目白皐月さん

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ロミオとシンデレラ 第三話【クオの困惑】 > ブクマでつながった作品

ロミオとシンデレラ 第三話【クオの困惑】

 その日の昼、ミクからメールが入った。「放課後ちょっと相談したいことがあるから、いつもの喫茶店に来てね」と書いてある。一緒に住んでいるんだから、わざわざ俺を呼び出さなくてもいいと思うんだが。
 ミクは俺の従姉だ。俺の両親は現在仕事で海外赴任中で、俺は父親の兄である、ミクの父のところに中三の時から預けられている。同い年のミクは、外見はすごく可愛い。いや実際、そこらのアイドルなんか目じゃないぐらいに可愛い。スカウトが来ないのが不思議なぐらいだ。でも性格の方はというと……。
「あっ、クオ!」
 放課後、待ち合わせ場所の喫茶店で俺を見かけたミクは、笑顔で手をぱたぱたと振った。
「よっ」
 ミクの向かいに座り、メニューを眺める。十月に入ったとはいえ、今日は暑い。注文に来たウェイトレスに、アイスコーヒーを注文する。ミクはアイスココアを頼んだ。
「で、なんだ? 相談したいことって」
「あ、うん。あのさあクオ、鏡音君と仲いいよね?」
「なんだよいきなり」
 レンは高校に入ってからの友人で、まあ、親友と呼んで差し支えない仲だ。ちょっと何を考えているのかわからないところがあるが、基本的にはいい奴だと思う。
「調査よ調査。クオ、鏡音君って、今つきあっている人はいる?」
 はあ? なんでミクがレンの交友関係を気にするんだ。と思いつつ、律儀に答えてしまう自分が悲しい。
「今はいないはずだけど。去年の今頃に彼女と別れたって聞いてから、新しいのができたという話は聞いてないし」
 この前の学祭の時も、来ていたのはお姉さんだけだった。彼女がいたら連れてくるだろう。
「じゃあ今フリーなんだ。ね、前の彼女と別れた理由って何?」
「なんでそんなこと訊くんだよ」
「だって知りたいんだもん。浮気性だったりすると困るし」
 誰が困るんだよ。
「なんか……相手の子に別に好きな人ができたらしい。学校が違うからつきあいの継続が難しかったんじゃないのか。詳しいことは聞いてないから俺も知らない」
「じゃ、浮気とか暴力とかじゃないのね。まあ、真面目そうだし大丈夫だと思ったけど。これならOKだわ」
 ミク……お前は、テレビの人生相談の見過ぎじゃないのか?
「何がだよ。おいミク、自分一人で納得してないで、俺にちゃんと説明しろ」
 ここで、俺はある可能性を思い当たった。
「なあ、ミク……。お前、もしかして、レンのことが好きなのか?」
 ここでミクに「はい」と答えられたら、俺はレンとミクの仲を取り持たなきゃならないのか? そりゃ、レンなら彼氏としても充分ミクと吊り合うだろうが……正直、その光景を想像したくない。……あいつぐらいなんだよ。俺に「ミクを紹介してくれ」って言って来なかったの。
「え? 嫌だ違うわよ」
 ミクはくすくす笑いながらそう言った。この笑い方からすると……本音だな。ごまかしてるわけじゃなさそうだ。うん。
 ……って、なんで俺はほっとしてるんだ?
「じゃあ何が『これならOK』なんだ」
「鏡音君とリンちゃんの仲を取り持ってもOKってこと」
 ……はい?
「どこからそういう話が出てくるんだ」
 リンちゃん……巡音さんのことか。ミクのちっちゃい頃からの仲良しだ。俺はあんまり話したことがないからよく知らない。ミクとはタイプが違うが綺麗な子で、二人で並んで歩いているとかなり目立つ。まあ、「高嶺の花すぎて話しかけがたい雰囲気」でもあるんだが……。巡音さんは巡音グループのトップの娘、ミクはミクで初音コンツェルン社長令嬢で、どちらも筋金入りのお嬢様だから仕方ないかもしれんが。
 え? 俺? 俺は別にそんな大層なご身分じゃないですよ。うちの父親は、一族の会社を嫌がって飛び出してった変わり者だし。もっとも家族としての縁を切ったわけじゃないから、今、俺はここにこうしているわけだけどさ。
「今日ね、リンちゃんと鏡音君が話をしてたの。それを見てわたしはぴんと来たのよ」
「……何が」
 ああ、自分の声がどうしようもなく疲れているのが自分でもわかる。でも、ミクは気づいてくれない。
「あの二人は絶対お似合いだって!」
 こぶし握って断言するミク。俺はテーブルの上に突っ伏したくなるのを必死でこらえた。というかさあ……。
「なんでそこでお前が盛り上がるんだよ」
「え~、だって、高校生活勉強ばかりじゃ淋しいじゃない? リンちゃんが彼氏を作るチャンスをものにしてあげるのが、親友の務めってものでしょ?」
 どういう理屈だ、それは。つーか、余計なお世話って言葉を知らんのか。
「お前だって彼氏いないじゃないかよ。他人の世話焼く前に、自分をどうにかしたらどうだ?」
 俺がそう言うと、ミクは怒り出した。
「しょうがないじゃない! わたしにつりあうようないい男がいないんだから!」
 お前の基準が厳しすぎるんだよ、とは、口が裂けても言えないな、こりゃ。というか、彼氏にしたい男の条件が「世界で一番お姫様って扱いをしてくれる人」ってのは一体何なんだ。そんなこと言ってると、一生彼氏ができんぞ。俺はむっつりした気分で、アイスコーヒーを一口啜った。
「それにしても……お前それだけの理由で、レンに巡音さん押しつける気か」
 巡音さんは確かに可愛いけど、俺だったらつきあいたいとは思わない。なんつーか、雰囲気が暗いんだよ。正直、一緒にいたら疲れそうだ。
「クオ……それ、どういう意味?」
 げ、口が滑った……ミクの目が据わっている。俺の背筋を冷たいものが流れ落ちた。
「ミ、ミク……そんな怖い顔するな」
「『レンに巡音さん押しつける』って、どういうつもりで言ってるの? リンちゃんはわたしの友達よ? クオは、リンちゃんをそういうふうに思ってるの?」
 う……本音を言ったらミクに確実に殺される。何とかごまかさないと。
「い、いやだからさ……レンの気持ちはどうなるんだよ? お互いの気持ちが大事だろ。レンにせよ巡音さんにせよ、好みは逆かもしれないぞ」
 必死で言い訳を探した結果、出てきた台詞はこれだった。
「それは……まあそうだけど……」
 不承不承という様子でミクはそう言った。どうやら、最悪のルートは免れたらしい。
「でも、うまくいくかもしれないでしょ?」
 ミクは思ったよりもしつこかった。何をそんなに必死になっているんだろう。俺にはさっぱりわからん。
「可能性がないとは言わないが……」
「じゃあやるわよ」
「何を」
「二人の仲を取り持つの!」
 勘弁してくれ。何で俺がそんなことしなくちゃならないんだ。
「クオ、手伝ってくれるわよね?」
 そんな面倒なことに関わりあうのは嫌だ。けど、そう言ったらミクが怖い。何をされるかわからない。
「……わかったよ。で、俺は何すりゃいいんだ。言っとくけど、レンを巡音さんとつきあうよう説得するのは無理だぞ」
「そんなこと頼まないわよ。あのね……」
 嬉々として「作戦」とやらを話し出すミク。何が楽しいのか知らないが異常にはりきっている。
 すまん、レン。俺の日常の平穏のためにも、お前は巡音さんとうまくいってくれ。

