つんばるさん

つんばるといいます。世の中のすみっこでしがないモノカキやってます。

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【カイメイ支援】 PASSIONAIRE 【ver.text 03】

yanagiPの「PASSIONAIRE」が好きすぎて、ティンときて書いた。
「PASSIONAIRE」をモチーフにしていますが、yanagiP本人とは
まったく関係ございません。
ぼんやりとカイメイです! 該当カップリングが苦手な方は
ご注意ください。

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【カイメイ支援】 PASSIONAIRE 【ver.text】



3.

 ステージから退場して、からも、動悸は止まなかった。ほんとうなら楽屋に行って落ち着くところだが、そのまま舞台裏に留まって、機材や楽器を片づけながら退場してくる演奏スタッフたちを待つ。サックス片手に舞台裏に入ってきた件の彼を見て、いてもたってもいられなくなった。にこやかな笑顔を振りまいてスタッフに挨拶し、私を見つけると満面の笑みで、めーちゃんおつかれー、と声をかけながら近寄ってきた。ああ、やっぱりアレ、夢じゃなかったのね。
 ていうか!
 がっ、と、その彼のアイデンティティともいえる青いマフラーを握りしめ、思わず叫んでいた。
「なんであんたがいたのよ――!」
「おっ、怒んないでめーちゃん! マフラー引っ張んないでちょっとっ……!」
「なんで? なんでいるのよ!」
「だから、めーちゃ……揺らさないで、くるしっ……!」
「めーこさんめーこさん、死ぬ、かいとくんが死ぬ」
 はいはいやめてやめてー、と、マスターのぬるい静止が入った。
「マスター、どーいうことですか!」
「どうだったあ?」
「どうって、そりゃ歌詞忘れそうになるくらいびっくりしましたよ! なんでカイトが!」
「だから、かいとくんにこれをやってほしくて、友達んとこに預けたんだってば」
「はあ!?」
 思わずケンカ腰の口調で返してしまったが、どうやらこういうことらしい。
 マスターがこの曲のオケを作っている時、件の友人が「全部KAITO」というタグのついた動画を見せてくれたらしい。マスターの友人はたしかにオリジナル作品の作曲はできない。が、有名な曲のオケの一部をボーカロイドソフトで作っており(いわゆるカバーというやつだ)、近々アカペラ演奏動画も作る予定だという。そこで、マスターも自分の曲でカイトを「楽器」として使ってみたいとおもったそうだ。しかし、ウチのマスターは「歌唱」用の調声はできても、「楽器」としての調声は難しかった。そこで、カイトが単身修行に出された、というわけである。
「めーこさんも喜ぶかとおもったのに」
「そういうことは事前に言って下さい!」
「え、かいとくんから聞いていないのかい? 私がネット繋ぐごとに通信していたくせに?」
 ばれている。
 内容まではきかれていない(はずだ、たぶん)とはいえ、思わず赤面してしまった。きょとんとした顔でさらっと爆弾を投下するのがウチのマスターだ。赤面したままの私が二の句を継げないでいると、マスターはカイトに向き直った。
「かいとくん、めーこさんに言っていなかったの?」
「マスターが言ってなかったみたいだったので、てっきりサプライズのつもりなのかとおもって……はっきりは言いませんでしたけど」
 そんなつもりはなかったのだけれどなあ、と、マスターは首をひねった。かいとくんがぶっつけ本番だったから、演奏スタッフだけで調整したのだけど、めーこさんも混ぜた方がよかった? でもめーこさん本番前は休まないと声上擦るから……と、ぶつぶつ独り言モードに入ったマスターの声を上の空でききながら、私はカイトに噛みついた。
「はっきりは言ってない、って、あんたねえ、一言もきいてないわよ!」
「おれは言ったよ?」
「き、い、て、な、い!」
「ちゃんと言ったよ! 『おれもがんばるから、めーちゃんもがんばって』って!」
 そういえば、本番前にそんなことを言われた気もする。でもそれは、「おれも(お手伝いを)がんばるから、めーちゃんも(ステージを)がんばって」という意味ではなかったのか――いや、違う。
 おれも演奏をがんばるから、めーちゃんも歌うのをがんばって、だったのだ。
「でっ、でも、ライヴはちゃんと見られないって……!」
「だって、ステージで演奏していたら、そんなに頻繁にめーちゃんのこと見ていられないじゃない。見えたって、いいとこ後ろ姿くらいでしょ」
 そりゃそうだ。たしかに、演奏しながらでは、ライヴを「ちゃんと」は見られない。
「ま、おれは前に出たから顔までばっちり見れたわけだけど。めーちゃん、おれが吹いてるとき、ずっと見つめててくれたの、嬉しかったなあ」
「ばっ……! べ、別に、あんたがあんなに楽器吹けるなんて知らなかったから、っ!」
「上手だったでしょ? 格好良かった?」
 格好良かった、と、おもってしまった。
 ――なんて、こんなへにゃへにゃした笑顔の奴には言ってやらないんだから! でも、これだけは認めてやらねばなるまい。
「……すごく、良い音だったわ。私まで熱くなった。すごくドキドキしたわ」
「ありがと……め」
