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【がくルカ】memory【15】

大丈夫かな…




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「えぇ!?私が…主役!?」


放課後の図書室で、私は驚いていた。
帰ろうと思って荷物をまとめていたら、リンさんが「ちょっと大事な話があるんだけど…いいかな?」と言ってきたので、何かと思ったらこういうことだったのか。


「な、なんで私が…」
「うちの学校の演劇部はね、部員が少ない年は『Singer』の称号を持つ二年生を数人助っ人に呼んでるの」
「どうして?なんで?」
「それがうちの部の伝統だから。『Singer』の称号持つ人って、美形が多いでしょ?多分それだと思う」


本当にうちの学校って世間とずれてるよね。
ルールとか普通じゃないもん。
っていうか、あなたも『Singer』ですよねリンさん。


「主役は『Singer』の中から選ぶことになってるの。
 で、今回の劇の主役は二人、男女一人ずつなの。」
「それで…まさか…」
「そう。一人は巡音さんが選ばれたよ☆おめでとう!」


――何故!?
何故私を選んだ演劇部の顧問の先生!


「理由は信頼してるからっていうのもあるけど、『美しいから』とか『頭がいいから』とか『きっと完璧に演じてくれる』とか『大人の色気が感じられる』とかもあるって言ってたよ?」


いろいろとおかしくない!?
大人の色気って何!?
どうしてしまったんだ演劇部の顧問の先生!


「先生は『私はあの子を、前から信頼してる』って言ってたけど…」
「…ん?もしかして、演劇部の顧問の先生って……初音先生?」
「そうだよ」


うん。なんか納得した。
初音先生、演劇のことになると人が変わるからなあ。


そして、ようやく思い出した。
初音先生は二年前、教育実習生として私の中学校にやってきた。
実習期間はたった二ヶ月だけだったけど、その頃の初音先生についてはよく覚えている。
とても優しくて、授業はとてもわかりやすかった。
ドジっ娘なのは昔からだから、他の先生達にはよく注意されていた。

でもなんだかんだで評価は高かった。
初音先生の大学は普通の大学だけど、彼女はどんなに難しい問題もさらりと答えた。
東大生じゃないと答えられないような問題さえも、彼女は正解した。
かなり頭が良かった上に、今年は教員免許を取得して、もう教師だ。
現在は20歳。教師としてはかなり若い。
彼女も、学園長らと同じく『天才』に分類されるだろう。
以上、説明終了。


「でも、劇に出るのが嫌だったら言ってね?無理にやる必要はないから」
「ちょっと考えさせてね。で、もう一人の主役は誰?」
「あぁ…うん…」


リンさんは少し迷っているようだったけど、すぐにこちらを見た。


「もう一人の主役、つまり巡音さんの相手なんだけど……」


その時、扉が開き、こちらに近づく人影が二人。
一人は先ほども話題に上がった初音先生。
もう一人は――神威先生。


「初音先生、痛いんですけど」
「ごごごごめんなさい!怪我は、怪我はないですか!?」
「別に初音先生が転んでノートを俺の頭に思いっきり当てちゃったくらいで怪我はしませんよ?」
「ごめんなさいいいいいいい」


もはやこのような会話が日常茶飯事と化している。
大丈夫、おかしなことは何もおきていない。


「…ごめんね、遅くなっちゃった」
「いえ。今巡音さんに説明してたところです。
 で、相手なんだけど……神威先生、です」
「え?」
「『Singer』の二年生の男子はレン一人だが、レンは別の仕事があるらしい。
 そもそも『Singer』の称号を持つ人に男は珍しいらしい。
 レン以外に『Singer』の男は俺と始音しかいないから、俺になったらしい」
「そ、そうなんですか…」


現在、『Singer』の称号を持っているのは二学年に五人、教師に三人だ。
そもそも『Singer』の称号を持つ人自体がかなり少ないから、五人もいるうちの学年が異常なのだ。
初音先生はこの学校に来て二ヶ月で取得してたらしいし、神威先生と始音先生は学生時代に取得していたらしい。


「それは置いといて、今回の劇は演技とはいえ、少し恋愛要素があるからね…規則が心配なんだけど」


今の言葉に、私はとても驚いた。
ちょっと待って、今『恋愛要素がある』って聞こえたような気がするんだけど!?


「そ、それ、学園長はなんて…?規則だからダメって…?」
「いや、『オッケー』だって。
 いやー、許可とるの大変だったんだから」


どうやって許可をとったのかは訊かないでおこう。
なんだろう、訊かないほうがいいような気がする。


「他にも強力してくれる人は集めたから、人手はこれでいいわね。
 えーと、台本はリンさんが書いてくれることになっているわ」
「いい話を書き上げれるように頑張ります!」
「で…リンさん、レン君はどこに?」
「あ、多分この部屋にいると思うんですけど…ちょっとレン、来てー」


リンさんがレン君を連れてきた。


「衣装・小道具・大道具の製作は、レン君が担当します」
「「異議あり」」


神威先生とハモった。


「ちょっと待ってください。それ全部、レン君一人でやるんですか?」
「そうだよ。レンは凄く手先が器用だし、仕事はとても速いんだよ」
「そういう問題じゃないと思うんだが」
「大丈夫です、心配いりません」
「そ、そうか…」


レン君本人が真顔で答えた。
多分、慣れてるんだろう。


「台本についてだけど、三日あれば書けると思います」
「それ、速すぎませんか?」
「衣装は、イメージ画をもらえれば作れますけど」
「イメージ画か…とりあえず、台本が完成しないと描けないな」
「最初は小道具から作りますか。リン、現時点で決定してるやつある?」
「んー…剣、かな。ロングソードで、あまり装飾が派手じゃないやつを――」


リンさんとレン君が語り始めた。
この二人は昔から演劇に関わってきたらしく、設定とかがすごく細かい。
それだけ本気なのだろう。


「あー…そろそろいいかな?俺、ミニテストの採点しないと…」
「私も、ちょっとこの後用事があるんですけど…」
「あ、すみません。じゃあ今日はこのへんで…」


ふと時計に目をやるともう五時半だったので、私と神威先生は先に退散した。


「ふう…なんか凄いことになったな、ルカ」
「はい…この先大丈夫なんでしょうか」


とりあえず、これから先、とても忙しくなりそうだ。

「依頼」


学園祭編、始動。
この話(15話)はかなり前に書き上げたまま眠っていたので、発掘していたら出てきました。

投稿日時 : 2012/09/03 16:03    投稿者 :ゆるりー

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