夏生さん

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anostalgia_

ナツヲです。物書きです。

同人ゲームシナリオやったりドラマCD台本やったり
記事書いたり
ジャンルも問わずもそもそもそもそ主に外で活動なう。

何でも書きますけども歌詞は書きません。

ボカロ好きですがぶっちゃけにわかです。


ピアプロ初心者ですが仲良くしてやってくださいまし。


できたてホニャホニャサイト:【逢初ノスタルジヰ】http://nostalgia.dayuh.net/index.html


にゃーん(´ФωФ)にゃんこ大好きキチガイです。

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魔女と烏の物語 さいご

ドアを蹴破ったかのような音に驚いた男は、弾かれたようにそちらを振り返った。  事態を把握すると向き直り、はにかみながら目の前の魔女を見すえた。 「…いいのかい?」 「何が?」_  魔女は本当に何事も存ぜぬと言った様子で紅茶を口に含んだ。  男は困ったように眉をひそめて、自分の瞳とよく似た色のティーカップの底を見る。 「彼は、」  告げていいものか否か。  あえて超えないようにしている壁の問題に、自分が入り込んでいいものか。  視線を彷徨わせた先で、クッキーに手を伸ばした魔女と目が合う。  観念した男は、噤んだ口を再び開いた。 「彼は、君の可愛い使い魔は、僕と君の中を誤解したようだけれど―――、捜してやらなくていいのかい?」 「いいの」  あまりに簡単な魔女の言葉に、男は目を丸くした。 「帰ってこないかもしれないよ?」 「平気よ」  魔女の穏やかな光を宿した瞳が男を射抜く。 「だって私の下僕だもの」  何事か口にしようとした男だったが、結局言葉を飲み込んで一言、 「…そうかい」  とだけ呟いた。  男は彼女の瞳に映ったまた別の感情を黙殺し、冷めた紅茶に口をつけ飲み干す。 「さて、じゃあ僕はもう帰ることにするよ」 「あらどうして?気分を害してしまったの?」  立ち上がるそぶりを見せながら、いいや、と男は頭を振った。 「これ以上ここにいるのはなんだか野暮な気がして」  魔女は何も言わず目を細め、男は玄関へ向かって歩きはじめた。 「使い魔君を、大事にしてあげないとならないよ」  玄関先で、男は諭すように告げた。 「僕には、彼の気持ちがよくわかるんだ。―――それじゃあ、また」 「ええ、またね」  片手を上げて去った男を見送ったシエルは、少しの間空を仰いだ後、ゆっくりと踵を返した。  深夜。  開け放された窓からは月光が差し込み、かの魔女の顔を鮮やかに照らし出していた。  穏やかな風がカーテンを揺らす。  ――と。  窓辺に現れた大きな影が、月の光を遮る。  影はゆっくりと、音一つ立てず部屋の中へ降り立つと、少しの間横たわる魔女の顔をじっと見つめていた。  自分の事など少しも気にかけず、いつも通り眠りにつくその姿に、言いようのない寂しさと虚無感が拭えない。  俺のことはどうでもいいのか。あの男の方が、いいのか。  ああ、俺の気も知らずに。  ふわりと吹いた風に柔らかな黒の羽が舞う。  影はやがてゆっくりと動きだし、覆いかぶさるようにして魔女の顔を覗き込む。  ―――気づいて、しまったんだ。  いいや、気づいていたけれど分からない振りをしていた感情を、受け入れてしまったんだ。  気づいて、しまったんだ。  自分の中に初めて芽生えた、『嫉妬』という感情のせいで。  影の右手が、そっと魔女に伸びた。  おそるおそる。  おっかなびっくり。  触れていいかどうか、躊躇うような素振りで。  白く艶やかな肌に、触れかけた。 「遅いわよ」  穏やかな声色に感情が昂って、つい封じ込めていた衝動を解き放ってしまいそうになる。 「今まで何をしていたの? クラウ」  最後に名前を呼ばれたのがもう何か月も前だったような錯覚。たった数時間、時を共にしていなかっただけなのに。 「……シエル、俺はどうすればいい」  行き場をなくして彷徨っていた手に、シエルがそっと触れて、指を、絡めた。 「どうもしなくていいわ。だってあなたは、私の下僕」  下僕。  主人が赦すまで、自由になることはできない。しかしきっとこの魔女は、もう自分を放してはくれない。  それがわかっていて尚、この手の温もりが愛おしくて、離したくなくて、たまらなかった。 「あなたの心は私のもの。そうでしょう?」  熱を帯びた青の瞳が、俺を射抜いて逃さない。 「―――、俺のマスターは、俺の心さえ自由にしてくれないのか」  魔女の視線がそれることはない。 「当たり前だわ。だってあの時から、あなたの心と体は私のものになったんだから」  その言葉に宿る、とろけるような甘い響き。  いつから俺は毒されていたのか――、この魔女の所有物であることを嬉しいとさえ感じ始めている。 「俺は、」_  手をさらに深く絡める。弄ぶようにしたあと、握り返す。  ――引き寄せらて、顔が近づく。 「逃してなんて、あげないわ」  そう言って、シエルは彼にそっと口づけた。  衝動を抑えることができず、烏は主人を抱き寄せる。  小さな烏が選んだのは、       魔女の下僕と成り下がる道。  とある国に、『癒しの魔女』と呼ばれる者がおりました。  彼女はそれはそれは怠惰な魔女でした。  いつしか、彼女の側には常に黒い影が寄り添うようになりました。  影は自ら言いました。  自分は"魔女の虜である"と。

終わり。
投稿日時 : 2013/03/09 23:17

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