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  • 小説版 South North Story ① レイジさん 閲覧数:38,418
    2010/06/19
    23:06

    小説版 South North Story
    プロローグ
     それは、表現しがたい感覚だった。

  • 小説版 South_North_Story 50 レイジさん 閲覧数:974
    2010/11/21
    23:40

    第四章 始まりの場所 パート1
     意識が途絶えた後、どれほどの時間が経過したのかまるで分からない。そもそも時間という概念が存在しえない場所に僕はいたのかも知れない。だけど、僕は再び瞳を開いた。目に映るのは見慣れない銀色の器具と、無機質な白色に包まれた天井の色。天国にしては味気が無さ過ぎるし、地獄にしては落ち着きすぎている。そもそも、黄泉の国とはこのような場所なのだろうか、とレンが考えながら体を起こそうとしたが、上手く体が動かない。鈍い痛みを右腕に感じて視線を送ると、奇妙なチューブが右腕に突き刺さっていることに気がついた。そのチューブを流れているものは何かの雫らしい。一体何の液体が僕に注がれているのだろうか。何かの責め苦なのだろうか、とレンが考えた直後、泣きはらしたような女性の声がレンの耳に届いた。
     「蓮!蓮、良かった、目が覚めたのね・・。」

  • トゲチックメンタリティ なるみんさん 閲覧数:543
    2020/07/17
    23:33

    【A】
    頭の中は パーリピーポー
    表現したい 言葉にしたい

  • 小説版 South North Story ② レイジさん 閲覧数:468
    2010/06/20
    00:11

    第一章 ミルドガルド2010 パート1
     「卒業式、終わっちゃったね。」
     机の上に腰を置くような格好で教室を呆然と眺めていた金髪蒼眼の少女が、少しだけ寂しそうにそう呟いた。どこにでもある様な、変哲もない卒業式だったけれど、それでも三年間学んだ学舎とこれでお別れだと考えると嫌でも哀愁が募る。同級生たちが後の再会を誓いあいながら、一人一人、古びた教室を後にしてゆく姿を見つめて、その少女は先程担任の教師から受け取ったばかりの卒業証書が入った筒を、軽くその形の整った顎に充てた。まだ幼さが残るが、若い男性が一目見たら将来を本気で期待してしまう様な整った顔立ちを持つ少女である。

  • 小説版 South North Story 56 レイジさん 閲覧数:385
    2010/12/26
    02:19

    エピローグ
     「リーン、リーンってば。起きて?」
     優しい声がリーンの脳裏に響いた。誰の声だろう。ううん。あたし、この声ずっと聞きたかった。だってもう二ヶ月も離れ離れだったもの。

  • 小説版 South North Story ⑲ レイジさん 閲覧数:376
    2010/07/19
    14:07

     第二章 ミルドガルド1805 パート1
     もう、四年も経ったのね。
     丁度一年ぶりに訪れた旧黄の国の王都、四年前にカイト皇帝によりゴールデンシティと改名されたその街に訪れたのは、桃色の髪を持つ妙齢の女性、ルカであった。手にしたバスケットの中にはハルジオンの花束と、丹精込めて焼き上げられたブリオッシュが収められている。カイト皇帝のこの四年間の治世に評点をつけるならば、まずまずの評価というところであるだろうか。ゆっくりとしたペースではあったが、ゴールデンシティの経済状況はとりあえず上向きに推移している。もっとも、比較すべき対象が酷過ぎた、ということも言えるわけではあるが。

  • 小説版 South North Story ③ レイジさん 閲覧数:367
    2010/06/20
    15:14

    第一章 ミルドガルド2010 パート2
     ゴシック調の建築様式を持つルータオ修道院の礼拝堂は、その規模の巨大さと均整のとれた建築様式を持つことで有名な建物であった。その内部にひとたび身を納めると、都会の軋轢を癒すような柔らかい、まるで高性能な濾過機を通したような清浄された空気を堪能することが出来るのである。天井は柔らかな弧を描くアーチとなっており、天井の広さは実際の距離よりも広く感じることができる。礼拝堂の最奥に面する壁には神を象徴する造形が成されており、その手前には司祭だけが登壇を許されている祭壇がある。一般の参拝者はその祭壇の手前で祈りを捧げることが通例となっていた。リーンとハクリもその例に漏れず、祭壇の手前で膝をつくと、両手を組み合わせて、それぞれ瞳を閉じた。
     神様、これまで見守って頂き、本当にありがとうございました。これから、あたし達遠い大学へと進学します。新しい場所でも、どうかお力をお与えください。