「おねーちゃああああん!」「ねえさまあああああああ!」
 カイトが何か言いかけたところで、ミクとルカが舞台裏に駆けてきた。
「すっごく! よかったよお!」「とっても! 興奮しましたわ!」
「あ、ありがとう、ミク、ルカ……」
「やー、すごかったよメイコ姉! こりゃ、ロリ声じゃあカバーできないね! 本気でカバーしたくなったよ!」
「しかし、メイコ姉の親衛隊ってすごいな……もうメイコ姉の声よりコールで耳が痛かったぜ……」
 今だ熱気冷めやらぬといった表情の弟妹たちは、口々に感想を述べている。若干蚊帳の外になったカイトが、
「ね、ねえねえ、お兄ちゃんは、どうだった?」
「あら、青いの。いつからそこにいたのです?」
「ずっといたよ! おれ、ステージで演奏してたでしょ!」
「演奏? カイト兄が? してたっけ?」
「してたよ! 間奏でソロまで吹いたのに! リンちゃんひどい!」
「え~、ミクも全然気付かなかったあ。ミク、お姉ちゃんばっかり見てたからね!」
「うっ……ミクまで……! れ、レンくんは」
「ゴメン、 オレ間奏中は親衛隊に踏まれかけてて、それどころじゃなかったや」
「そんなあ……!」
 ……若干どころではなく、蚊帳の外になってしまった。そんなカイトを、マスターが同情と憐みの目で見ている。マスター、せめて慰めてあげてください。そんな風に舞台裏の隅にわらわらと群れる弟妹たちを、スタッフが邪魔そうな目で見ている。ステージ撤去がはじまったのだ。あまり大勢でたむろしていると迷惑になってしまう。
「ほら、そろそろ出ないと。私は打ち上げがあるから、今日はみんなで仲良くご飯食べるのよ」
「わかっていますわ」「はーい」「じゃあ、帰りにみかん買っていこう!」「あっ、リンばっかりずりいぞ!」
「あ、おれも打ち上げ出るから遅く……って、ちょっとみんな! きいてえええぇぇ!」
 カイトの叫びを背に、弟妹たちはさっさと舞台を後にした。え――、とロングトーンしたままのカイトの肩に手を置くと、カイトはあからさまに項垂れた。
「そ、そんなに目立たなかったかなあ、おれ……」
「そんなことはないとおもうけれど……」
 でも、さすがにこうも一様に(本気かネタかわからないが)注目されないというのも、いささか不憫になる。
「大丈夫よ、カイトはちゃんと格好良かったわ。見惚れちゃうくらい」
 いつもより若干低い位置にある(しかし、それでも手を伸ばさないと届かない位置にある)頭を撫でてやると、途端に顔が上がった。目がまん丸で、顔は赤くて、驚きと喜びの混じったような顔で、カイトはじっと見つめてきた。
「な、なによ」
「ほん、と、に?」
「なにが?」
「ほ、んとに、アレ……あの、本番中、見惚れてた、の?」
 頬に熱が集まる。先ほど自分の言ったことを反芻して、穴にでも埋まりたい気持ちになる。ポロッと出たにしては、恥ずかしすぎる本音ではないか。
「あのっ、」
「嬉しい」
 否定しようとした言葉を遮って、がばりと抱きついてくる。こんなところで抱きつくな、と言えば、だって嬉しいんだもん、と返ってくる。ああ、きっと今コイツは、喜色満面というか、情けないほどだらしない笑顔なのだろうな。そして、私はと言えば、きっと顔じゅう真っ赤で、もしかして耳まで赤くなっているかもしれない。
「ね、も一回言って」
「は? 何を――」
「かっこよかった、って、言って?」
「何、調子乗って……!」
「おねがい」
 ぎゅうと抱きしめる力が強くなる。これ以上ここでこの態勢でいるのはさすがに恥ずかしいし(だって、さっきからなんだかスタッフたちの視線が気になる!)、どうせ一度言ってしまった言葉だ。私は、意を決して、それでも恥ずかしさが先行しているのでカイトにだけ聞こえるくらいの音量の声を出す。
「……格好良かった、よ」
「えへへ、ありがと」
「も、もういいでしょ!」
「うん。あ、おれも言わせて? ――メイコは、すごく可愛かったよ」
 そう言い残すとカイトは、私をぱっと解放し、るんるんといつもより軽い足取りで、舞台撤去の手伝いをはじめた。私はと言えば、スタッフの冷やかすような目線に耐えながら、硬直していた。
「……バカイト」
 精一杯の悪態も、これが限界。
 ――あんたのせいで、ライヴ中の「あの」熱が、戻ってきちゃったじゃない……!
 そんな風に責任転嫁しなければ、熱に浮かされたまま溶けてしまいそうな気がしたのだ。

yanagiPの「PASSIONAIRE」が好きすぎて、ティンときて書いた。
今度こそ本当に 怒 ら れ た ら ど う し よ う … … !
yanagiPにはもう頭があがりません。だいすきです。

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なんという乙女メイコ。略してオトメイコ! ツンが足りないめーちゃんでもいいじゃない!
そしてカイト俺と代わ(ry

前のバージョンで、ロミシンのときと同じように、楽屋に行けます。
おまけという名の、ここでは恥ずかしくて多く語れない作者の胸の内がそっとおいてあります。
それでも読んでやるぜって方は前のバージョンにどうぞ!

投稿日時 : 2009/06/13 02:24    投稿者 :つんばる

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