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  • 狭い小鳥の籠の中にて 最終話 閲覧数:318
    2010/01/03
    19:45

     暗い夜空に小鳥を放すと、瑠璃の小鳥は空に向かって一直線に飛び立って、暗い空の中に溶けて行った。りんはひととき、その姿を目で追って、空を見上げて立っていた。
     そして、戻ろうときびすを返したところで、それを見つけた。見つけてすぐに、顔色を変えて走り出した。
     息せき切って、人ごみをかいくぐり、時にぶつかりながら、廓への道を走った。遠く見える廓の方角の空が、町中にいるこちらからでも判るくらいに明るく、はっきりと橙に輝いている。あれは、火の色だ。家屋を焼き尽くす、炎の色だ。

  • 狭い小鳥の籠の中にて 第九話 閲覧数:153
    2010/01/03
    18:34

     (どうして、こんなに周到に準備ができているのだろう)
     上手く考えられない頭で、りんは部屋に並べられた白い粉を見つめていた。酒に溶かす眠り薬だというそれを、みくはどこで手に入れたのだろう? いつの間に手に入れたのだろう?
     薄っすらとはそういう疑問は頭に浮かんだけれど、よく考えられない、何も難しいことを考えたくない頭の中ではそれは割とどうでも良い事だった。

  • 狭い小鳥の籠の中にて 第八話 閲覧数:157
    2010/01/03
    17:44

     みくが歩きたいというので、何も考えずついて来た。何も考えず、というよりも、何も考えられず、と言った方が正解かもしれない。りんはまだ、廉の死亡の報の衝撃から立ち直っていなかったし、物事を上手く考えられなかった。ただそこに、一つだけ「敵討ち」という言葉だけがあって、それだけを頼りに、なんとか生を保っていた。
     みくとりんは随分と歩いた。町を出て、駕籠に乗ってしばらくまた進んだ。駕籠が下ろした先は、寂しい、荒れた土地だった。赤茶けた大地に、まばらに雑草が生い茂り、遠くの山まで見渡せるほど、何もなかった。
     みくは駕籠を降りると、そこからまたしばらく歩いて、やはり何もない場所で立ち止まって、おもむろにりんを振り返って言う。

  • 狭い小鳥の籠の中にて 第七話 閲覧数:143
    2010/01/03
    14:46

     「綺麗」
     小鳥の籠の水を替えながら、りんがしみじみとそう呟いたので、みくは苦笑した。りんは随分かいがいしく、小鳥の世話をしているようだった。
     「気に入って、良かった。きっと殿も喜ぶよ」

  • 狭い小鳥の籠の中にて 第六話 閲覧数:150
    2010/01/03
    12:55

     日は既にもう、かなり落ちていた。りんは小走りに、人の行きかう道中を廓に向けて進んでいた。薄暗い夜の始まりに、道行く人の中にもまばらに提灯の明かりをつける人もいて、そこだけ浮かび上がるように明るく見える。足元の暗いのに注意を払いながらも、小柄なりんは、人々の間をすり抜けるようにして、込み合う道でも割合に素早く進む事が出来た。
     この調子ならば、廓の入口の赤提灯の明かりが灯る前に帰りつけると、少し気を緩めた時だった。ふと、その目の端に何か彩りの華やかなものが踊って、思わずそれに目が吸い寄せられてしまった。振り返ってみれば、それはただの出店で、明るく提灯のつるされた店先に色鮮やかな小鳥が、籠に入れられて並べられていた。
     それに意識を取られていたせいだろう。あ、と思った時にはりんの足は小石かなにかに躓いて、体が跳ね跳んでいた。草履が脱げて、地面に散らばる。その上を、容赦なく人の足が踏みつけて通って行った。

  • 狭い小鳥の籠の中にて 第五話 閲覧数:168
    2010/01/02
    23:06

     りんの様子に覇気がないと、みくも気がついたしはくも心配そうにしていた。それは、先日の手紙の一件があったからだと、原因は知れていたけれど。
     廓に来てからこれまで、りんは自分でも心の底で薄々悟っていたことを必死に打ち消して、自分はここから抜け出して廉のもとに絶対戻るのだと自身に言い聞かせて、敢えて強気にここまでやってきた。
     だけど、みくにしがみついて泣きに泣き、頭を撫でられて気が緩んだ弾みに、ついに心の底で密かに思っていた「それは不可能だ」という事を認めてしまった。言葉に出して、言ってしまった。今まで、自分の中で受け入れる事を拒否していた事実を。