  • 小説版 South North Story ⑰ レイジさん 閲覧数:344
    2010/07/19
    10:27

     第一章 ミルドガルド2010 パート16
     セントパウロ大学前駅から地下鉄南北線に乗車したカイルは、それから半時程度が経過した頃にグリーンシティ駅に降り立つことになった。グリーンシティ駅は文化都市グリーンシティを象徴するような芸術性の高い建物になっている。現代建築特有の、近未来をにおわせる明るい配色に加えて、繊細な古典芸術の要素も所々に込められている建物である。どうも高名な建築士が設計したようだったが、そのあたりの芸術性を理解できる程の知識がカイルにある訳ではない。ただ、グリーンシティでメイと待ち合わせする場所はいつも決まって駅前広場のモニュメントの前と決まっていた。複数の曲線を重ね合わせた金属製に見えるモニュメントの元にカイルが到達すると、先に来ていたのかメイが不服そうに口元を歪めて、そしてこう言った。
     「遅いわ。」

  • 小説版 South North Story ⑤ レイジさん 閲覧数:337
    2010/06/20
    23:44

    第一章 ミルドガルド2010 パート5
     カフェでの小休止を終えたリーンとハクリは、少し時間は早いがそのまま帰宅の道へと向かうことにした。ルータオ駅は修道院から距離にして数キロの距離があったが、その移動手段を支える交通がルータオ市内には整備されている。即ち、ルータオのもう一つの名物となっている路面列車であった。ルータオ駅前に巨大なターミナルを有している路面列車は、他の都市とは異なり、珍しい完全民営の鉄道であることでも有名であった。その列車はルータオ市内の主要箇所を適確に結び、最も遠いところではルータオの隣町であり、ルータオのベッドタウンでもあるクチャの街まで延伸されている。特徴は港町を端的に現しているという青系統の列車であり、基本は一両編成、但し近年は人口増と環境保護に対応した、燃費を大幅に抑えた二両編成の新型車両の活躍を目にすることも多くなっている。リーンとハクリは、迷うことなく複数行き先がある中でルータオ修道院前方面の列車に乗り込んだ。運よく新型車両に乗ることが出来たものの、車内は混雑しており、どうやらリーンとハクリの為の座席は用意されていない様子だった。
     『ルータオ修道院前経由ルータオ新港行き、発車します。』

  • 小説版 South North Story  29 レイジさん 閲覧数:331
    2010/08/23
    00:09

    第二章 ミルドガルド1805 パート11
     やっぱり、あたしがいた時代とは随分と様子が違うな。
     無言のままで歩みを続けるリンの背中を追いながら、リーンはその様なことを考えた。リーンが生まれ、そして高校卒業まで住んでいた自宅は影も形もないし、大通りを走る路面列車の姿ももちろん見えない。建物は平屋ばかりだったし、アーケード街の姿もない。でも、とリーンは考えた。港町特有の活気と、潮の香りは何も変わらないな、と。

  • 小説版 South North Story  34 レイジさん 閲覧数:321
    2010/09/05
    23:26

    第二章 ミルドガルド1805 パート16
     「せいやぁっ!」
     可憐な少女の声が広い平原の只中に響き渡った。どうやら一人、剣の素振りをしている様子であった。小麦色の髪を潔くポニーテールにした少女はもう一度剣を振り上げて、そして鋭く振り下ろす。剣が風を切る音が周囲に響いた。その素振りだけでも、見るものが見れば少女が相当の腕前を持っているという推測を立てることが出来るだろう。その少女はしかし、不意に剣の手を止めると、深い思考を巡らせているらしい同行者に視線を向けて、少しだけ不満そうに頬を膨らませるとこう言った。

  • 小説版 South North Story  31 レイジさん 閲覧数:319
    2010/08/29
    17:57

    第二章 ミルドガルド1805 パート13
     「とりあえず、何があったのかを説明しなければならないわね。」
     ウェッジがさりげなくハクの隣の席に腰掛けたことを確認してから、ルカはその様に言葉を切り出した。確かウェッジはリンの正体を知らないはずだけど、と考えながら、慎重な口調でハクに向かってこう訊ねた。

  • 小説版 South North Story  30 レイジさん 閲覧数:316
    2010/08/29
    13:59

    第二章 ミルドガルド1805 パート11
     レンにもう一度逢える?
     リーンの声が海岸に響き渡り、その声が波打ち際の潮の音に紛れて消えていった後、リンはその様に考えてその蒼く透き通る瞳をひとつ、瞬きさせた。潮風が吹き、リンとリーンの黄金の髪を綺麗に靡かせる。

