、歌詞をチェックしていた。この前見た舞台は字幕がいいかげんで、話の意味を取りづらかったんだよな。そんなわけでネット通販でサントラを購入したんだが、歌詞カードがついていなかった。幸い、歌詞を全部載せてくれているウェブサイトがあったので、そこからプリントアウトしてきたけど。
 しかし、映画だとかなり曲がカットされていたんだな。「クリスマス・ベルズ」と「ハッピー・ニュー・イヤー」がカットされているのはもったいなさすぎる。映画じゃ表現しづらかったんだろうけど。
 曲を聞きながら、ノートに思いついたことを書き留める。この辺りは台詞が交差していて聞き取りにくいな……ちょっと一息入れるか。プレーヤーを止めて……あ。
 書棚の近くに巡音さんがいて、思い切り目があった。大体いつも真っ直ぐ帰ってるのに、こんなところにいるなんて珍しいな。
 巡音さんはしばらくそのまま立っていたが、やがて、こっちへやってきた。声をかけられそうな気がしたので、俺は片方の耳からイヤフォンを抜いた。

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/08/15 23:20

ロミオとシンデレラ 第二十五話【遊園地でのクオ】

 とまあ、そういうわけで、俺たちは四人で遊園地に行くことになった。巡音さんは四人で行くという話を全然聞いていなかったらしく――ミクの奴、絶対わざと伏せてたな――呆然としていた。更に俺の方はレンに妙なことを言われたが、真面目に相手をすると俺が精神的に疲れそうだったので、適当な返事だけしておく。
 遊園地につくと、ミクはさっそく絶叫マシンに乗りたいと言い始めた。巡音さんの方は引きつっている。……さすがに、少し可哀そうな気もする。ミク、お前は本当に友達のことを思ってやってんのか? 単に面白がっているだけだったりしないよな? とはいえ、ミクに協力を約束させられている身なので、ミクの言葉を後押しする。これでまだ話がまとまらないようなら、俺が何がなんでも絶叫マシンに乗るぞと強行することになっている。……ミク、お前は鬼か。
 驚いたことに、レンはさっさと巡音さんの相手を引き受けてしまった。予定どおり……というか、ミクの作戦どおりなんだが……。あいつに一体どんな心境の変化があったんだ。
 何がどうなってるのかよくわからなかったが、俺はそのままミクと一緒にジェットコースター乗り場へと向かった。作戦は成功と言えるが……ミクの思惑どおりというのが、どうにも面白くねえ。
「予想以上に上手くいったわ」

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/10/20 19:00

アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十二話【遊園地でのミク】

 わたしの立てた作戦は、概ね成功したと言えるわ。リンちゃんも鏡音君も、遊園地に行くことをOKしてくれたし。クオは相変わらず「上手くいくわけないだろ」って態度だけど、それは教室の二人を見てないからよ。ちゃんと仲良くなってきてるんだから、後もうちょっとで、いい感じになれるわ。間違いない。
 リンちゃんの服を買うという名目で、わたしは久しぶりにリンちゃんとショッピングに出かけた。ミニスカートも薦めてみたけれど、残念ながらこれに関してはOKしてもらえなかった。うーん、残念。可愛いのに。
 日曜日、わたしは支度をして――髪は今回は全部結い上げた。機械とかに絡まったら危ないしね――リンちゃんたちが来るのを待った。ちなみに、リンちゃんにクオと鏡音君が一緒ということは話していない。だって、事前に話したら逃げられかねないもの。
 やってきたリンちゃんは、鏡音君とクオが一緒という事実にびっくりしていたけれど、混乱している間に、わたしはリンちゃんの手をつかんでさっさと車に乗り込んだ。鏡音君とクオも後からやってくる。さ、行くわよ。
 遊園地に着くと、わたしは予定どおり、ジェットコースターに乗ると言い出した。リンちゃんはおそらく嫌がるだろうから――あの手のものは苦手なのだ――そうしたら、クオにコースターに乗りたいと、強く主張してもらうことになっている。え? クオを悪役にするなって? だって、クオが言った方が威圧感が出ると思うのよね。わたしが言うよりは。

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/10/20 19:03

ロミオとシンデレラ 第二十二話【わたしには何の取り得もない】

 週末には、包帯が取れてわたしの足は元通りになった。そして週が開けると、中間テスト。特に難しいということもなく、簡単ということもなく、いつもどおり。
 ハク姉さんとは、まだ話せずにいる。同じ家に住んでいるのに、二週間近く顔をあわせないというのは奇妙に思えるかもしれない。でも、ハク姉さんが自発的に部屋の外に出てくることはまず無いので、会おうと思うとわたしの方から会いに行かなければならないのだ。他の家族がいる時だと声をかけづらいし、様子を見て声をかけても寝ているのか、返事がないことばかりだった。
 そんなわけで、わたしはハク姉さんの顔を見ることができなかったし、なんであんなに飲んでいたのかを訊くこともできなかった。まさか、避けられているということはないと思うけれど……。
 一方で、鏡音君とは前よりもずっと話せるようになった。学校内だし、そんなに長い時間ではないけれど。
 中間テストが終了し、ミクちゃんに買い物に連れ出され――ミクちゃんはかなり執拗にミニスカートを薦めてきたが、さすがにそれは断った――着ていく物を買い揃えた。ミクちゃんはものすごく張り切っていて、ちょっと気おされてしまったけれど、ミクちゃんと一緒に買い物をするのはとても楽しかった。

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/10/08 18:36

▲TOP