時給310円さん

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Happy Birthday, Dear Our DIVA ! > ブクマでつながった作品

Happy Birthday, Dear Our DIVA !



オッス、オラ鏡音レン! それじゃまた来週!


……おーい、そこまでドン引きしなくたっていいだろ。軽いジョークじゃねえか、傷つくなぁ。
まあ、いつも通りの鏡音レンだよ。ひとつよろしく。

今日はミク姉ぇの誕生日。我が家は朝から準備でみんなてんてこ舞いだ。
メイコ姉ぇとルカ姉ぇは今夜のごちそうの下ごしらえ。
リンはリビングの飾りつけ。
え、俺?
リンと同じく飾りつけ係を拝命した。
しかし俺は諦めなかった。
一瞬の隙をついて命がけの大脱出に成功。こうして自由を勝ち取ったわけだ。

「ちょっとレンー? どこいったのよ、もー!」

なんか聞こえたけど、気にしないキニシナイ。
今の俺は飾りつけなんかより、もっと重要な使命があるのだ。
すなわち、そう。

ミク姉ぇに渡すプレゼントを、まだなーんにも考えてねえ。

我が家の女連中は、先週の週末に街で買ってきたみたいだ。
それだけならまだしも、今夜はお隣さんも兄妹揃ってプレゼント持参で来ることになってるのだ。
これってヤバくね?
俺にだって家族としてのプライドがある。お隣さんでさえプレゼントを持ってきてるのに、家族の俺が手ぶらなんて事態は、何としても避けなきゃいけないんだ。
え? なんでリンたちと一緒に買いに行かなかったのかって?
仕方なかったんだ、先週末はあと少しでドラ○エ9がクリアできそうだったもんだから。
とにかく、俺は何としても夜までにプレゼントを用意しなきゃいけないんだ。
何がいいだろう。そうだな……。
考えながら自分の部屋のドアを開ける。


ガチャ


「愛は陽炎、愛は泡沫の夢……近づけど縮まらず、手を伸ばせど掴めず……」

窓辺に腰を下ろし、アンニュイな表情で外を眺める長身の男がいた。
カイ兄ぃだ。
盛りを過ぎた夏の日差しを受け、前髪とまつげが虹色の光沢を放っている。
物憂げにそらんじる言葉は、何かの詩だろうか。

「……レンか。お前に聞いても分からないだろうが、今の俺は藁にもすがる思いなんだ」

ゆっくりと俺に視線を向け、儚げに口を開く。

「愛ってなんだ」
「その前になんで俺の部屋にいるのか説明しろコノヤロウ」

俺が至極もっともな抗議を述べると、フウとやるせない溜め息をつく。

「やはり、分かるはずもないか……いや良いんだ、お前はまだ若い」
「聞けよ」
「今日という特別な日、ミクに何をプレゼントしたらいいのか、俺はずっと考えていた」
「自分の部屋で考えろ」
「果てしない苦悩の末、俺がたどり着いた究極の答え。それが―――― 愛だ」

誰か警察、いや救急車を呼んでくれ。

「ところが、その愛というものが一体なんなのか、俺にはサッパリ分からない……フフフ、お笑いぐさじゃないか」
「ちっとも笑えないぞ俺は」
「だから俺は旅に出ようと思う」

えらく話が飛躍したな。
晩ごはんまでに帰って来れるのかよ、えらくスケールの小さな旅になりそうだな。
立ち上がり、ドアを出て行くカイ兄ぃの背中に、俺は呼びかけた。

「どこに行くんだよ」

カイ兄ぃはゆっくりと振り返り、白い歯を輝かせて答えた。

「愛を見つけに」


いや、行き先を聞いてんだよ。








やってきたのは商店街だった。
いや、別に心配だからついてきたわけじゃねーよ。俺もプレゼント探さなきゃいけなかったから、まあ利害の一致ってやつだ。

「で? 八百屋に愛があるのか?」

フラフラと八百屋に入ろうとしているカイ兄ぃの背中に呼びかける。

「分からない」
「分からないって。まずもって関係ねぇと思うぜ?」
「一人で悩んでもダメだ。分からなければ素直に他人の力を借りることも、また英断だと俺は思う」

言ってる事はもっともなのだが。
愛を探す旅のどこらへんに、八百屋の力が必要なんだろう?
店先では、いかにも肝っ玉母さんといった風のおばさんが、威勢の良い呼び込みの声を上げていた。