  • 小説版 South North Story 22 レイジさん 閲覧数:316
    2010/07/26
    00:12

     第二章 ミルドガルド1805 パート4
     「苦い。」
     メイコが丹精込めて淹れた紅茶に対するリーンの一言目はその言葉であった。

  • 小説版 South North Story ⑪ レイジさん 閲覧数:306
    2010/07/04
    17:02

    第一章 ミルドガルド2010 パート10
     リーンとハクリが予約していた不動産業者から自宅の鍵を受け取ってから向かった先は、モーリス学生街駅から徒歩五分の距離にある場所である。駅から至近距離にある優良物件であるにも関わらず、家賃は程良い価格に抑えられているのは、ミルドガルド共和国の学生支援策の一環で下宿指定を受けたアパートやマンションに対する補助金が支給されているためであった。特にミルドガルド最古の歴史を誇るセントパウロ大学に対する支援策は他の大学よりも優遇されており、学費も低価格に抑えられている大学なのである。
     今回リーンとハクリがシェアリングする部屋は2DKの割合広めのマンションであった。オートロックも完備しているし、何より築年数が二年と新しいところが人気らしく、リーンとハクリは運よく空いていた最後の一室を獲得できたという格好である。時刻を指定していた配達業者が家具を搬入すると、無機質な、ただの空間であった室内が途端に彩られて生活感溢れる室内に豹変するから不思議なものだ。その一通りの手続きが終わると、リーンとハクリはのんびりと紅茶を飲みながら長旅の疲れを癒すことにしたのである。ハクリが淹れる紅茶は他のどこのお店よりもおいしい、とはリーンが幼少の頃から感じていた事実であった。

  • 小説版 South North Story 23 レイジさん 閲覧数:299
    2010/08/01
    16:17

     第二章 ミルドガルド2010 パート5
     「ルカ殿、ルータオにはすぐにご出立されますか?」
     ルカとリーンが飲み残した紅茶を無念という表情そのままで処分し終えると、メイコはルカに向かってその様に訊ねた。まだ午後の早い時間だが、今から出発してもルータオ街道沿いにある次の宿場町には間に合わない計算になる。そう計算してから、ルカはメイコに向かってこう答えた。

  • 小説版 South North Story 24  レイジさん 閲覧数:298
    2010/08/08
    12:00

     第二章 ミルドガルド2010 パート6
     
     日が陰り、夕闇がゴールデンシティを包み込み始める時刻、長旅に耐えられる様にと頑丈な縫製がなされている牛皮のベストを着込んだメイコは、気合を込める様に左右の襟を両手で掴むと、身体を引き締める様にそれを軽く引き絞った。そのまま、私室の窓から広がる景色を視界に収める。今日という日をまだ譲るまいと言わんばかりに最後の抵抗を試みる斜光の眩しさに微妙な加減で瞳を細めたメイコは、そろそろ行こうかと考え、無造作に床に置かれている麻袋を持ち上げると、滑車代わりにするように麻袋の縄を右肩にかけて麻袋を後ろ手に固定させた。丁度よい重さがメイコの身体にのしかかったことを自覚しながらメイコは部屋の中央から廊下へと向かって歩き出す。ルータオに行けばどんなに早く移動しても往復に二週間はかかる。暫くこの部屋に戻って来ることもないな、とメイコが考えながら廊下に出た時、まるでメイコを待ち構えていたかのように総督府第三層、大理石造りの廊下の壁に寄り掛かっていた人物の姿を見つけて、メイコは僅かに嬉しそうに頬を緩めた。

  • 小説版 South North Story ⑳ レイジさん 閲覧数:298
    2010/07/25
    14:44

     第二章 ミルドガルド1805 パート2
     一体、何が起こったのだろう。ぼんやりとした思考のままでリーンはその様に考えて、目の前でまるで大地がひっくり返ったかのような驚きの瞳でリーンを見つめている桃色の髪を持つ女性の表情を視界に収めた。
     「あたしは、ルカよ。」

  • 小説版 South North Story  28 レイジさん 閲覧数:291
    2010/08/22
    22:33

    第二章 ミルドガルド1805 パート10
     一体、リン様はどのような生活を営んでいるのだろうか。
     一歩一歩近づく、ルータオで一番巨大で、そして最も美しい建築物であるルータオ修道院を目前としながら、メイコはそのようなことを考えた。リン様にレンの最後の言葉を伝え、そして謝罪したい。その想いだけでゴールデンシティからここまで、一週間に及ぶ長旅を敢行してきたのである。それが目的地を目の前にして極度に緊張していることを自覚せざるを得なくなった。かつてのリン様なら、間違いなく私に罵声を浴びせてくるだろう。実際、私の犯した罪はそれほどに重い。祖国を裏切り、敵国に国を売り渡した。売国の騎士と評価されてもおかしくはない程の罪人であるはずなのに、私は今も生活が保障され、拘束もされることなくのうのうと生きている。それに対して、リン様はなんとおっしゃるのか。かつての豊かな生活を思い出されて涙されるのではないだろうか。メイコがそう考えている内に、彼女達は目的の場所に着いた。この時代に於いてはリーンはもちろん、メイコであってもルータオ修道院を訪れることは初めての出来事であった。落ち着いた赤煉瓦作りの、二層建ての建物が礼拝堂であった。その礼拝堂へと続くルータオ修道院の正門で一度立ち止まったルカは、メイコとリーンに振り返ると確認を促すようにこう言った。