  • 狭い小鳥の籠の中にて 第四話 閲覧数:149
    2010/01/02
    01:56

     「今日はみく姐さん宛になにか来てますか?」
     はくが声を掛けると、取次ぎの男は苦笑して頷いた。
     「たくさんあるよ。流石初音太夫。……あと、新しい『妹』の子にも一通来ているねえ。ついでに持って行って貰えるかい?」

  • 狭い小鳥の籠の中にて 第三話 閲覧数:192
    2010/01/01
    17:03

     「あたし宛の手紙は?」
     りんが廓の入り口にいる取次番の男に声を掛けると、男は思い出そうとするかのように、まじまじとりんの顔を見た。
     「ええと、すまん。誰だっけか」

  • 狭い小鳥の籠の中にて 第二話 閲覧数:126
    2010/01/01
    16:19

     華やいだ楽が奏でる音と、金糸や銀糸を多分に用いた刺繍で縫い取られた煌びやかな衣装、眩い金の屏風に、趣向を凝らした装飾に、贅を尽くした食事の数々。座敷を彩るそれら全てが、どこか作り物めいて、嘘くさく感じるけれど、そこは人々に浮世で或る唯一の極楽と呼ばれる。みくにはもう慣れ親しんだ場所。
     部屋中に立ち込める酒気と、ほろ酔いの人々のどこか浮ついた、熱を持った瞳。それらをどこか醒めた瞳で見渡しながら、それを悟られぬように巧妙に長い睫毛を伏せ気味に、唇は笑んだ形で静止させる。上機嫌の人々の笑い声も、酒に酔っての大言も、全て受け止めているようで、右から左へと流れて行くだけのもの。ただみくは、人形のように微笑んで、酌をして、相槌を打っていればいい。それが、今ここで与えられた役割だ。
     「初音太夫は、退屈と見える」

  • 狭い小鳥の籠の中にて 第一話 閲覧数:257
    2009/12/31
    23:27

     目が覚めたのが、辰の刻を回ったところだった。布団から重たげに身を起こし、のったりと頭を動かして、自分が目を覚ました原因を探った。外に面した窓の障子を通して白い日差しが布団の上に斜めに差し込んでいるけれども、それはいつもの事だから、それが原因ではない。眠るのが明け方近くだから、いつも昼前までは床の中にいるのが常なので、多少の日差しには慣れてしまっている。
     目が覚めた原因はすぐに知れた。障子の向こう側、窓の外から騒々しい諍いの音が聞こえて来たからだ。店の若い衆であろう男たちの声に混じって一人、甲高い、まだ幼いような声が耳を刺す様に響いている。
     みくがため息をついて、長い髪が床一杯に流れるように広がっているのを気だるげに手でかきあげながら身を起こすと同時に、部屋の出入り口の障子に細い隙間が出来て、そこから一層明瞭な光が差し込んだ。それはすぐに静かに広がって、白い足袋がその下のほうから顔を出す。

  • ココロ設定、アレな小話。 閲覧数:570
    2008/11/24
    23:13

    注意書
    ・素敵曲ココロの雰囲気を壊されても許せる!
    ・キャラ崩れしても大丈夫。

  • リンが猫になる話 閲覧数:1,949
    2008/11/16
    19:17

    「あれ? なんだろ?」
    小さく独り言を言ってしまったのはいつものクセ。
    いつも隣にレンがいるから、たまに一人で行動する時もつい、隣にいるように話しかけちゃう。

  • リンが風邪をひいた日 閲覧数:2,277
    2008/11/09
    16:26

    昨日から、変だなって思ってた。
    歌ってる時になんとなく、空咳をくりかえしたり、喉の辺りを触って首をかしげたりしてたし。そういえば声の伸びもあんまり良くなかった気がするし。
    今朝になってそれは明白になった。

  • あの子はだあれ? 閲覧数:831
    2008/10/26
    12:34

     はっきりとその姿が見えるワケじゃなかった。
     ただ、時々。
     人ごみの中でショーウィンドウに自分の姿が映ったのを見た時、とか。

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