「へーい、らっしゃいらっしゃい! お、そこの格好良いお兄さん! このキャベツ安くしとくよ、買ってかないかい!」
「いただきましょう」

何の躊躇もなくキャベツを購入し、そして尋ねる。

「代わりと言っては難ですが……俺に愛を教えてほしい」

なに八百屋のおばさんナンパしてんだテメエ!
おばさんは一瞬あっけにとられた様子だったが、すぐに豪快な笑い声を上げた。

「まあ、やだよぅこのお兄さんったら! こんなおばちゃんからかって何が面白いんだか!」
「からかってなどいない。俺は知りたいんです、愛を」
「ははは! ホントに面白い子だね!」

仕方なく、俺は間に割って入る。

「すみません。うちの兄貴、この暑さでちょっと頭が茹ってるんです」
「おやまぁ弟さんかい? 兄弟揃って美形だね、あと4,5年もしたら女泣かせになるんだろうねぇ」
「ははは……どうもお騒がせしました」

カイ兄ぃの腕を引っ張って立ち去ろうとするが、カイ兄ぃはめちゃくちゃ頑張ってその場に踏みとどまろうとする。

「くっ、離せレン! 俺は愛を確かめなければならないんだ!」

あーくそ、穏便に事を済ませようとしてるのに分からない兄貴だな!
店先で取っ組み合っていると、おばさんはやれやれと息をついて言った。

「何だか分からないけど、お兄さん、えらく真剣だねぇ」
「もちろんです」
「愛、ねえ……こっ恥ずかしくてマトモに考えたこともなかったけど。そうさね、愛って言やあ、これかね」

そう言っておばさんが手に取ったのは、にんじんだった。

「ニンジンに限ったことじゃないけど、野菜は愛の結晶さね。農家の人がたっぷり愛情こめて、お日様の祝福をたっぷり浴びて、ベータカロチンから鉄分まで、大事な栄養が宝箱みたいにたっぷり詰まってる」
「おおぉ……」
「八百屋だからそう思うのかも知れないけど、野菜こそ愛さね。どうだいお兄さん、このニンジン」
「ぜひ頂きたい」

カイ兄ぃはまたしても躊躇なく、ニンジンを購入した。







「……で? どうすんだよ。ミク姉ぇにそのキャベツとニンジン、プレゼントすんのか?」
「違うぞレン」

カイ兄ぃは手にした野菜を惚れ惚れと眺めながら言った。

「これは、愛だ」

俺は事の経緯を知ってるから、まだ理解できるけど。
いきなりキャベツとニンジン渡されても、ミク姉ぇはそれが愛情こもったプレゼントだと思わねえぞ、たぶん。
まあカイ兄ぃのプレゼントだから、どうでもいいけど。さてと、そんなことより俺も自分のプレゼント、早く決めないとな。
昼さがりの商店街をブラブラしていた、その時だった。

「あー、にんじん」

背後から幼い声が追ってきた。
振り返ると、小さなダンボール箱を抱えた女の子が、こちらへ走って来る。
小学校の低学年くらいかな? 女の子はカイ兄ぃの持っているニンジンに、目をキラキラと輝かせる。

「にんじん。ごはん」

さすが小学生、言ってることが意味不明だ。
ふと、女の子が抱えているダンボールの中が目に入る。
小さな子ウサギが入っていた。

「ウサギか」

カイ兄ぃも気が付いたようだ。腰をかがめてダンボールを覗き込む。
なるほどね、ウサギのごはんって意味で、ニンジンか。ピーターラビットだな。

「そのウサギ、どうしたんだ?」
「ミミが生んだのー」
「ミミ? え~と……学校で飼ってるウサギとか?」
「そー」

どうも情報が断片的で困る。
しかし本人は全く意に介した風もなく、マイペースで話を進める。

「そのニンジン、ちょーだい」

何の遠慮もない頼み方が、いっそ心地よかった。
カイ兄ぃは手にしたニンジンを眺め―――― 真剣な目で女の子を見下ろす。

「残念だが、これは俺の愛なのだ。これを手放しては、俺は愛を失ってしまう」

嫌な予感がした。

「ほしいと言うならあげてもいい。その代わり」

おい、まさか……。

「君の愛がほしい」


アウトオオオオオォォォォォーーーーーーーーーーッッッ!!!


