最近の投稿作品 (82)
-
夢幻ヶ島心象埠頭
眠りに落ちて目が覚める「現在」が途切れて再び始まる
一続きの私の中で小さな生と死が周っていく
浅瀬を泳ぐ魚類(うろくず)の瞳は熟れた柘榴の赤色
つと鮮(あざ)らかに飛び跳ねた飛沫は懐かしい塩の味がした
目が覚めると泣いていた。水母のように透明な午前
-
溶ける金魚──思考の中で溶解しうるもの
死んでしまったその後で、
右と左だけ覚えた夜の抜け殻が「寂しい」と言う。
愛の言葉は長い五月雨ね。
少年!たなびく新世界、
仮初めの公園で鉢合わせ。
-
どうで逃げれぬ、ござんなれ
ベンガラ格子の奥の着飾ったそのお嬢さん
紅、差した三白眼、こちらを見つめ笑った
私はといえば物旧りたつんつるてんの
みすぼらしい弊衣破帽のバンカラな風体
-
アリスちゃんとテレスくん
はじめまして、アリスと申します。
私は嘘つきです、本当です。
長所は短所がないことなんです。
短所は長所がないことなんです。
こんにちは、僕はテレスといいます。
-
さてもかなしい憂鬱と
果無(はかな)い幽霊のように
幽(かそけ)く幽く生きる
人間であること以外
共通点のない他人
めぐり来たれる月日、つくねんと噛む
-
瓶と蜥蜴
カランコロン、凛と澄む音
涙を集めて出来たような
硝子の瓶の中で
今際の息をただ吐いている
身も世もなく沈んでは
-
独りじゃない場所
小さな広場には予感と期待が渦巻いて
色とりどりに揺らした鮮やかなリボンの海
白い玉兎の瞳は螺鈿(らでん)細工の真珠色
極彩色キラキラ、舞台を染め上げる
舶来品のブローチ、素馨(ジャスミン)の香水をふって
-
周縁漂流記
泥だらけの月の息継ぎ、光素(エーテル)いっぱい吸い込んで
夜がな夜っぴて枯木星の酔歌が聞こえる、百年祭
忘れたい事があったけど何だったっけ……忘れたな
窓の外に描かれてる冬、南の道には蚤の市
計量化された愛と言葉と旋律、絵画の見切り売り
-
暗夜と光路
流れに流され記憶も曖昧
地獄の四十二丁目
覚えのない疼痛と
絶えだえの足取りで身も不体裁
それでも軽薄に笑い
-
ファンタスマゴリー市街
目抜き通りの記号はチカチカ
遊歩者たちの声は響(どよ)もし
商品のような人々が見る
人々のような商品
「何かを持てる可能性」を持つ