  • 小説版 South North Story 26 レイジさん 閲覧数:291
    2010/08/15
    20:00

    第二章 ミルドガルド1805 パート8
     メイコとアレク、そしてリーンがテーブルを挟んで向かい合うように座ると、メイコが状況を整理するわ、と前置きをして一通りの話を語りだした。即ち、リンが生きていること。今リンはルータオで静かに暮らしていること。そしてリーンが二百年後の未来から来た人物であるということ。簡単に要訳するとその様な内容の情報をメイコは簡潔に、そして過不足なくアレクに伝えて行った。テーブルの反対側で交わされるメイコとアレクの会話を眺めながら、リーンはなんとなくこの場所にいてはいけない様な気分に陥った。なんと表現すればいいのだろうか。まるで長年連れ添った夫婦の様にしっくりとしているのに、妙な所で付き合い始めたばかりの恋人同士の様な初々しさを見せている。どうやらこの男性がメイコの夫で、民主主義の申し子と言われたアレクらしいとリーンは考える。後世の歴史には軍人としてよりも思想家としての印象が強く残されているものだから、もっと線の細い人物を想像していたのだが、実物は相当に筋肉質で、体格もいい。相当の腕前の剣士なのだろうな、とリーンが考えていると、アレクが全ての話を纏める様にこう言った。
     「それで、明日からリーン殿をリン様に会わせる為に旅にでるということですね。」

  • 小説版 South North Story ⑬ レイジさん 閲覧数:288
    2010/07/11
    18:10

     第一章 ミルドガルド2010 パート12
     入学式を終えたリーンは、他の学生たちと共にひとまず大講堂の外へ向かうことにした。今日の予定は入学式だけだ。早い段階でハクリと合流しようと考えたリーンは、大講堂の出口へと向かって歩き出すことにした。大講堂の一般出口は舞台とは反対側、リーンから見て後方にしか用意されていない。狭い出口で余計な混雑を起こすつもりはないのだろう、学部ごとの退場をアナウンスされたリーンは、ハクリが出てくるまでには外で暫く待たなければならなくなりそうね、と考えた。リーン達文学部は一番早い退席であったのである。重層な造りをしている大聖堂に、大勢の新入生が歩いてゆく足音と、雑談が溢れ出して騒然とした雰囲気を感じながら大講堂の外へと出たリーンはしかし、他の新入生達と同様に大講堂の出口で呆然とすることになる。即ち、セントパウロ大学名物、各サークル団体による新人獲得合戦である。新人歓迎会、通称新歓と呼ばれるそのイベントは、部員増加を狙う上級生にとっては新入生をかき入れる唯一絶対の舞台であるのだ。まるでバーゲンセール時の店員の如く花道を作っている上級生たちは、入学式を終えて退出してきたリーンを始めとする新入生の姿を見つけるや、正に飢えた獣のごとく勧誘活動を始めたのである。
     こりゃ、ハクリを待っている余裕はないわ。

  • 小説版 South North Story ⑦ レイジさん 閲覧数:288
    2010/06/27
    17:37

    第一章 ミルドガルド2010 パート6
     同じ頃、リーンとは隣合わせの家に住んでいるハクリもまた、遅めの夕食を終えて、先程リーンが寝ている間に読み込んでいた小説の続きを再開しようと自室へと戻ったところであった。ハクリの性格を良く表す様な、余計な物は置かれていない、それでも満たされているように感じる良く整頓された、白を基調とした自室の隅に置かれているベッドに腰かけたハクリは、床に置いた鞄から文庫本を取り出すと再び文字の海に視線を落とすことにしたのである。先程ルータオヒルズ内にある大型書店で購入した本であった。所謂サスペンスと呼ばれているジャンルの本であるが、最近映画化と同時に文庫版が発売され、すぐにでも買おうとハクリが目を付けていた小説であったのである。内容は象徴学と神学と科学を融合させたミステリーとでも表現すればいいだろうか。物語のスタートと同時に発生した殺人事件を解決するために、警察ではなく象徴学の学者にその謎を解かせてゆくという手法が斬新なのだろう。もちろん、本そのものの文章的な面白さは否定できないが。
     そうしてハクリが読み進めてゆくうちに、ハクリは一つの挿絵に視線を集約させることになった。それは中世ごろの紋章を象ったものらしい。殺人事件の現場に置かれていたシンボルマークとしてその作品では紹介されていた。ミルドガルド三国時代、最も早くその寿命を終えることになった緑の国のシンボルマークに酷似している、と主人公が呻く姿がその小説には表現されている。その起源は更に古く、古代ミルドガルドの初の国家、グリースの国家紋章と共通するものであるらしい。実際に、旧緑の国の版図はグリースの版図とほぼ一致するから、それ自体はおかしなことではない。だが、ハクリが注目したものはその歴史的事実によるものではなかった。

