藍流さん

【お知らせ】テキスト投稿が非常に使い辛いため、こちらでは歌詞や音源のUPとコラボ関係のみに縮小、以後の小説投稿はすぴばる&ピクシブへ移行します。

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チーズケーキと少女【『KAosの楽園』クロスオーバー】

sunny_mさんが「KAos~」の二人を書いてくれました! ありがとうございます~!

  • ― チーズケーキと少女・1 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:31

     連なる音が響いていた。正確なリズム、正しい位置に収まる音階、測ったように等分に力を増すクレッシェンド、数値通りのピアニシモ。
     正確無比な、ただそれだけのピアノの音がマンションの一室を満たしていた。技術だけで考えたらとんでもなく才能ある人物だと伺える演奏。けれど、ただそれだけの演奏。味もそっけもない、機械が奏でているのと同じようなその演奏に、壁際のソファーに座っていたメイコは微かに唇をかんだ。
     豪華で広いマンションの一室。防音処理を施されたその部屋の中央には大きなグランドピアノが置かれていた。壁の棚には沢山の楽譜にレコードなどが詰め込まれていて、質の良いオーディオのセットや、ハイスペックのパソコンまで用意されている。

  • ― チーズケーキと少女・2 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:33

     マスターは確かに音楽的才能はあるけれども、それ以外はいたって普通の小学生なので、昼間は当然のことながら学校に行く。暮らすマンションから少し離れた場所にある私立の小学校。マスターの両親の知人が理事をしているというその私立の学園ならば色々と融通がきくのだという。
     毎朝、時間になるとマスターはかっちりしたワンピースの制服で身を包み、ランドセルを背負って登校していく。その真っ直ぐに伸びた背中を見送って、メイコは掃除や洗濯などの家の事をかたずけて、そして時折空いた時間を使って、街の中を探索したりする。
     今日は図書館に行ってみようかな。もろもろの家事を終え、一休みをしながらメイコはそんな事を思った。

  • ― チーズケーキと少女・3 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:35

    「あの…なにか、お探しですか?」
    柔らかな、人懐こい笑顔を連想させる声だった。
     声をかけられてメイコが振り向くと、そこには小柄な女性が立っていた。柔らかそうな髪をふわりと肩の辺りで揺らして。知性の宿る穏やかな微笑みを浮かべたその女性はこの図書館の職員なのだろう。

  • ― チーズケーキと少女・4 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:37

     次の日。昼を少し過ぎたくらいの時間にメイコが再び図書館を訪れると、來果の言葉通り閲覧用の席に腰かけて本を読んでいるカイトがいた。青い髪に長い裾の上着。そしてマフラー。まさしくカイトである。初めて見る自分以外のボーカロイドに嬉しくなって、メイコはほんの少し歩調を速めてそっとその傍に近寄った。
     近づくメイコに気が付かないでいたカイトが、ふと読んでいた本から視線を上げた。あら気が付いてしまったかしら。と思わずメイコが足を止めたが、そんなわけではなかったようだ。
     じっとその蒼い瞳が真っ直ぐにひたむきに、何かを見ている。何を?とその視線の先を追いかけると、そこには小柄な女性がいた。ああ來果だ。とその姿にメイコは思わず微笑んだ。

  • ― チーズケーキと少女・5 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:39

    「え、あの、今の笑うところ?」
    「笑う所じゃないかしら」
    なんとか笑うのを我慢しようとするのだが、堪え切れずに零れ落ちた笑みが、ほろほろと零れ落ちていく。

  • ― チーズケーキと少女・6 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:41

    お前ら爆発してしまえ。と、思わなくは無い光景だけれども。
     けれど、お互いが好きなのがよく分かるその様子は微笑ましくも眩しい。お互いを大切に慈しみ、幸せを繋いで冠にしていくような。その様子に、うらやましいな。と思わずメイコは呟いた。
    「いいわね、羨ましい」

  • ― チーズケーキと少女・7 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:44

     メイコがマンションに帰ると、ピアノの音が部屋の中に満ちていた。
    超絶技巧の音の洪水。ただの騒音になってしまう境目ぎりぎりいっぱいまで施された装飾音。正確なリズム、正しい位置に収まった音階。正確無比な、ただそれだけのピアノの音。
     そっとピアノが置かれた部屋を覗くと、大きなグランドピアノと対照的な小さな体のマスターが、相変わらず淡々とした表情でピアノを弾いていた。

  • ― チーズケーキと少女・8 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:46

    「それは、大きなお世話というものよ、メイコ。」
    突き放すようにそう言い放ち、マスターは再び真っ直ぐにメイコを見つめてきた。
    「ピアノを弾く事は、私にとって好きとか嫌いとか、そういう事じゃないわ」

  • ― チーズケーキと少女・9 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:48

     カイトと來果のようには、自分たちはどうしてもなれない。離れていても距離を感じさせないような彼らと違って、自分とマスターはどれだけ近くにいてもその間には越えられない距離があるから。
     マスターは自分の言葉を受け入れてくれなかったし。自分も又、こうして逃げてしまった。
    「けど、ここのコンビニでメイコさんに会うなんて思っていなかった。メイコさん家、駅の向こうでしょ?」

  • ― チーズケーキと少女・10 ― sunny_mさん 2011/05/29
    09:56

     さて、と來果がアイスを選び終えて、レジへと向かうのを見送り。じゃあ私はマスターにコンビニ限定のケーキを買って帰ろうかしら。とメイコがプリンやゼリーなどが並ぶ棚を眺めていると、不意に横から細い子供の腕が延びてきた。
    「私、これが食べたいわ」
    そう言ってその子供が手に取ったのは、上にほろほろのクラムがかかったチーズケーキ。はいお願い。と幼い子供に似つかわしくない大人びた口調でそう言って、チーズケーキのカップをメイコに差し出した。

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