熟女の次は幼女かよ、ストライクゾーン広ぇなオイ!
俺はカイ兄ぃの手からニンジンを奪い取ると、押し付けるように女の子に渡した。

「ほら、やる! やるからさっさと家に帰れ!」
「ホント? ありがとー」
「何をするレン、それは俺のあi」
「黙れこの変質者!」

またも取っ組み合う俺達。
女の子はペコリとお行儀よく頭を下げると、タタタ、と走って行く。

「くっ、離せレン! 俺の愛が、俺の愛があの子に奪われたー!」
「だからアウトっぽい発言すんじゃねー! ぽいって言うか、完璧アウトだそれ!」

体格で遥かに勝るカイ兄ぃを食い止めるのはマジでしんどいが、俺は必死に耐えた。
くそ、なんでこんなに頑張ってんだ俺は?
何とかあの子の姿が見えなくなるまでと思い、さらに力を込めて踏ん張ったその時だった。


キキイィーーーッ! ガチャッ 「きゃー」 バタンッ ブロオオオォォォ……


けたたましいブレーキの音。
女の子のすぐ脇に白いバンが停車した。
ドアが開き、中から男の手が伸びて、女の子を車の中に引きずり込む。
で、そのまま走り去って行った。

「………………」


え~と。
何が起こったんだ?


投稿日時 : 2009/09/01 22:45    投稿者 :時給310円

ヘルプブクマでつながった作品とは?

語り部のマヨイガ

語り部のマヨイガ
ようこそいらっしゃいました。このたびお聞かせするのはとても美しい魔女の物語です。
山の麓の森の置く深くに青く長い髪を持つ魔女が住んでいたそうです。魔女はとても美しく、その姿を見た者は誰しも魔女に恋してしまうそうです。麗しき魔女の歌声を耳にしたが最後、魔女の虜となった迷い人は誰一人として帰らなかったそうです。
ある時、また一人迷い人がやってきたそうです。その迷い人は、金の髪をひとつに束ねた少年だったそうです。そしてその迷い人は例の如く青い髪の魔女に出会い、恋に落ちたそうです。迷い人は魔女と共に楽しく日々を過ごしたそうです。魔女と過ごすうちに迷い人が虚ろに思い出すのは痛みと衝撃、鈍っていく体の感覚、そして、泣き叫ぶ大切な人の声。つまり、死ぬ間際の記憶でした。ですが、迷い人はその記憶すら忘れてしまったそうです。そして、二度と帰る事無く歌を歌う魔女の傍に居続けたそうです。
 山の麓の森の奥深くたった一人で魔女が住んでいたそうです。時たま、人は訪ねてくるのですが、生きている人間は一人として訪ねて来ることは無かったそうです。迷い人は自身の命が尽きたことに気づかぬまま、魔女の傍に留まり続けたそうです。そんな迷い人のため、魔女は延々とたった一人で歌を歌い続けたそうです。

文鳥さん

文鳥さん

2009/04/03 12:35

Fairy tale 1

 ある晴れた日の昼下がり。
 ミクは姉と共に本を読んでいた。しかし、その本と来たら難しい言葉ばっかりで、十六歳のミクには理解できないものがあまりに多すぎた。次第に、木陰の木漏れ日の暖かさと頬をなでる風の涼しさに、夢の世界へと引き込まれていった…。
 ふと目を覚ますと、姉のほうも眠ってしまったらしい。退屈になってしまった、とミクがあくびをしているところを丁度よく、何かが横切っていった。
 茶色のチョッキ、金と銀のバッジとチェーン、それに兎の黒い長い耳を付け、ズボンにつけたチェーンにはふわふわとしたウサギの尻尾のような飾りがついている。その容姿と懐中時計を持ってあわただしくかけていく自分と同じほどの年齢の少年は、ミクの好奇心に火をつけた。
 気付かれないように気をつけながら、少年の後をついていく。時折不安そうに辺りを見回したり、泣き出しそうな表情になりながら、少年はそう早くもない足で走っていた。どこか自分に似た容姿をした少年は、端正な顔立ちで、格好いいというよりかはかわいらしいというような雰囲気だ。小柄な少年は白いワイシャツを着ているが、どうもサイズが合わないらしく、手のひらが出てきていない。出ているのは指の先っちょだけだ。

リオンさん

リオンさん

2010/02/19 23:02

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