  • 小説版 South North Story ⑭ レイジさん 閲覧数:285
    2010/07/12
    00:12

     第一章 ミルドガルド2010 パート13
     「ハクリ、こっちよ!」
     それから半時間ほどが経過した後、リーンとメイ、そしてカイルはセントパウロ大学の正門でハクリと待ち合わせることになった。学内には待ち合わせに適した場所が他にもあるが、入学したばかりの新入生にも分かりやすい場所を、ということでメイが提案したのである。その間にも大勢の学生がメイの姿を見つけて立ち止り、好奇に満ちた瞳でメイに向かって嘆息を吐きながら、手にした携帯電話でメイの姿を撮影し始めている。そのメイを守る様な位置でカイルが立っている所を見ると、どうやらカイルはメイのボディーガードという役割を演じているらしい。確かに、他の同年代の青年に比べて体格の良いカイルは武道にも通じている様な気配がある。少しだけ緊迫した気配を感じながら、リーンは先程のリーン自身と同じように両手にサークル関係のビラを抱えたハクリに向かって手を振った。

  • 小説版 South_North_Story 51 レイジさん 閲覧数:283
    2010/11/28
    18:43

    第四章 始まりの場所 パート2
     刀傷の男に向かって謝礼金を支払い終えたレンは、まるで何事も無かったかのような足取りでその小屋を後にすると、海沿いの寂れた路上に駐車しておいた乗用車に再び乗り込んだ。カモメが鳴いている。どこかで聞いたことがあるような声だったが、そう感じたのは海岸の寂れ具合が丁度リンが小瓶を流したあの海とよく似ていた所為かも知れない。そのカモメの声を耳に収めながら、レンはエンジンキーを差込んで捻りあげた。軽快なエンジン音が海岸に響き渡る。その音を耳に収めてから、レンはアクセルを軽く踏み込んだ。路地を抜けて国道五号線へと戻ると、再び札幌へと向けて走り出す。途中で小樽の街に入ったとき、レンは不意に思い立って五号線から逸れると、小樽運河へと向かって車を進行させた。道道17号線に入り、二分ほどで運河が左手方向に確認できる。その運河をちらりと眺めたレンは、相変わらず観光客が多いな、という一般的な感想だけを心の中に収めて運河を走り過ぎていった。やがて札樽道路の入り口が見えてくる。そこから自動車専用道路へと車体を移したレンは、遠慮の無い力でアクセルを踏み込んだ。加速重力がレンの体にかかる。行きに比べれば車の数は増えてはいたが、交通の阻害になる程度ではない。軽快に回転するエンジン音を耳に収めながら、少し風に当たりたいなとレンは考え、乗用車の窓を全開に開けた。潮風がレンの輝くような金髪を揺らす。心地いいな、とレンは考え、その蒼い瞳を僅かに細めた。この後はどうするか、とレンは考える。もう彼女たちに伝える言葉も、手渡すべきものも用意してある。まだ夕暮れまでには時間があるし、とレンは考え、たまには年頃の青年らしく、札幌駅で軽く買い物でもしようか、という結論を出した。
     

  • 小説版 South North Story  44 レイジさん 閲覧数:283
    2010/10/03
    23:33

    第三章 東京 パート4
     「今、レンは何処にいるの?」
     暫くしてからリーンから受け取ったハンカチで涙を拭き終えたリンは、一つ深呼吸をするとようやく落ち着きを取り戻した様子で寺本に向かってそう言った。レンがこの世界にいる。あたしはレンにもう一度逢える。そう考えただけで心臓が飛び跳ねそうなくらい高鳴っていることが分かる。自身の鼓動を少しでも抑えるように胸に両手を重ねたリンに向かって、寺本は落ち着いた口調でこう言った。

  • 小説版 South North Story ④ レイジさん 閲覧数:279
    2010/06/20
    20:48

    第一章 ミルドガルド2010 パート3
     「きっと、レンには秘密があると思うの。」
     翌日、昼過ぎからルータオの中心街へと向かったリーンは、隣を歩くハクリに向かってそう声をかけた。ミルドガルド共和国沿海地方の中で最大の都市であるルータオには休日に多くの人間が押し寄せる。その中心部は二か所存在していた。一つは観光地として整備されている、修道院から運河に至るまでのアーケード街であり、もう一つは迫りくる山の麓に存在するルータオ駅周辺地区であった。特にルータオ駅周辺は十年前にゴールデンシティまでを一時間で結ぶ新幹線が完成してから急激な発展を見せ、並行して走る在来線と会わせて多くの人間を毎日のように吐きだしているのである。その目玉は駅に併設している、ルータオでは一番の高層ビルであるルータオヒルズであった。一通りの買い物はこのビルだけで済ませてしまうことが出来る上に、映画館と劇場まで館内には存在している。よもや百貨店という言葉では不足しており、正確にはミルドガルド西部地区一番のショッピングモールという表現が一番的確かも知れない。