ミクオを書くのはこれが初めてです。あ、それを言ったらハクもか。
この話の場合、主役二人が序盤はあまり積極的に動いてくれないので、どうしても両サイドで背中を押してやる人が必要なんですね。レンサイドのそのキャラクターを誰にするのかはかなり悩んだんですが、最終的にミクオになりました。カイトの年齢を下げることも考えたんですが、どうもイメージとあわなくて……。

余談ですが、ハイテンションなミクは書いていて楽しい。

投稿日時 : 2011/07/21 18:44    投稿者 :目白皐月

ヘルプブクマでつながった作品とは?

アナザー:ロミオとシンデレラ 第二話【ミクの興奮】

 その日の朝、登校したわたしの目に入ったのは、信じられないような光景だった。何かって? リンちゃんが、同じクラスの鏡音君と話をしていたのっ! これが驚かずにいられますか!
 ……と言うと、大抵の人は「それのどこが信じられないわけ? 同じクラスなんだから話ぐらいするでしょ?」って思うかもしれない。けれど、リンちゃんに関してはそれはありえないのだ。何しろリンちゃんは、がちがちにガードが固い。リンちゃんの育った家庭を考えると仕方がないんだけど、とにかくもう固い。相手が男の子だとそれはもっと顕著で。わたしはリンちゃんと幼稚園の頃からのつきあいだけど、小学校高学年になった頃から、リンちゃんは自分からは、全く男の子と話さなくなってしまった。じゃあ、話しかけられた時はどうかって? 大抵は口ごもっちゃってまともに返事ができない。わたしの家には現在、わたしと同い年の従弟のクオ――これはあだ名で、本名はミクオ――が同居していて、リンちゃんが遊びに来た時にクオと顔をあわせることもあるんだけど、やっぱり話せずにいる。
 わたしがリンちゃんにおはようと声をかけると、鏡音君は自分の席に戻って行ってしまった。
「ねえねえリンちゃんっ! 今話してたの鏡音君でしょ?」
「そうだけど」

