ねこかんさん

MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。

【カイメイ】 お兄ちゃん、お願い! 【KAITO生誕祭】  > ブクマでつながった作品

【カイメイ】 お兄ちゃん、お願い! 【KAITO生誕祭】 

    
女所帯である。必然的に女性陣が強い。
それは単純に数の差と、やはりそれぞれの性格の問題だろう。
カイトもレンもそれほど自己を主張するタイプではないので、基本的にこの家の主導権は女性側にあった。
まず、台所と家計と一家の平和を預かるメイコには男性陣どころか誰も勝てない。
生まれて4年で伝説の存在となりつつあるミクにも勝てない。
ロードローラーを自在に操る天才小悪魔リンにも勝てない。
ルカ様には、もう問答無用で勝てない。
勝とうともしないところが、カイトがカイト、レンがレンたる所以である。
そんなわけで普段からわりとワガママ放題を通している彼女たちだが、それでもたまには及び腰になる時もあるらしい。

                 *

「旅行?」
仕事に行く準備をしながらメイコが聞き返すと、何かをたくらんでいる時のにんまりとした笑顔でミクとリンがにじり寄り、うんうんと頷いた。
「ミク姉の仕事に付いて行く感じで、こうササッとうまい感じに!」
「わたし最近海外のお仕事あるでしょ?だから、一緒に行こうよって話になってね!」
「リンも行きたいよ海外―!」
「ちょっと待って、旅行ってまさか外国の話なの?」
「うん!ほらロスとか、上海とか?だっけミク姉?」
「お仕事っていっても次のライブの下見っていうか打ち合わせだし収録とかあるわけじゃないから、今回はけっこう自由きくんだよ!ね、いいでしょ?みんなで行こうよ!」
「ちょ、待って待って待って…」
すでに高いテンションではしゃいでいる妹たちに対し、メイコは落ち付けと手で制した。
「そんな簡単な話じゃないでしょ。みんなでって、ミクはともかく他のみんなの仕事はどうするの」
いくらPCの中の自分たちに物理的な距離や時間の概念は厳密に言えば関係ないとはいえ、一応あちらの世界の規則性に合わせた生活を営んでいるのだし、【マスター】からの用件だって個人ではなくまずこの家に連絡が来るのだから、全員が長時間家を空けるわけにはいかない。
「んーでもリンたち、その気になればどこででも仕事はできるじゃん!それにちょっとくらいアクセスできなくてもメンテ中とかバグとか不具合とかで凌げ…な、なんでもない」
メイコにじろりと睨まれ、リンは取り繕うように笑う。ミクが必死な様子で、
「お仕事をいい加減になんてしないよ!約束する!ね、リンちゃん!」
「ぅ、うん!しないしない!絶対しない!旅行先でもちゃんと仕事はこなすよ!」
妹2人にわぁわぁとまとわりつかれ、メイコは厳しい表情を幾分和らげた。
「……国内ならまだしも海外なんて、一体何日間のつもりなの」
「えっと、ホントはもっとがいいけど、一応10日間くらいかなぁって」
「…10日間も、いつものこの家からじゃなくてやり慣れてない出先で仕事するのよ?きっと想像してる以上に大変だし、上手くいかないことたくさん出てくるわよ?」
「…ん、わ、わかってる!大丈夫、できる!ね、リンちゃん!」
「うん!どーーーしてもどうしようもなくなったら潔く家帰るから!絶対!」
「…もし仕事に支障が出たら、きっと【マスター】に強制送還されるわよ?」
「そ、そうならないようがんばるから!ね、リンちゃん!」
「うん!頑張る頑張る!超がんばるよ!だからめー姉!」
おねがい!!と全力で縋りつかれる。メイコは天井に向かってため息を吐いた。
そこまで無茶な要求ではないとは思うが、それでも簡単に許可するには些か問題が多いのも事実だ。この子達が遊び呆けて仕事を疎かにするとは思わないけど、結局は不測の事態に備えて自分かカイトが常にしっかり目を配っていなくてはならないだろう。