  • 小説版 South North Story  46 レイジさん 閲覧数:275
    2010/10/17
    23:24

    第三章 東京 パート6
     寺本の話が終わると、藍原は凝り固まった疲労のように重たい吐息をその場に漏らした。寺本はなんと言ったか。ミルドガルド。異世界から来た少女。そんな話はSF小説の中だけの出来事だと思っていたのに。まさか、すぐにその事実を信じられる訳もない。
     「二人は明後日の便で札幌に向かう。それまで信頼の置ける人のところに二人を置いておきたいんだ。」

  • 小説版 South North Story ⑱ レイジさん 閲覧数:273
    2010/07/19
    12:52

     第一章 ミルドガルド2010 パート17
     ミルドガルドには現代日本と同様に、四月の終わりから五月の頭にかけて一週間程度の連休期間が存在していた。メイが迷いの森の探索を目的として指定した日はその春の連休の初日のことである。カイルが運転する車の後部座席に腰かけたリーンは、隣に座るハクリと一緒に流れる景色を眺めながらその時間を過ごしていた。結局、あれから歴史研究会らしい活動をしたかというと、特には行ってはいない。ただなんとなく、ミルドガルド市民革命付近の歴史を調べ上げる程度の活動を行っただけである。時折、思い出したかのように部室に姿を現すメイはレン以外の人物に興味がない様子で、どこからか怪しげな本を持ち出して来てはそれを読破していくという行為を続けていたのである。明らかにネタ本だろう、というような内容であってもメイにとっては貴重な資料らしく、無我夢中で読み込んで行く姿はリーンであっても多少の感動を覚えたのではあるが。
     「そろそろ着くぞ。」

  • 小説版 South North Story  33 レイジさん 閲覧数:272
    2010/09/05
    16:55

    第二章 ミルドガルド1805 パート15
    作者註:この回は冒頭から「大人のシーン」が展開されています。ある程度抑えたつもりですが、苦手な方はご注意ください。それでもおkな方はどうぞ。(消されなきゃいいけど^^;)
     汗ばんだ身体に、茉莉花に似た心地の良い香りがふわりと馴染む。昨晩の行為を思い起こしながら、半ば覚醒しただけの状態でカイトは右腕にかかる暖かな体温を覚えて、彼女を起こさぬように気遣いながらほんの少しだけ身体を捩じらせた。そのままカイトは僅かに瞳を開き、カイトの隣で未だ安らかな眠りについている彼女、アクの姿を視界に収めた。婚姻を果たしてからもう一年近い年月が二人に流れていたが、未だ子供に恵まれぬアクの表情にはまだ少女のようなあどけなさが残っている。その艶のある、小ぶりなアクの顔を見つめて楽しげに口元を緩めたカイトは空いている左手でアクの月光のように輝く長い銀髪に触れた。まるで貴重なものを扱うような丁寧な手つきでアクの髪を撫でたカイトはそのまま、生まれたままの姿で横たわるアクの首筋に触れ、肩を撫で、そして背中に手を回した。しっとりとしたアクの肌がまるで手に吸い付くような感覚を覚えてカイトは満足そうに微笑み、そして唐突にアクの身体を抱き寄せた。

  • 小説版 South North Story 21 レイジさん 閲覧数:272
    2010/07/25
    17:31

     第二章 ミルドガルド1805 パート3
     どうしてそのような寂しげな表情をしたのかが判断できないまま、リーンはルカに促される様にして立ち上がるとリン女王の墓石を神妙な瞳で見つめ直した。そして、歴史書で読み込んだリン女王の最後の姿を描写した文面を思い起こす。当時黄の国で絶大な権力を誇った齢14歳の少女はその晩年に緑の国を滅ぼしてミルドガルド三国時代を実質終了させ、そしてその後青の国との戦争の最中に発生したメイコの反乱によって自らの国家を失い、最後は暴政を怨んだ民衆達の手により断頭台で処刑されている。そのメイコが、反乱の首謀者であるはずのメイコがこの場所にいるのは何故なのだろう、とリーンは考えた。ルカが地面に置いたバスケットからハルジオンの花束と、そしてブリオッシュを取り出してそれを墓石の前に供える。掌を組んで祈りの姿勢を整えたルカと、そして真摯な態度で祈りを捧げるメイコに混じり、リーンもまたリン女王に向けて、形ばかりではあったが祈りを捧げた。やがてその厳粛な儀式が終わると、ルカはそれまで閉じていた瞳をゆったりと開き、そしてメイコに向かってこう言った。
     「メイコ、どこか隠れてお話できるような場所はないかしら。」