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/08/05 23:36

アナザー:ロミオとシンデレラ 第四話【ミクの不満】

 わたしが立てた作戦は完璧だった。まず、わたしがリンちゃんを「映画でも見ない?」と言って家に呼ぶ。そして同じ日に、クオがやっぱり映画を口実にして、鏡音君を連れてくる。後はわたしとクオが喧嘩をする振りをして、二人だけ部屋に残して出て行ってしまうのだ。これで、リンちゃんと鏡音君が部屋の中で二人っきり、という、非常に美味しい状況ができあがることになる。
 クオはうまくいくわけないだろう、という態度を崩さなかったけれど、鏡音君を呼ぶことは呼んでくれた。なんでも、このために鏡音君の見たがっていた映画のDVDを買ったらしい。ありがと、クオ。
 わたしもリンちゃんに電話をかけて話をする。こっちは簡単だ。リンちゃんは基本的に、わたしの誘いは断らない。二つ返事でわたしの家に来ることになった。
 そして当日。わたしとクオは予定どおり、ホームシアタールームで鉢合わせして喧嘩した後、「話をつける」と言って、部屋を後にした。お二人さん、ごゆっくり。
「ところで、第一段階(二人を呼び出して、二人だけにする)はうまくいったけど、この後はどうするんだ?」

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/08/07 23:52

アナザー:ロミオとシンデレラ 第六話【檻の虎に太陽を見せて】

 クオの家で映画を見てから、数日が経過したある日。俺は学校の図書室で『RENT』のサントラを聞きながら、歌詞をチェックしていた。この前見た舞台は字幕がいいかげんで、話の意味を取りづらかったんだよな。そんなわけでネット通販でサントラを購入したんだが、歌詞カードがついていなかった。幸い、歌詞を全部載せてくれているウェブサイトがあったので、そこからプリントアウトしてきたけど。
 しかし、映画だとかなり曲がカットされていたんだな。「クリスマス・ベルズ」と「ハッピー・ニュー・イヤー」がカットされているのはもったいなさすぎる。映画じゃ表現しづらかったんだろうけど。
 曲を聞きながら、ノートに思いついたことを書き留める。この辺りは台詞が交差していて聞き取りにくいな……ちょっと一息入れるか。プレーヤーを止めて……あ。
 書棚の近くに巡音さんがいて、思い切り目があった。大体いつも真っ直ぐ帰ってるのに、こんなところにいるなんて珍しいな。
 巡音さんはしばらくそのまま立っていたが、やがて、こっちへやってきた。声をかけられそうな気がしたので、俺は片方の耳からイヤフォンを抜いた。

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/08/15 23:20

ロミオとシンデレラ 第二十五話【遊園地でのクオ】

 とまあ、そういうわけで、俺たちは四人で遊園地に行くことになった。巡音さんは四人で行くという話を全然聞いていなかったらしく――ミクの奴、絶対わざと伏せてたな――呆然としていた。更に俺の方はレンに妙なことを言われたが、真面目に相手をすると俺が精神的に疲れそうだったので、適当な返事だけしておく。
 遊園地につくと、ミクはさっそく絶叫マシンに乗りたいと言い始めた。巡音さんの方は引きつっている。……さすがに、少し可哀そうな気もする。ミク、お前は本当に友達のことを思ってやってんのか? 単に面白がっているだけだったりしないよな? とはいえ、ミクに協力を約束させられている身なので、ミクの言葉を後押しする。これでまだ話がまとまらないようなら、俺が何がなんでも絶叫マシンに乗るぞと強行することになっている。……ミク、お前は鬼か。
 驚いたことに、レンはさっさと巡音さんの相手を引き受けてしまった。予定どおり……というか、ミクの作戦どおりなんだが……。あいつに一体どんな心境の変化があったんだ。
 何がどうなってるのかよくわからなかったが、俺はそのままミクと一緒にジェットコースター乗り場へと向かった。作戦は成功と言えるが……ミクの思惑どおりというのが、どうにも面白くねえ。
「予想以上に上手くいったわ」

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/10/20 19:00

アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十二話【遊園地でのミク】

 わたしの立てた作戦は、概ね成功したと言えるわ。リンちゃんも鏡音君も、遊園地に行くことをOKしてくれたし。クオは相変わらず「上手くいくわけないだろ」って態度だけど、それは教室の二人を見てないからよ。ちゃんと仲良くなってきてるんだから、後もうちょっとで、いい感じになれるわ。間違いない。
 リンちゃんの服を買うという名目で、わたしは久しぶりにリンちゃんとショッピングに出かけた。ミニスカートも薦めてみたけれど、残念ながらこれに関してはOKしてもらえなかった。うーん、残念。可愛いのに。
 日曜日、わたしは支度をして――髪は今回は全部結い上げた。機械とかに絡まったら危ないしね――リンちゃんたちが来るのを待った。ちなみに、リンちゃんにクオと鏡音君が一緒ということは話していない。だって、事前に話したら逃げられかねないもの。
 やってきたリンちゃんは、鏡音君とクオが一緒という事実にびっくりしていたけれど、混乱している間に、わたしはリンちゃんの手をつかんでさっさと車に乗り込んだ。鏡音君とクオも後からやってくる。さ、行くわよ。
 遊園地に着くと、わたしは予定どおり、ジェットコースターに乗ると言い出した。リンちゃんはおそらく嫌がるだろうから――あの手のものは苦手なのだ――そうしたら、クオにコースターに乗りたいと、強く主張してもらうことになっている。え? クオを悪役にするなって? だって、クオが言った方が威圧感が出ると思うのよね。わたしが言うよりは。

目白皐月さん

目白皐月さん

2011/10/20 19:03

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