自分たちにとったら、バカンスどころか普段より気の休まらない10日間になることは明白だった。
「……。仕方ないなぁ、もう」
何度目かの大きなため息と共に出されたその言葉に、2人は嬉しそうにぴょこんと顔を跳ねあげる。
「じゃあじゃあ!!!」
「今約束したこともう一度確認して、ちゃんと心構えして、あと出来る限りスケジュールも調整して、最後に」
「うん!」
「お兄ちゃんのお許しが出たらね」
それはもちろん当然のこと。
そのつもりでメイコが人差し指を立てて笑うと、ミクとリンはなぜか気まずい顔を見合わせた。
「……うー、あのね、おねえちゃん。あのね、えっと」
「カイ兄は、そのぅ…」
「…どうしたの?」
なぜこの流れでカイトが触れてはいけない要素のように扱われるのか。メイコは首を傾げる。
ミクは言いにくそうに口ごもり、ようやく意を決して声を張り上げた。
「あのね、今回はね、……じょ、女子旅なの!!!!」
聞き慣れない単語にメイコはポカンとする。いや、聞き慣れなくともそれがなんなのかは容易に想像がつくが。
「…じょしたび」
「うん、もちろんルカぴょんも一緒!女子会拡大版!女の子だけで海外旅行だよ~」
「……ちょっと待って、それじゃあつまり」
カイトとレンは、除外。……ということになる。
メイコは突如さっきと別の大問題が発生したことに、額を押さえた。
「そう、だから、お留守番はちゃんといるから心配ないって。もし何かあってもカイ兄かレンから直接連絡もらえるんだし!」
「って…もう2人に話したの?」
「ううん?これから!」
なぜか得意げに胸を張るリンにメイコは頭を抱える。
女性陣だけ10日間も海外旅行に行って、男2人は家で留守番?
…なかなかむごい。あの2人もさすがにそこでハイハイと首を縦に振るほど意志薄弱ではないだろう。
「そういう話なら、まずあの2人にちゃんと許可を取りなさい!可哀想でしょそんなの」
「だいじょーぶ。レンはこのレンマスターリンちゃんがちゃーんと説得してみせるから!リンの手にかかればレンなど赤子同然よ!ふはは!」
メイコは腰に手を当てて2人をじぃっと見渡した。
「じゃあ、カイトはどうするの?誰が説得するの?」
「え、そりゃあ めー姉が」
「私が言ったってあの人はイヤなことは絶対に認めないわよ」
そんなに心広くないんだから、とは兄の名誉のために口に出さないでおく。
「アイスいっぱい買って…」
「物で釣ろうなんてしたら余計疑われるだけよ。そういうセコいこっちの意図に気付いたら、それこそ絶対にうんとは言わないわ」
けっこう性格悪いんだから、とも兄の名誉のために口に出さないでおく。
「うえーカイ兄固いよー」
「じゃあ、どうしたらいいの?おねえちゃん」
妹に泣きつかれ、メイコは小さく息を吐いた。
「…ラクにすませようとしないで、ちゃんと正面からお願いしなさい。本当に行きたいって2人の気持ちが伝われば、カイトだって可愛い妹にそこまで意地悪はしないわよ」
正論で諭され、ミクとリンはうぅ、と言葉を詰まらせた。

玄関の扉が開く音がした。ルカが仕事から帰ってきたらしい。メイコは時計を確認して、慌てて立ち上がった。
「とにかく私はこれから仕事だからね。2人にはちゃんと話しておくこと。カイトは今日一日家にいるはずだから。あと、ルカにも事情を説明しておきなさいね。いい?」
「「はぁい」」
ちょっぴり不安げかつ不満げな表情で見上げてくる2人に、メイコは眉尻を下げて笑いかけ、緑と黄色の頭をぽんぽんと叩いた。
「帰ってきたらいい報告が聞けることを期待してるわ。旅行、楽しみね」
自分たちだけでなく姉もこの計画を喜んでくれていることに2人は目を輝かせ、大きく頷いた。