  • 小説版 South North Story ⑫ レイジさん 閲覧数:271
    2010/07/04
    22:39

    第一章 ミルドガルド2010 パート11
     それから数時間後、リーンとハクリの二人はセントパウロ大学大講堂の中にその身体を収めることになった。セントパウロ大学大講堂は一度に数千人の学生を収容することが出来る、セントパウロ大学では最大の建築物である。ルネッサンス様式を真似た大講堂は、その造形美から観光地としても有名な箇所でもあり、大抵の旅行雑誌にその名を残す有名な講堂でもあった。その講堂の一つの座席に腰を落としたリーンは、入学式の為にと拵えたアフタヌーンドレスを身にまとい、ただ静かに学園長の言葉に耳を傾けていたのである。席次は学部ごとに分かれているから、学部が異なるハクリはリーンとは別の位置に着席をしているはずであった。だが、その姿を確認することは出来ない。大講堂のどこかに着席していることは間違いがないだろうが、新入生だけで五千名を越えると言われているセントパウロ大学の規模から考えると、一人の人間の姿を見つけることは非常な困難を伴うのである。その学園長の言葉を、なんとか眠らないように堪えながらも聴き終わったリーンはさて、次は誰が長話をするのだろうか、と考えてまるで身構えるように一つ息を吸い込んだ。リーンの席は大講堂の舞台から大分離れた場所に位置していたから、学園長の顔も良く確認することができなかったのである。だが、次に現れた人物の姿を見つけて、比較的前方に着席していた学生たちから驚愕とも感嘆とも言えぬどよめきが上がり始めたのである。一体誰だろう、とリーンは考え、その赤い髪を持つ、スタイルの良い女性の姿を視界に収めようと瞳を凝らした。あの姿、もしかして、とリーンは考え、僅かに息を飲んだ直後に、その赤髪の女性が登壇して、そして優しく、それでいて張りのある言葉を紡ぎ出した。
     「新入生の皆さん、はじめまして。セントパウロ大学法学部三年、メイと申します。」

  • 小説版 South North Story 55 レイジさん 閲覧数:265
    2010/12/26
    01:36

    第四章 始まりの場所 パート6
     「この銃・・。」
     見覚えがある?それは当然だった。ステンレス製の銃身に漆黒のラバーグリップ。そして何より、銃筒に刻まれたSMITH&WESSONの刻印。リーンが生まれるよりも以前から自宅に安置されている、リーンにとっての守り神のような銃。新品の輝きを誇っている以外、その銃は全く同一のものであったのだ。その銃が、ここにある。

  • 小説版 South North Story ⑧ レイジさん 閲覧数:262
    2010/06/27
    23:41

    第一章 ミルドガルド2010 パート7
     それから一週間後、リーンとハクリは全ての出立の準備を終え、ルータオ駅にその姿を現した。出張に訪れているのか、数多くのスーツ姿のサラリーマンがルータオ駅から吐き出されてそれぞれの仕事場へと向かってゆく。休日とは違う意味で混雑を見せるルータオ駅の駅ロータリーで路面列車から降りたリーンとハクは、荷物を詰め込んだキャリーバッグを引きずりながらルータオ駅へと向かうことになった。今回はセントパウロ大学から少し離れた、手ごろな家賃のアパートをリーンとハクリでシェアリングする予定となっていた。その為に必要な家電製品は既に購入と同時に目的地へと配送の手続きを済ませている。ミルドガルド全土に即日配送ができるというのも凄い時代になったとリーンの父親辺りは考えている様子だったが、さも当然とばかりに手続きを済ませてしまう所が、所謂ジェネレーションギャップと呼ばれるものかも知れなかった。
     「行こうか、ハクリ。」

  • 小説版 South_North_Story 48 レイジさん 閲覧数:261
    2010/11/14
    20:42

    第三章 東京 パート8
     「一体、どのようにして国民の中から代表者を選ぶの?」
     暫くの沈黙を破ったのはまたもリンであった。もの珍しい言葉に関心を抱いた様子で尋ねるリンに対して、リーンが代表してこう答えた。

  • 小説版 South North Story  43 レイジさん 閲覧数:261
    2010/10/03
    15:11

    第三章 東京 パート3
     「藤田は?」
     いつもの部室、普段から活動している部室棟地下二階の音楽練習室で、沼田英司の僅かに苛立ったような声が響いた。予定していた集合時間を迎えて、唯一姿を見せていない人物が藤田であったのである。

