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ヘルプブクマでつながった作品とは?

天使は歌わない 06

青い髪と目をした、見目麗しい、歌うアンドロイド。 商品コード27720、機体名KAITO。 彼がやってきてからはやくも三日がたっていたが、近所の人にアンドロイドだと疑われることはなく、寧ろあちこち散歩して回るカイトの姿を見て「いい男捕まえてきたのね!」なんて羨ましがられることもしばしば。
 
そういう場合には大抵 「幼馴染の従兄弟の友達の兄貴のホームステイ先の息子が交換留学生としてやってきていたのだけれど滞在先の家族の娘が彼氏の妹とトラブルになって滞在しているにいられなくて仕方なく兄貴の友達の従兄弟の幼馴染という関係を頼りにやって来た男だ」 と説明している。間違いなく全員が聞き返す気力が失い、深く追求せずへえそうと生返事をしてくれるのでこの嘘は大いに役立っている。
 
長い大嘘の後で、私的に日がな一日プラプラしてる男が恋人なぞいくら見目がよくても御免だが、と言うと、いいじゃないヒモでもあの笑顔があれば、なんて言い返された。 確かにカイトの笑顔はアンドロイドとは思えない、甘い穏やかさが宿っている。見た目が精巧ということ以上に、その笑顔が周囲にアンドロイドと考えさせないのだろう。 私だってそうだ。時々、カイトが「一緒にいると厄介な不正ボーカロイド」だということを忘れている自分に気づき愕然とする。

雨鳴さん

雨鳴さん

2009/07/28 13:01

あなたと私だけの歌【終末ボカロ企画・pixvより】

 目を覚ましたとき、真っ先に目に入ったのは真っ赤な空だった。
 まるで世界が終わってしまうような不安を与える赤く染まった色に目を覚ましたばかりの私は手を伸ばし、そして手を伸ばしきる前、透明樹脂の冷たい感触が指に触れた。意識がはっきりと覚醒していく。自分を囲むのは狭い空間。まるで棺桶のような冷凍睡眠装置。ああ。とまだほんのすこし現在と過去とが入り混じった意識のまま、私は手元にあるスイッチをいくつか押した。ロック解除。かちかち、と自分を収納していた棺桶のようなこの装置のロックが外れる音を耳に届く。本来ならば自動で蓋も開くはずなのだが、長い年月を経たせいで蝶番が壊れてしまったのかもしれない、蓋はほんの少しだけ開いただけで止まった。
 ほんの少しの隙間から入り込んできた、記憶していた空気よりも酸素濃度の濃い、大気。
 重い蓋をゆっくりと持ち上げて外す。湿度も高いのだろう、ねっとりとした質量を有する空気が肌にまとわりつく。私は蓋を無理やりこじ開けて棺桶のような冷凍睡眠装置から起き上がり、外へと出た。
 風が、私の二つに結い上げた長い緑の髪を揺らして、通り抜けた。

sunny_mさん

sunny_mさん

2013/07/08 14:40

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