帰ってきた途端ミクとリンに捕まり事情を聞かされたルカは、困ったように言った。
「申し訳ないですが私にはカイトさんを説得できないと思います」
「えー、なんでなんで?ルカぴょんも協力してよー」
「わたくしカイトさんに頭を下げるなんて芸当、とてもじゃないですが真顔でできる自信がありませんし…」
きっと辛酸を舐めたような顔になると思います、と真剣に戸惑うルカ。まぁギリギリと歯ぎしりしながら頼みごとをされたって、カイトも困るだろう。
「そうだよねぇ。ルカちゃんがおにいちゃんにお願いごとしてるとこなんて想像もつかないもんねぇ…っていうかルカちゃんにそんなことされたらおにいちゃん超ビビるよね多分…」
「えぇ…まぁビビって頂く分には一向に構わないんですが」
「じゃあやっぱり、わたしとリンちゃんだけでどうにか説得するしか…」
ミクが諦めモードで唸っていると、リンが不敵な笑みで2人の肩をポンと叩いた。
「…ダメダメ。甘いよ2人ともー。男の人にお願いを聞いてもらうってのはね、何も頼む込むだけじゃあないんだよ?女にしかできないやり方があるでしょうがー」
「え、リンちゃん何そのドヤ顔」
「こう見えてリンはイケナイ女だからね!男なんてこの手の上でぴろぴろ踊らせちゃうんだからね!」
「…どうやって?」
「昔から言うでしょーが!男を落とすには“色仕掛け”ですよ!!イロジカケ!!!!」
…この凹凸の全くない胸を張る少女がその単語を堂々と宣言することに強烈な違和感を禁じ得ず、ミクとルカはわけがわからないよ、と目を見合わせるしかなかった。

*前のバージョンで進みます。全4Pです*

年に一度の事なのでこの際カイトにいい思いしてもらおうと思ったらこんなことに。でもうちのカイトはあんまりお兄ちゃんお兄ちゃんしてくれないので(対メイコの男の部分ばっか強くて)、『みんなのお兄ちゃん』なカイトはやっぱりたまらんものがあるなぁと書いてて思いました。

ところでどなたかうちのカイトに自重という言葉を教えてやって下さい。

*注意事項*ほんのりぽルカ。年長で軽くエロ展開。あと長いですスミマセン…

カイトめ祝ってやる!

投稿日時 : 2012/02/14 23:11    投稿者 :ねこかん

ヘルプブクマでつながった作品とは?

からくり時計と恋の話

 昼は太陽が長く短い影を、夜は月が細く真っ直ぐな光を、入り組んだ街の盤上で回し、針を持つ時計は、それらの動きを模してくるくると時を伝えます。
 お話の舞台となる部屋でも勿論、壁の柱に掛けられた時計は規則正しく務めていました。一日三度、日の出から日の入りまでの定まった刻に柔らかな音楽を奏で、文字盤の十二個の窓からは、小さな人形達が銘々の衣装で踊り出て、訪れたひとときを祝います。
 すっかり夜が更け、子供の居なくなった子供部屋。でもからくり時計の針先は、止まない時をなぞり続けます。そこに誰も居ないわけではありませんから。昼には見えない星のように、夜にはひょっとしたら私達にも、オモチャ達の瞳に灯る光を見る事が出来るのかもしれません。
 からくり時計を臨む木棚には、ゼンマイ仕掛けの人形がいくつも並べられています。そのいちばん端に座る、少年の格好をした痩せっぽちな人形は、いつもそこから時計を見つめていました。からくりが作動する際、長針が指して取り分け衆目を集める天辺の窓。それを映すプラスチックの瞳の奥は、日に日に光を増していました。どうした事か、ある時を境にその窓だけが、開かなくなってしまったからです。
 窓の向こう側にいる、苺の花のように愛らしい踊り子は、毎回つま先立ちでくるり舞う姿を披露していました。定時の約束として当たり前に繰り返されていた日常の欠落は、ゼンマイ人形の中にぽっかりとした隙間を作り、その隙間にはやがて、彼の単純な仕組のカラダとはちぐはぐな、複雑な構造のココロが嵌り込んだのでした。そして姿を見られない日が重なる程、彼は踊り子への気持ちを募らせていったのです。

fkoshibaさん

fkoshibaさん

2013/04/12 18:35

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