  • 小説版 South North Story  40 レイジさん 閲覧数:260
    2010/09/20
    19:50

    第二章 ミルドガルド1805 パート22
     「そこまで。」
     凛としたアクの言葉がビレッジに響き渡ったのは、ハクが詠唱を始めた直後のことであった。直後に、事態を見守っていたメイコとウェッジが向き直り、剣に手をかける。

  • 小説版 South North Story  35 レイジさん 閲覧数:257
    2010/09/12
    16:29

    第二章 ミルドガルド1805 パート17
     「うぁあ、美味しそう。」
     リンが目の前に用意された食事を見て、その様に声を上げた。その後結局、リンの一行はロックバード邸に一晩の宿を借りることにしたのである。ロックバード邸は流石かつてのルワール王国の居城であっただけあり、その敷地は相当の広さを誇っている。今リン達がまさに食事を取ろうとしている食堂も、派手ではないが十分な面積を持つ一室であった。

  • 小説版 South North Story ⑥ レイジさん 閲覧数:245
    2010/06/27
    13:30

    第一章 ミルドガルド2010 パート5
     ハクリを玄関口まで見送ったリーンは、その後どうにもぼんやりとしたまま、玄関ロビーに直結している居間に向かうと、母親が勧めるままにテーブルに用意されていた夕食を胃の中に収めてゆくと言う単純作業を演じることになった。未だに先程の夢から覚めた気分にならない。チキンソテーを切り分けて口の中に押し込み咀嚼しても、どうにも味が分からなかったのである。父親はとうに夕食を終えた様子で、居間の奥にあるソファーに腰掛けながら、のんびりとテレビの液晶画面を眺めている。放送しているのはゴールデンタイム特有のバラエティー番組であった。ミルドガルドでは有名なお笑い芸人が司会を進行していたが、今日はことさらに面白くない。父親も笑い声を立てていない所を見ると、面白くないと感じるのは夢と現実の境目がはっきりとしない自分の今の心理状況が原因というわけではなく、本当につまらない番組であるのかもしれなかったが。
     「出立はいつだ?」

  • 小説版 South North Story 27 レイジさん 閲覧数:244
    2010/08/22
    18:17

    第二章 ミルドガルド1805 パート9
     翌日、まだ朝日も出ていない早朝にルカは目を覚まし、もぞもぞとベッドから起き上がると日の出前の薄明かりを頼りに宿の寝室に用意されている化粧台へと赴き、そして丁寧に自身の長い桃色の髪を梳き始めた。軽く跳ねている髪を櫛で押さえつけ終わると続けてルカは軽く化粧を施す。女ばかりというこの時代には珍しいメンバーでの旅になるけれど、最低限の身だしなみは整えておかなければならない。そう考えながらファンデーションを軽く叩く様に頬に押し当て、最後に赤みの薄い口紅で仕上げを整えたルカは化粧台から離れるとネグリジェを解き、普段から着用している黒一色の魔術法衣に袖を通した。着替えを済ませるとルカはリンとハクの為に購入した土産物の入ったバッグを持ち上げて寝室を出る。長旅の場合、極力早い時間に出発することはこの時代では常識とも言えた。ルータオまでは早馬で駆け続けても三日はかかる。勿論三日という移動時間は駅伝制度を利用した場合の速度になるから、通常は一週間程度の時間が必要であった。リーンは果たしてこんな長旅を経験したことがあるのだろうか、とルカは考えながら宿のチェックアウトを済ませ、預けていた愛馬の手綱を取ると乗馬せずにそのまま、朝日が昇り始めたゴールデンシティの街をゆったりと歩き出した。メイコとは日の出の頃に西大門で待ち合わせることになっている。ここからならばのんびり歩いても五分もかからない距離であった。朝の済み渡った空気に向かって深呼吸したルカは、肺が新鮮な空気で満たされてゆくことを実感して満足感に溢れた溜息を漏らした。
     やがてルカが西大門に到着すると、メイコと、少し眠たげな表情をしたリーンの姿がルカの瞳に映った。リーンはメイコから借りたのだろう、今日はちゃんとした衣装としてのカーチフを頭に巻き付け、金塊の如く輝く金髪を見事に隠している。通常よりもカーチフを目深に被り、天然のサファイアの様に輝く蒼眼を目立たないようにする工夫はメイコの指導によるものだろうか。

  • 小説版 South North Story  36 レイジさん 閲覧数:239
    2010/09/12
    19:43

     第二章 ミルドガルド1805 パート18
     静かな夜であった。物音はリンとハクが踏みしめる土の擦れる様な音と、周囲の叢で嘶く蟋蟀が鳴く声だけである。場所はロックバード邸の裏庭であった。この場所ならば未だ眠りにつく気配も無い街の明かりに邪魔されることは無い。今宵は月もなく、ただ星の瞬きだけがリンとハクの身体を照らしつけた。
     「こうして星を見るなんて、久しぶりね。」

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